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2014年5月 4日 (日)

締切

実は、ちょっとした論文を執筆中なのである。

コラムやエッセイを書くことはあっても、論文となるとまた勝手が違う。昨今の事情に鑑み、コピペや流用の類は厳に慎まなければならないから、そういう意味でも神経を遣わなければならない。それでも書くこと自体は苦にしないので、どうにか草稿を書き上げた。ここまでくれば、迫り来る締切に気を揉む必要はない。あとはコリコリと直しを入れていけばよい。

1995年暮れの香港国際ミーティングでのこと。フジヤマケンザンが勝った香港国際カップの口取りが終わると、サンケイスポーツのカメラマン氏が猛ダッシュ。プレスルームに到着するや、荷物の山の中から慌てて現像キットを取り出し、たったいま撮り終えたばかりのフィルムの現像を開始したのである。

わずかばかりの時差を考慮しても、日本はまだ18時前。翌日のサンケイスポーツ紙の締切にはまだ余裕があるはず。じゃあ、なぜそれほどまでに急ぐのかと思いきや、「Gallop」誌のグラビアの締切が差し迫っているのだという。36年ぶりの日本馬による海外重賞制覇の快挙ともなれば、「大至急写真を日本に送れ!」というデスクからの指示があったとしても不思議ではない。

ちなみに、これは私が撮ったもの。右手を挙げたのは、若き日の蛯名正義騎手である。春の天皇賞連覇おめでとうございます。

Fujiyama  

一般に、現像に使用する現像液の温度が高ければ高いほど現像処理は速く進行する。一方で、あまりに高温だと現像ムラが起きたり、フィルム膜面が変質する危険性も伴う。いやはや、日刊紙サンは大変だなぁ、などと呑気に眺めていると、彼は「あち、アチ、熱ーっ!」と叫びながら現像を始めた。きっとよほどの高温で勝負に出たのだろう。

絵を優先するのか、それとも締切を優先するか?

そんなジレンマに対する現場の考え方が凝縮したようなシーンでもある。翌日、成田空港に降り立つなり「Gallop」を買い求めると、フジヤマケンザンのゴールシーンが、美しいカラーグラビアで掲載されていた。

私自身はあまり締切に神経質になるタチではない。締切に追われるほどの仕事を抱えていないことがいちばんの理由。でも、締切がある仕事ほど一刻も速く片付けたくなる性分なので、写真でも文章でも「10日までに!」と言われれば8日までに仕上げるし、「書き直せ!」と言われれば9日までに書き直す。要するにせっかちなんですね。

でも当然「東欧とロシアの競馬事情について原稿用紙2000枚。明日まで!」みたいなのは無理ですよ。そんな注文はハナから受け付けない。仕事を断らないのがフリーの鉄則だが、自分が出来ない仕事は絶対引き受けないのもフリーの鉄則である。

 

 

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