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2014年8月 6日 (水)

ミスターの口笛

サラブレッドは本来、自由な動物なんです。自由に気持ちよく走らせるには、馬と会話ができなくてはダメ。馬は力で御すもんじゃないんですよ―――。

今日8月6日は野平祐二の命日である。生前、師が何度も何度も繰り返しおっしゃったフレーズが急に頭に蘇った。

馬との会話は、手綱や鐙を通じて行われたのかもしれないし、人の言葉を通じて行われたのかもしれないが、定説では「口笛」とされている。スタート前、緊張の極に達した馬をそっと口笛でなだめる姿は、現役ジョッキー時代の語り草だった。先頭を切ってゴールを駆け抜け、人知れず馬上でマーチを吹き鳴らしたこともあると聞く。

ちょうど今くらいの季節の高崎競馬場の装鞍所で、その口笛を聞く機会があった。

Takasaki 

それまでチャカチャカと落ち着きのなかった馬が、祐ちゃんの口笛を聞いた途端、うっとりと聞き入るような姿勢になったのである。それは魔法としか思えず、思わず目を見張った。

が、当の本人は、何でもないという風に口笛を吹き続けながら真夏の曇り空を見上げている。その視線の先には「ミスター競馬 野平祐二来る!」書かれたアドバルーンが舞い上がっていた。

「武豊はミスターと呼ばれるにはまだ足りないものがあるのかな?」

祐ちゃんが不意にそうおっしゃった。

「それともミスターなんて呼ばれたくないと思ってるのかしら?」と続ける。

私には答えようがなかった。どう考えても、私には答えられる話ではないのである。

今となっては祐ちゃんもこの世にはいない。高崎競馬場もない。アドバルーンだって最近ではほとんど目にしなくなった。

Takasaki2 

あれから「ミスター」という呼称についていろいろと考えを巡らせているが、まだよくわからない。わからないまま、今年も「ミスター競馬」の命日がやってきてしまった。

 

 

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