太巻きの誘惑
毎度同じことを書くが、場内外の食事事情に難のある中山に開催が替わると、途端に昼飯に気を遣うようになる。
今日は神田淡路町で途中下車。『志乃多寿司』の太巻きを仕入れてきた。片手で食べられる太巻きは競馬観戦にもってこい。朝7時半から店を開けて、しかも土日営業というのも競馬ファンには助かる。
数年前までウチの近所に、良い寿司店があった。一生の間に巡り合えるかどうか……、そのくらいの「良い寿司店」である。競馬開催日の前の晩は決まってその店で深酒し、店を出る前に「あした一本よろしくね」と言って勘定を済ませた。翌日、二日酔いに痛む頭を抱えながら、まだ暖簾のかからぬ店を覗くと、小僧さんが掃除の手を休めて折を手渡してくれる。それがその日競馬場で食べる昼食。中に入っていたのは、店特製の太巻きであった。
太巻きは寿司店の土産の定番だ。むろん握り寿司も土産にできるが、握りというものは握ったその場で間髪入れずに食べるように作られている。太巻ならば時間がたっても、味にさほど影響することはない。良い寿司店には、良い太巻きを作れる職人が必ずいるものだ。
なのに、寿司店での太巻きの立場はあまり芳しくはない。「節分の時に食べる程度」とか「酒に合わない」とか「大きくて食べづらい」などと言われるばかりでは、太巻きが少しばかり可哀想ではないか。美味しいネタがたくさん並んだあの豪華さと調和が理解されないのでは、太巻きファンとしては嘆かわしい。そうこうするうち、ウチの近所の寿司店も店主が代わってしまい、私と太巻きの蜜月は唐突に終わりを迎えてしまった。
なので、今は美味しい太巻きを気軽に巻いてくれるお店を探索中の日々。そんな話を桜新町の『ルレ・サクラ』で店主に話したら、こんな一皿を出してくれた。
『豚足のファルシー』。豚足をグツグツ煮込んで、中骨をそっと引き抜き、空いたスペースに荒挽きの豚肉とフォアグラを詰めて、網脂でぐるぐる巻いてグリルしたという。
旨い!!
網脂の芳香。豚足の官能的な舌触り。溢れんばかりの肉力を奏でる粗挽き肉。そして有無を言わさぬフォアグラの濃厚な旨味。このハーモニーは、まさに太巻きそのものではないか。もう一度言う、旨い!
だけど、昼飯として競馬場に持って行くのには向かないんだよなぁ。残念。
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