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2014年10月27日 (月)

読書週間

今日から「読書週間」が始まる。なのに、ある調査によれば一世帯当たりの書籍代は秋が最も少ないのだそうだ。秋の夜長はインターネットで更けていくというのも、このご時世ならではか。読書の秋なのに、出版界は永らく冬の時代から抜け出せないでいる。特に若者の読書離れが叫ばれて久しい。

実はついさきほどディック・フランシスの「矜持」を読み終えたばかり。ご存じフランシス最後の作品である。3年前に初版で買った一冊なのに、読むのはこれが初めてだった。

購入したのは2011年の春である。別の本を読み終えて、さあ読み始めようか……。まさにそんなタイミングで東日本大震災が起きた。その後しばらくは読書どころではない日々。決して面白くないからと放り出したわけではない。菊花賞を勝ったトーホウジャッカルが震災の晩に生まれたと聞いて「そういえば!」と思い出し、あらためて本棚から取り出したのである。

Kyouji 

フランシスの作品の特徴のひとつに、競馬をまるで知らないという愛読者がたいへん多いことがあげられる。馬券を買ったことがない人でも、グランドナショナルというレースを知らない人でも、フランシスの作品は楽しい。なぜか。競馬界を舞台にしているとはいえ、物語の背景に常に普遍的なテーマが存在するからであろう。それはすなわち人間心理への深い洞察力。そこに徹底したリサーチや軽快なストーリー展開、さらに職業は様々なれどいずれも人間味あふれる主人公が加わるのだから、面白くないわけがない。

数年前に「高校生に薦めたい海外の一冊」というお題で依頼を受けて、迷わずフランシスの「利腕」を挙げたら、担当者に「競馬の話はちょっと……」と困った顔をされたことがある。「読めばわかる」。そう言ってはみたものの、話はその場で立ち消えとなった。人生における喪失と奪還の物語。数あるフランシスの作品の中でも傑作との声は高く、彼はこの作品で英国推理作家協会賞も受賞している。

それを件の担当者は読みもせずに、「競馬」の二文字だけで袖にした。若者の読書離れは、私には当然の帰結にも感じる。読書の習慣を付けさせたいなら、舞台や設定はなんであれ、まずストーリーとして面白いものを読ませるのが先決であろう。そうでなければ今時の若者が「読書は楽しい」などと思うものか。ただでさえ本以外に面白ものが溢れる時代である。

 

***** 2014/10/27 *****

 

 

 

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