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2014年6月 2日 (月)

18年ぶりの呟き

「あんな強い馬おったんか……」

フサイチコンコルドが勝ったダービーでのこと。息せき切って駆け降りた地下検量前で、たまたま聞こえてしまった橋口調教師の呟きが今も耳に残る。

Derby1996 

あれから18年。弥生賞と皐月賞のレースぶりを見て、今年のダービーはワンアンドオンリーを本命にすると決めていた。間もなく定年を迎える橋口調教師をダービー2着4度の呪縛から解放してあげたいという、特別な思いがあったわけではない。「ダービーでは皐月賞でもっとも印象に残る末脚を見せた馬を狙え」という格言に従ったまでの話。弥生賞でも、皐月賞でも、ワンアンドオンリーの末脚は際立っていた。いや、その末脚に明らかな意図を感じたと言うべきか。とにかく印象に残ったことは間違いない。

殊勲の横山典騎手は、「ダービーまで乗ってくれというオーダーが嬉しかった」という。

ダービーを目指すような有力馬ほど乗り替わりが激しい時代。“名手・ヨコテン”とは言え、ダービー出場17騎手のうちリーディング順位では下から数えた方が早い。ハナ差2着に終わった弥生賞ひとつだけでも、他の陣営なら乗り替わりの理由にされた可能性だってある。

もし「ダービーまで」という約束がなかったら、弥生賞や皐月賞で見せた脚を測るような騎乗はできなかったに違いない。しかし、橋口師は弥生賞で負けても、皐月賞で負けても、「ダービーに繋がるレースだった」と笑顔で横山典騎手を迎えていた。こうした調教師の言動ひとつひとつが、最後の3/4馬身に繋がったように思えてならない。

Derby 

ダンスインザダークでの悔しい思いから18年。レース後の地下検量で、橋口師の呟きが再び耳に入ってきた。

「泣いてもいいかな……」

それを聞いて師よりも先に周囲が泣いた。このひと言が師の18年間のすべてを物語っている。

祝福に駆け寄る人の列が途切れない。表彰式へと促すJRA職員がやきもきしている。なのに橋口師も「久しぶりやね」とか「元気そうで」などと、一人一人きちんと応対するから、なかなか人垣が前に進まない。地上には大勢のカメラマンやお客さんが、表彰式の開始を今や遅しと待ち構えていたことだろう。それがなかなか始まらなかったのは、ひとえに師の人柄のおかげだとご理解いただきたい。今年も良いダービーだった。

 

 

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