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2015年1月16日 (金)

ブックメーカーJRA①

「日本国内で海外競馬の馬券を買えるようになる」

Ascot 

今週のスポーツ各紙は京成杯や日経新春杯の情報もそこそこに、JRAによる海外レースの馬券発売への道筋が整ったと大々的に報じた。国内の競馬事業者が海外レースの馬券を発売できるようにする方針を、政府が固めたことが判明。今月下旬に召集される通常国会に競馬法改正案を提出する見込みだというのである。

だが、それを伝える記事に書かれている「競馬ファンの悲願が実現」とか「背景にあるのは近年の日本馬の活躍」というフレーズは眉唾だ。むろんそうした事情もゼロではあるまいが、話半分でいい。だいたい、既に日本の競馬ファンは、海外のレースの馬券を買う手段を持っている。ネットで海外のブックメーカーに登録して買えばいい。決済はクレジットカードだから「JRAダイレクト」で馬券を買うのと基本は同じ。ウィリアムヒルのように日本語のウェブサイトまで用意している業者もあると思えば、日本人の会員数も決して少なくないと考えるのが妥当だろう。

こうした海外のサイトを利用したベッティングは1998年頃には既に始まっており、当初からJRAはこれを問題視していた。海外のレースだけでなく、JRAが主催する日本のレースも賭けの対象になっていたからである。日本にいながらJRAの馬券をJRA以外の発売元から購入する。これはノミ行為と何ら変わりはない。

「胴元の本拠地がどこであるかにかかわらず、国内で賭けが行われれば全て違法」というのが警察庁の見解である。だが、海外のブックメーカー利用で検挙されたという話はこれまでに聞いたことはない。刑法の賭博罪を成立させるには胴元と客の両方を摘発する必要がある。しかし海外の胴元は現地では「合法」。日本側がどれだけ「違法」と叫んだところで、相手にもされまい。

ならばとJRAは兵糧攻めに打って出る。クレジットカード会社に取引停止を要請し、決済面での締め付けを図った。しかし、すべてのカード会社が協力してくれるはずでもなく、効果は限定的でしかない。このままでは死活問題になる。アウトサイダーがJRAの経営を圧迫するだけに留まらず、競馬産業の根幹を崩す可能性さえ囁かれた。

そこで長期的な対策として、JRAは海外の競馬主催者との協調体制を目指した。これが2002年頃の話である。手始めに取ったのが香港ジョッキークラブとの「善隣政策」。両競馬組織が互いの国の権益を守って馬券発売を行うことで協力するというもので、既に香港では日本のレースの馬券を独自に発売している。JRAはこの善隣政策を世界中に広めることを目指してきた。その狙いは、互いの利益を尊重しつつアウトサイダーを締め出すことにほかならない。馬券発売額で世界1位の日本と3位の香港が最初に手を組んだのは、いわば当然の流れだった。

あれから10余年。今回の法改正は、善隣政策の次のステップである。そのタイミングが、たまたまドバイで日本馬が2勝し、凱旋門賞に3頭もの強豪馬が遠征した翌年だっただけの話。日本の馬が強くなったので急いでやります、というわけではない。「悲願」を言うならJRAであろう。思えば一昨年の新降着ルール導入にしても、こうした流れのひとつだった。

購入先がJRAであろうと、ウィリアムヒルであろうと、ネットでの馬券購入に慣れ親しんだ昨今のファンには、さほどの違いを感じることはあるまい。ブックメーカーがひとつ増えただけ。感覚的にはその程度かもしれない。むしろ、この法改正論議を通じて、JRAが馬券を独占する状況に疑問を抱くファンが増えやしないか。老婆心ながら、ついそんなことを心配してしまう。

(明日付に続く)

 

***** 2015/01/16 *****

 

 

 

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