« 初勝利を見届けて | トップページ | 初めての外国馬 »

2014年10月21日 (火)

横山典弘騎手のかえし馬

日本中央競馬会競馬施行規程の「第8章 発走、到達順位、着順等」には、このように明記されている。

第106条
騎手は、馬場に出た馬を、審判台の前を常歩で通過させなければならない。

とはいえ、キャリアの浅い馬などはファンの歓声に驚いて物見をしたり、引っ掛かったりすることがある。騎手もそれを分かっているから、馬場に入るやゴール板とは逆方向に馬を誘導するケースも多い。特に中山の1200mや1600mなどでは、大半の馬がさっさとスタンドから逃げて行ってしまう。

だが、横山典弘騎手は違う。敢えてファンに近い外ラチ沿いをゆっくりと歩く。馬の今後を考え、ファンの歓声やカメラの砲列に慣れさせようとしているのである。物見が激しい馬や引っ掛かり癖のある馬ならなおのこと。こうして彼は騎乗馬一頭一頭に競馬を教えている。

Kaeshi 

20日の東京メインのアイルランドトロフィー。デビュー以来4連勝中のエイシンヒカリの手綱を取った横山典騎手は、このレースでも馬場入りするなり、エイシンヒカリを外ラチ沿いまで誘導し、

Hikari1 

ゴール板の前までしっかり常歩をさせたあと、やおらキャンターにおろして1コーナーへと消えていった。

Hikari2 

実際のレースは、相当話題になっているので、あらためて説明する必要はあるまい。

内ラチ沿いを逃げて先頭に立っていたエイシンヒカリは、直線坂下からみるみる膨れだした。そしてゴールの瞬間には、外ラチ沿いをただ一頭で駆け抜けたのである。これぞ正真正銘の独走。詳しくはJRAのサイトでリプレイを見てほしい。ゴール前で待ち構えていたカメラマンの中には、「新潟の直線1000mか!」と声を荒げる者もいた。確かにあの角度で向かってこられたら、そりゃ撮れんでしょうな。でも私は「かえし馬か!」と突っ込みたい。だって見た目ほぼ一緒だったし。

Hikari3 

検量に戻ってきた横山典騎手は、笑顔で馬の頸筋を撫でながら「(調教)再審査になっちゃうかもよ」と語りかけていた。決して馬を怒ったりせず、常に優しく語りかけるのも横山典騎手である。人を怒鳴ることはしょっちゅうあるけど(笑)

3~4コーナーを左手前で回り終えたエイシンヒカリは、直線に向いて手前を右手前に変えた。その途端、右へ右へと進路を変え始める。横山典騎手も右鞭で矯正を試みるが、馬は外ラチ目指してまっしぐら。ゴールの瞬間はほぼ外ラチいっぱいを走っていた。Aコースの幅員いっぱい、40mほどを隔てた2着馬との着差は3馬身半である。

「まっすぐ走っていれば、10馬身差くらいあったんじゃないか?」

そんな声も聞こえてきたが、エイシンヒカリが手前を変えて膨れ始めたのは残り400のハロン付近。ようやく前を向いたのは残り100mあたりだから、ざっくり300mかけて40mの斜行をしたことになる。その走行距離は「300の二乗+40の二乗」の平方根で約302.6mだから、実際にロスした距離は2.6m程度。すなわち1馬身程度でしかない。

Hikari4 

「だから大したことじゃない」というつもりはないが、見た目の派手さに目を奪われて、人はついつい本質を見失いがちだ。レースは冷静に振り返りたい。

実際、エイシンヒカリのラスト1ハロンは12秒8を要していた。さらに、下された判定は調教再審査ではなく、ワンランク下の調教調教注意。土曜日の京都3Rを勝ったアドマイヤゴッドも「直線で外側に逃避しようとした」として平地調教注意が課されている。さして珍しくはない事柄が極端に起きた。それくらいの捉え方にしておきたい。ただ、パドックなどを見る限り、馬自身はまだまだ成長途上。大化けの期待は大きい。

 

***** 2014/10/21 *****

 

 

 

|

« 初勝利を見届けて | トップページ | 初めての外国馬 »

競馬」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 初勝利を見届けて | トップページ | 初めての外国馬 »