« 肉そばの誘惑 | トップページ | 結核に思う »

2014年2月12日 (水)

一瞬の静寂

「レディ……」

スターターの声に合わせて、2人の選手が腰を落としてそれぞれのスタート姿勢に入る。一瞬の静寂。そして号砲。

日本時間11日深夜に行われたソチ五輪スピードスケート女子500mを観ていて、この静寂の“間”がやたらと長く感じられた。ドイツのヘッセ選手は二度続けてこらえきれずに失格。同走の住吉選手が単走になってしまったのは気の毒と言うほかはない。競馬でもスピードスケートでも、併走より単走の方が概してタイムは落ちる。

実際には、選手がスタートラインで静止したのを確認したのち、1秒から1.5秒の間に引き金を引くという決まりがあるのだそうだ。さらにその僅かな時間の中でも、肉体的・心理的に負担なく滑り出せるタイミングは1.1秒。これは国際スケート連盟が科学的データを基に割り出した値で、「ワンポイントワン」とも呼ばれる理想的な“間”なのだという。

だが、1.1秒を実現するには「レディ」の声で、2人を速やかに静止させなくてはならない。一方が構えに入るのが遅いと、先に腰を沈めた選手の筋肉に負担が掛かり、集中力は削がれ、結果フライングにも繋がる。

ゆえに、スターターには「選手を知ること」が求められる。スタートの姿勢、その前に行う一連の動作、深呼吸の回数など、選手のあらゆる癖を知り、ベストのタイミングで「レディ」の声を掛けられることが良いスターターの条件なのだそうだ。難しいですね。

Starter  

これは競馬にも通じる話。競馬のスターターも全頭同時にスタートさせることに全神経を使うが、何せ相手は言葉を解さない馬のこと。口で言って分かってくれる相手ではない。

したがって、競馬のスターターも一頭一頭の癖を把握し、馬の心理を理解しようと心がけている。レースはそうした不断の努力の集大成。それでも、過剰な手拍子や大歓声がそんな努力を水の泡にしてしまうこともある。スタート直前の一瞬の静寂は、レースの醍醐味のひとつ。そんな刹那を味わうためにも、発走の直前は極力静かに見守りたい。

 

 

|

« 肉そばの誘惑 | トップページ | 結核に思う »

競馬」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 肉そばの誘惑 | トップページ | 結核に思う »