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2014年7月26日 (土)

札幌のウイナーズサークル

「もの凄い雨だけど、もの凄い人だわ」

釧路の馬主から電話が入った。札幌に来ているのだが、雨で明日のエルムSは道悪必至だという。となればソロルに有利か。知り合いのソロルの会員氏から「明日札幌に飛ぶ」との連絡もあった。首尾よく口取りとなれば、飛行機代など惜しくはあるまい。

札幌競馬場のウイナーズサークルに立たせていただいたことが一度だけある。とはいえ、JRAではなく道営開催でのこと。もう8年も前の話だ。

札幌競馬場が今の場所に造られたのは1907年。しかし、それから1988年までの80年あまりはダートコースしかなかった。蹄の衝撃と冬の寒さ。その両方に耐えられる丈夫な芝を育てることが、技術的に難しかったためだ。

当時は優勝馬の口取り撮影を本馬場で行うのが慣例になっていた。とはいえ、芝の上ならともかく、悪天候時のダートコースでの撮影は猖獗を極める。そこで、全国の競馬場に先立って、札幌にウイナーズサークルが導入された。スタンドに接する検量エリアに人工芝を敷いて、そこで口取りをすることにしたのである。

靴やズボンの汚れを気にせずにすむようになった馬主らはもちろん、ファンにとっても表彰式を至近距離から見ることができると、評判は上々だった。この成功がきっかけとなり、他競馬場も次々とウイナーズサークルを導入。あっという間に全国へ普及したのである。その歴史あるウイナーズサークルに立つことができたというのは、たとえ道営開催ではあったにせよ、生涯忘れ得ぬ幸運であった。

その札幌競馬場が2年の改築工事期間を経て、今日ついにグランドオープンの日を迎えた。新スタンドは、地上5階、地下1階。座席数6142で収容人員は2万人。最大の売りは、2階屋上に設けられた長さ120mの「もいわテラス」。心地よい風に吹かれながら、藻岩山と札幌の街並み、眼下にコース全体が見渡すことができるらしい。件のウイナーズサークルも新しいものに生まれ変わっている。

初日の入場者数は、徹夜組の30人を含む16798人。出走頭数も150頭と揃い、2年ぶりの札幌競馬は多いに盛り上がった。

ありがたいことと思いたい。なにせ、ダート時代の1961年7月29日の札幌競馬には、1日の出走頭数わずか27頭という記録が残されているのである。これがJRAにおける1日最少出走馬記録。1レースから順に3頭、4頭、6頭、3頭、4頭、3頭、4頭という寂しさだった。「4頭以下は不成立」という現行ルールに照らせば、ひと鞍しかレースを行えないことになる。

これでは面白い競馬は期待しようがない。なのに、当日の入場者は1889人と記録されている。個人的には「良く入った」と思わないでもない。

確かにつまらない競馬ではある。しかしそれはそれで、関係者が頭数確保に必死に取り組んだ結果だった。新スタンド落成に沸く札幌競馬場の映像を見るに、「冬の時代」を支えた先人の、苦労と努力を忘れてはならないと改めて思う。

 

 

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コメント

まさに歴史の重みですね。
グランドオープン、タイル一枚分くらいなら、私も貢献しているかもしれません
(^_^;)。

投稿: さっさん | 2014年7月27日 (日) 10時28分

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