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2014年6月28日 (土)

嘘も方便

「この馬が2年後のダービーを勝つ姿が容易に想像できます!」

牧場ツアーでは、この手のセールストークがやたら多い。しかし、あまりにしつこく繰り返されると、聴衆からは苦笑いの声も漏れてくる。

「さっきから4頭目だぞ」

「再来年のダービーはいったいいくつあるんだ?」

だが、2年後のダービーを勝つことはおろか、出走さえ果たせなかったとしても、むろん詐欺にはあたらない。そんなことを言い出したら競馬業界は大混乱だ。なにせ「新聞」と名のつくメディアでさえ、「ハープスター2冠間違いなし!」とか「蛯名がダービーを勝つ!」などと堂々と書き連ねているのに、なぜか結果責任を問われることがない。

「嘘も方便」という言葉は日本ならではの文化であろうが、中でも競馬はその典型ではあるまいか。米国初代大統領のワシントンが幼少時に桜の木を切ったエピソードは、「正直は美徳」と教えてくれた。だが、このエピソード自体が嘘だという話がある。嘘で固められた世の中に住んでいるのだと思えば、もはや腹も立たない。

人は聞きたいことしか聞きたがらない。相手が嫌がる真実を言って恨まれるのと、相手が聞きたがっていることを聞かせて喜ばれるのと、どちらがいいか。大半は後者であろう。それなら嘘を付けばいい。正直者の周囲はそう思っているに違いない。ご丁寧なことに、日本語には「正直者は損をする」という言葉まで用意されている。

Bokujo 

牧場ツアーで1歳馬を引いているスタッフのコメントは、おしなべて「馬体が柔らかい」「飼い葉は良く食べる」「人の言うことはよく聞く」に集約される。

ツアー参加者はあらかじめ目当ての馬を決めてやってきている。ひょっとしたら、この先4年、5年の付き合いになるかもしれない相手だ。その初めての出会いで、たとえ本当のことであっても、ネガティブなことを言われたらどう感じるか。相手の心中を慮れば、硬い馬体だって自然と柔らかくなる。

だが、中には悪いことをズバズバ言うスタッフもいて、毎年会うのが楽しみでならない。ブラックタイプを気にせず、馬体だけで馬を選びたい向きには、非常にありがたい存在だ。しかしながら、彼が担当している馬が癖馬ばかりなのが若干気にならないでもない。正直者ゆえに損をしている。そんなことになっていなければ良いのだが……。

 

 

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