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2013年11月30日 (土)

クリスタルコーナー

6日前のJC当日はコートが邪魔な陽気だったのに、スタンドがガラスに囲まれた中山に開催が変わった途端に、11月であってもきっちり寒くなるのだから良くできている。ガラス越しの競馬は嫌いだという人もいるだろうし、私もそう思う一人ではあるのだが、当然そうでもない人もいるのだろうからガラスを悪く言うのは避けたい。ガラスに責任はない。

いまではどこの競馬場でも珍しくないガラスに囲まれたスタンドは、この中山競馬場のクリスタルコーナーが先鞭をつけた。お披露目は1985年12月のこと。シンボリルドルフがジャパンカップを勝った翌週である。まだ中山のメインスタンドは建て替え前で、名物の大屋根が威容を誇っていた。

クリスタルコーナー自体は1万4500人収容のはずだが、行ってみると実際にはほとんどが指定席で、一般席はガラスの外にちょこっと用意されているだけ。それでも同時に新設された「ターフビジョン」と一緒に話題を集め、この一帯はファンで埋め尽くされていた。当時は2週目に行われていたステイヤーズSは、クリスタルコーナー・検量室脇の階段の途中に立って、背伸びをしながら見たと記憶する。見事な手綱捌きでホッカイぺガサスを勝利に導き、検量に戻って来た柴田政人騎手の姿は、今も瞼に焼き付いて薄れることがない。

その7年後。縁あってクリスタルコーナーの来賓室に招かれて、初めてクリスタルコーナーのガラス越しに眺めたレースもステイヤーズSだった。勝ち馬はステイヤーの素質を開花させたアイルトンシンボリ。52キロの減量が実を結び、満足げに引き揚げてくる岡部幸雄騎手の姿を、今度は検量室の真上の5階から眺めた。

Stayer1  

だからというわけではないが、ステイヤーズSと言えば柴田政騎手と岡部騎手の印象が強い。岡部騎手はこのレース7勝、柴田政騎手も5勝だから、私ひとりの印象ではなかろう。この数字は「長距離こそ騎手の腕がモノを言う」の格言を裏付けている。今日のレースをデスペラードで勝った横山典弘騎手は、これがステイヤーズS4勝目。「名手」の域に近づきつるある。

そんなクリスタルコーナーも、来春に取り壊されることが発表された。できたばかりだと思っていたら、あれからもう28年が経っているといたんですね。しかも改築ではなく、スタンドは取り壊しして、更地(「広場」と呼ぶらしいが)にしてしまうのだという。28年間の永きにわたりガラスによって守られてきた一角は、一転して寒風の通り道となるかもしれない。

Cc  

当時に比べれば入場者数も半分以下の昨今である。必要のない建物と言われれば否定もしづらい。だが、オグリキャップのラストランをクリスタルコーナーで見たという人がいる。ディープインパクトの引退式をクリスタルコーナーの一角から見守ったというファンだっているはずだ。毎週末をクリスタルコーナーで過ごすと決めているファンは、新たな居場所を探さなければなるまい。そういう意味では、28年の歳月というのは決して軽くはないのである。

 

 

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2013年11月29日 (金)

牝馬の朝日杯

カラダレジェンドの朝日杯FS回避が正式に発表となった。新馬、京王杯2歳Sを連闘で制した影響は定かではないが、骨瘤そのものは若駒にはよくある症状。これ自体、騒ぎ立てるほどのものではない。

Keio  

興味深いのは、今年の朝日杯で牡馬の重賞ウイナーが不在となりそうなことである。東スポ杯を勝ったイスラボニータは弥生賞まで休養だし、昨日の兵庫ジュニアグランプリを勝ったニシケンモノノフが出てくるとも思えない。となれば、1991年に朝日杯が東西統一2歳牡馬チャンピオン決定戦となってから初の事態となる。

2歳牡馬チャンプを決めるはずの一戦で、メンバー中唯一の重賞ウイナーとなりそうなのが、牝馬のベルカントというのも珍しい。前週に同距離で牝馬限定のGⅠがあるのに、わざわざ牡馬相手のレースを選んできた。結果次第では、「牝馬の時代」を象徴する一戦になる可能性もある。

1980年には牝馬のテンモンが朝日杯を勝っている。ただし、当時の朝日杯は関東の2歳チャンプ決定戦という位置づけ。阪神3歳Sが牝馬限定戦となった91年以降では、牝馬の優勝馬はおろか、出走馬も07年のフォーチュンワードただ一頭しかいない。だいたいが91~03年の13年間は、牝馬の出走すら認められていなかった。

「同じマイルでも、阪神よりコーナーを3つ回る中山の方が合っているから」とはベルカントを管理する角田調教師の言葉。逃げて結果を出してきた同馬なら、それも頷けよう。ただ、朝日杯が阪神で行われる来年以降では、こうした選択肢は消えてなくなる。ベルカントの出走は、朝日杯の阪神移設に対するアンチテーゼにも思える。

父がサクラバクシンオーで、母の父がボストンハーバーであることを思えば、桜花賞はともかくオークスが目標になるとは考えにくい。NHKマイルカップやその先の短距離路線で、いずれは牡馬との勝負になる。それならば早いうちにという考えもあろう。加えて今年の2歳牡馬に特筆すべき強豪馬もいなければ、ベルカントの朝日杯出走はごく当然のレース選択とも言えなくもない。そういう意味で、今年の朝日杯は興味深いものになる。もしベルカントが勝ったりしたら、最優秀2歳牝馬の選考の行方も楽しみだ。

 

 

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2013年11月28日 (木)

転入馬

またまた一日遅れとなりますが、勝島王冠の話。

結果はご存じの通り。1番人気のガンマーバーストが4コーナーで先頭に立つと、ベルモントガリバーの追い込みを凌いで重賞連勝を果たした。

Ganma1  

実はこの2頭、2年前にもクビ差の接戦を演じたことがある。舞台は2011年12月25日の中山9RフェアウェルS。だがこの時は、ガンマーバーストが10着でベルモントガリバーは11着。残念ながら勝ち負けに加わることはできていない。

そのフェアウェルSから4か月後の東京・鎌倉Sを勝ったガンマーバーストは、晴れてオープン入りを果たした。そのとき2着に下した相手はスノードラゴンだから、決して相手に恵まれたわけでもない。

Ganma2  

だが、彼の苦悩はここから始まる。準オープンを勝っただけのいわゆる「下級オープン」の場合、重賞では番組賞金が足りず、かといってオープン特別に出るにも除外の権利を持っていなければ、出走はまず不可能。そんな状況を打破するため、地方船橋への移籍を決断したのは昨年の暮れのことだった。あれから1年後の彼の成績を見れば、この決断は間違っていなかったということになろう。

Ganma3  

実際、彼のようにJRAでのオープン入りを機に南関東に転入してくる馬は後を立たない。今回の勝島王冠の掲示板に載った5頭のうち、ベルモントガリバーを除く4頭が元JRAオープン馬。ベルモントガリバーにしても、JRAでは準オープンまで上り詰めていた。

彼らにとって南関東は移籍先としては格好のターゲットだ。古馬オープンの競走が充実しており、重賞なら1200万円以上賞金も出る。なにより、番組賞金不足で除外の憂き目を見たJRAとは違い、5着までの総獲得賞金で格付けされる地方なら除外の心配はまずない。転入緒戦ながら3着と好走したカリバーンのように、ダート不安を補って余りある見返りが期待できるのだから。今後もますますこういうケースは増えると思われる。

そんなことをぼんやり考えていたら、レッドクラウディアの大井移籍を知らされた。ご存じ昨年のJpnⅢ・クイーン賞の勝ち馬。だがそんな彼女でさえ、賞金不足から今年のクイーン賞は除外が確定的である。前年優勝馬が連覇に挑戦することさえも許されない状況を思えば、JRAオープン馬の大量流入も仕方ないのかもしれない。

とはいえ、さきほど終わったばかりの大井のA2戦で、JRAから転入してきたビタースウィートに軽くあしらわれた南関東生え抜き馬たちの姿を見れば、やはり切なさを禁じ得ない。地方競馬がJRAで勝てなくなった馬たちの受け皿である面は否定できないが、それでも自前のオープン馬が育たないようでは、ただでさえ薄い下級条件戦への興味がますます薄れる。何か妙案はないものだろうか。

 

 

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2013年11月27日 (水)

インタラクション

昨夜のインタラクションカップの話。

Intaraction2  

レース後に馬が引き揚げてくる大井競馬場の検量前。韓国馬として初となる海外遠征で、南関東の重賞勝ち馬3頭を破ったワッツヴィレッジの周囲では、興奮に満ち溢れた韓国語が絶えなく飛び交っていた。

国際レースによくある光景である。安田記念でフェアリーキングプローンが勝った時も、香港カップでステイゴールドが勝った時も、似たような光景を見た。重賞でも(準重賞でも)ない特別レースであっても、海外のレースを勝った喜びはとてつもなく大きい。しかも、地元韓国で行われた交流レースで僅差2着に敗れたリベンジを見事果たしたのだから、これ以上の喜びはあるまい。概して国際レースは遠征馬が勝った方が盛り上がる。

一方で大井の関係者やマスコミは、「(韓国馬で人気上位の)フライトップクインでもここでは足りないだろう」とか、「掲示板に1頭でも載れば良い方ではないか」などと余裕に構えていた。これも国際レースによくある光景。フォア賞やニエル賞を日本の馬が勝ち、JCでも外国馬がほとんど勝負にならない昨今の情勢からすれば、そんな油断が生じるのも無理からぬ話。しかも、先に韓国で行われた韓日交流レースでは、さほど強豪でもないトーセンアーチャーが勝っていた。

それだけに敗戦の衝撃は大きかったに違いない。韓国語が飛び交う検量前で、日本語はほとんど聞こえてこなかった。それだけに、遠くから聞こえてきた「それでも僕の馬が一番強い」という声が今も印象に残る。

実は、この言葉はミヤサンキューティに騎乗した真島大輔騎手が発したもの。ゴール寸前、猛然とワッツヴィレッジに迫ったが、クビ差及ばなかった。本来なら勝者を讃えなければならないのだが、ホームで逃げ切りを許した自責の念が適当な言葉を覆い隠してしまったのだろう。これも国際レースで良く見る光景だ。他の騎手も同罪のはずなのに、低人気馬に逃げ切りを許すと、なぜか2着馬にばかり厳しい視線が向けられる。真島騎手はこの思いを糧にしたい。

勝者を讃えるという意味では、韓国馬の気迫は素晴らしいものがあった。韓国馬3頭が引っ張ったペースは、前半の3ハロン通過が33秒8。レコード決着となった2年前のJBCスプリントの33秒5にも匹敵する速さ。揃って後方に控えた人気馬の作戦は、これが例年の「ロイヤルカップ」であったなら、あながち間違ってはいまい。だが、今年に限れば、このレースは「インタラクションカップ」だった。

Intaraction1  

そもそもこれは競馬なのだから、10回やれば10通りの結果が出る。勝ち負けはその時の運だ。競馬というのは、その日その条件でいちばん強い馬を決めるゲームに過ぎない。その中にあって勝利をつかんだワッツヴィレッジはもちろん素晴らしいのだけど、この交流競走の結果を以て「どちらが上」などと議論するのはナンセンスであろう。そもそも今回の日本馬はすべて大井所属だった。同じ地方でも、ハードデイズナイトやナイキマドリードを要する川崎や船橋の方がオープン馬のレベルは高い。ましてやJRAでもない。

大事なことはレース結果ではない。国際レースで良く見る光景がきちんと繰り返された。しかも外国からの遠征馬に“負ける”という経験ができた。これは得難い体験だったのではあるまいか。そういう意味でインタラクションカップは一定の成功を収めたと思える。「インタラクション」は「交流」とも訳されるが、IT分野においては「相互作用」の意味も持つ。お互いに得るものがあってこその交流競走。初めての試みにしては悪くなかった。   と言っても「第2回」はどうやら無さそうではあるが。

 

 

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2013年11月26日 (火)

ジャガイモは美味しい

現在活躍しているほとんどの競走馬の血統表を遡れば、その父系(一番上のライン)に「Pot-8-O's」という馬名を見つけることができる。その父親・エクリプスは競馬ファンなら誰もが知る名馬。だが、実質的にその血を伝える役割を果たした Pot-8-O's については、意外なほどあまり知られていない。

Pot8os  

そもそも、これをなんと読めば良いのか?

正解は「ポテイトーズ」。この馬、もともと「Potato」という名前だった。ポテト。つまりジャガイモである。だが、馬丁が「Potato」の綴りを知らず、「Potoooooooo」と書いたところ、面白がった馬主がそれを正式馬名にしてしまったという。一説には、この馬丁が前夜に食べた料理がたいそう美味く、その料理の材料を人から聞いて厩舎の壁にメモしていただけとも。まあ、たしかにジャガイモは美味い。馬丁さんの気持ちはよく分かる。

何を隠そう私はジャガイモが大好き。居酒屋に行けば、間違いなくポテトフライを注文するし、馬見で北海道に行くときも、牧場に向かうよりもまずジャガイモを箱買いして自宅に送ることを優先している。好みは「インカのめざめ」。東銀座『いろりや』で出される「インカのめざめ」のポテトフライは、イモの甘み、皮目のほのかな苦み、そして歯応え。まさにパーフェクトで、いつも一人で二皿を食べ切ってしまう。

Potato  

ところが先日のJCの東京競馬場で、釧路馬主から袋一杯の「今金男爵」をお土産にいただいてしまった。北海道産ジャガイモの中でも最高ランクとされ、その希少性からジャガイモ相場の基準価格となるほどの逸品。さっそくジャガバターで頂いたのだが、味はもちろんのこと、そのほっこりとした絶妙な食感がなんとも言えず美味い。思わず「あー、これこれ!」という言葉が出た。

ちなみにJC連覇のジェンティルドンナのお父さんはディープインパクトで、そのまたお父さんはサンデーサイレンス。そのまたお父さんはヘイロー。そのようにして、ずーっと父系を辿っていくと、21代目に Pot-8-O's の名前が登場する。

Pot-8-O's は4歳から10歳まで走って通算34勝(諸説あり)。名馬エクリプスの代表産駒として、生誕から240年を経た現代においても、ほとんどの競走馬の血統表にその不思議な名を残している。これも、件の馬丁が食べたジャガイモが美味しかったおかげ。食べ物の味が競馬史を彩ることもある。

 

 

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2013年11月25日 (月)

牝馬の時代

「それにしても牝馬が強くなったもんだなぁ」

Gentil  

史上初めて牝馬のワンツーに終わったJCの帰途、そんな声が周囲から聞こえてきた。2011年から牝馬が3連勝。2010年のブエナビスタ1位入線(2着降着)を「勝ち」に含めれば、2009年のウオッカから5年連続して牝馬が勝ち続けていることになる。2008年以前にJCを勝った日本の牝馬は皆無。そう思えば「突然牝馬が強くなった」と感じるのも無理はない。

しかし「牝馬の時代」は今や世界の潮流だ。アメリカではレイチェルアレグザンドラ、ゼニヤッタ、ハヴルデグレイスと3年続けて牝馬が年度代表馬に輝いているし、ヨーロッパでもザルカヴァ、デインドリーム、そして今年のトレヴと牝馬の凱旋門賞馬が続々誕生。そのトレヴと並び、現時点でワールドベストホースランキング1位の評価を得ているのは、この春に引退したオーストラリアの女傑・ブラックキャヴィアである。

我が国においても、過去5年の年度代表馬のうち牝馬が4頭を占めている。ちなみに今年のNAR年度代表馬も、先日引退したばかりのラブミーチャンが選ばれる可能性が高い。

Vodka  

なぜ、牝馬たちは突然強くなったのか?

いや、実際のところ、急に牝馬ばかりが強くなったりするはずがない。もともと牝馬は牡馬に比べて強い面を持っていた。人間でもそうだが、本質的には男よりも女の方が体質が強いのである。「いざと言う時、男はオロオロするばかり」と揶揄されるように、環境の変化にも動じることも少ない。それで、かつてはシーキングザパール、トゥザヴィクトリー、シーザリオ、ダンスインザムードといった面々が、そして近年にはウオッカ、レッドディザイア、ブエナビスタ、そしてジェンティルドンナという牝馬たちが、海外で牡馬以上の活躍を残してきた。

「牝馬は扱いにくい」といった固定観念が消えたことも、牝馬の活躍が増えたことの一因であろう。たしかに一度調子を崩すと立て直すのが難しいし、春先にはフケにも注意しなければならない。

それでも、クラブ所属馬全盛という時代が、牡馬よりも安価に出資できる牝馬の人気を押し上げ、「最強牝馬」では飽きたらず「最強馬」を目指す流れを後押しした。むろんエリザベス女王杯の古馬開放やヴィクトリアマイルの新設で、牝馬限定GⅠの価値が薄れたことも無関係ではなかろう。ともかく、牝馬が突然強くなったのではない。強い牝馬が牡馬に勝負を挑むようになっただけだ。

Buena  

そもそも、JCは牝馬の活躍が目立つレースとして知られていた。出走頭数比では15.3%でしかないのに、牝馬の勝率は21.2%。実は5回に1回以上のペースで優勝しているのである。むろんこの数字に2010年のブエナビスタ(1位入線)は含まれていない。なにせ、記念すべき第1回JCの優勝馬からしてアメリカの牝馬・メアジードーツだった。

JC連覇を果たした直後に、ジェンティルドンナの陣営から「引退」の二文字は聞こえてこなかった。来年も現役を続けるのであれば、JC3連覇の偉業にも期待がかかる。もちろんデニムアンドルビーだって雪辱に燃えるだろうし、メイショウマンボだって来年はJCを目指して欲しい。さらにトレヴの参戦があったりしたら、もう凄いことになる。JCは女傑たちのレースだ。

 

 

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2013年11月24日 (日)

パドックの逡巡

「決心は変わらないかい?」

パドックから本馬場に向かうJC出走の17頭のあとを歩きながら、釧路馬主が聞いてきた。前を見据えて「はい、エイシンフラッシュです」と答える。

聞いてきた釧路馬主の本命はゴールドシップだという。パドックに降りるまで、その信念には1ミリの揺るぎも見られなかった。だが、パドックに現れたゴールドシップからは、まるで覇気というものが感じ取れない。終始うつむき加減で、歩幅は短く、引手にもたれるように周回しているその姿を見て、釧路馬主はひと言「やる気あんのかなぁ?」と呟いた。

Ship 

だが、私にしても他人の本命を心配している場合ではない。エイシンフラッシュは馬体をスッキリ見せてまずまずのデキ。が、いつもよく見せることで知られる馬でもある。毎日王冠で受けたような思わず声が出るほどの衝撃は正直ない。とはいえ、本命を変えるほどでもあるまい。それなら初志貫徹だ。

Flash 

注目のジェンティルドンナは、頸を高く上げているのが印象的。いつもこんな高かったか? 

Gent 

「それにしてもトーセンジョーダンがすごいね」

背後から釧路馬主の声が聞こえた。隣にいた某金融関係者も「ホント、気合乗りとか半端ないですよ」と続ける。

Tosen 

私は頷いた。秋の陽に輝く毛艶。伸びやかな四肢。そして魂の発露を感じさせるその瞳。前走との違いは歴然。これがいわゆる「つい口に出すほどのデキ」である。だから、スタンドに上がると、エイシンフラッシュの単複にエイシン頭の3連単だけでなく、エイシン&トーセンの馬連を厚めに、トーセンジョーダンからの馬連もベタベタと買った。

準備は万端。ついにゲートが開くと、あろうことかエイシンフラッシュが先頭に立たされようとしている。しかも2番手はトーセンジョーダンではあるまいか。その2頭が、ゴール前を通過する。おもわず「できたあっ!」と叫びそうになったが、いくらなんでも早過ぎる。

Jc1 

3コーナーで最後方から仕掛けたゴールドシップは、思いのほか動けない。それを見た釧路馬主は早くも意識を失った。次いで直線入口でエイシンフラッシュに鞭が入ると、私も気を失いかけたが、まだトーセンジョーダンからの馬連がある。ジェンティルドンナが先頭に立ってもトーセンジョーダンの脚色は衰えない。「おっ! こりゃ残るぞ! ジェンティルとの馬連でも万馬券だったよな。やった、これで今夜はちり鍋だ!!」

   と思ったの束の間。大外から金子さんの勝負服が矢のように飛んできた。うわ! よせ! 差すな! トーセンジョーダンを差すな!! うがーっ!!!

Goal 

ここで失神するのは毎年のこと。1着が写真判定になっていたことすら知らなかった。史上初のJC連覇を目撃した感慨もほとんどない。ともあれ、これで2013年の東京競馬も見納め。食堂では「良いお年を!」の挨拶も聞こえ、帰途の駅連絡通路には来年のカレンダーを売る声が響いた。毎年のことだけど、JCが終わってからの年の瀬感って半端ない。それにしても、やはりパドックって大事ですね。

 

 

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2013年11月23日 (土)

ヘニーヒューズからまた新星

東京9Rのオキザリス賞は2歳1勝馬によるダート1600m戦。「からまつ賞」の名称で行われたり、一般戦だったりする年もあるのだけど、毎年必ずこの条件のレースがJCの週に行われてきた。1999年はアグネスデジタルが勝っているし、2007年にはのちの重賞4勝馬セレスハントが、のちの重賞19勝馬スマートファルコンを差し切っている。

そして今年、デビュー戦を5馬身千切ってきたアジアエクスプレスが、今度は2着に7馬身差をつけての2連勝。新星誕生を予感させるに十分過ぎるほど、圧倒的なパフォーマンスだった。

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父は来春から優駿スタリオンステーションで繋養されることが発表されたばかりのヘニーヒューズ。JRAではこれまでに11頭が出走して8頭がのべ16勝を挙げている。しかも重賞3勝。新種牡馬ランキング首位のヨハネスブルグと同じヘネシー産駒で、仕上がりの早さと勝ち上がり率の高さがセールスポイントだ。だが、先日のBCディスタフも産駒のビホルダーが勝っており、単なる早熟で終わるわけでもない。

アジアエクスプレスに話を戻す。跨ったR.ムーア騎手は、「馬がまだ子供。まっすぐ走らないし、走るのをやめようとするから、ずっと追わなければならない。終いは良い脚だった。経験を積めばもっと良くなる。距離はマイルまでなら大丈夫」と、無口な彼にしては珍しくたくさんコメントを残してくれた。何か感じるところがあったのかもしれない。

次は全日本2歳優駿と朝日杯の両睨みだという。ダートの割には飛びが高く、芝も問題なさそう。特に今年は朝日杯のメンバーが薄くなりそうな予感もある。このレース7馬身差勝利は、前述のアグネスデジタル以来のこと。彼もまた、芝もダートも問わない王者だった。

 

 

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2013年11月22日 (金)

再び褒賞金

褒賞金の話の続き。

おとといのJRA発表は、褒賞金や重賞レースの新設だけでなく、さりげなく21もの重賞レースの賞金が引き上げられるなど、内向きには大盤振る舞いの内容。だが、その一方でひっそりと姿を消す褒賞金も明らかになった。

* * JRA HP より * *

「外国の競馬の競走に出走する馬及び関係者に対する補助金・褒賞金交付基準」の廃止について

我が国の競走馬の資質向上および競馬に対する諸外国の認識をより一層深めるために設定した「外国の競馬の競走に出走する馬及び関係者に対する補助金・褒賞金交付基準」について、昨今の諸外国における日本調教馬の活躍を踏まえると、設定当初の目的は概ね達成されたと考えられることから、本基準を廃止することといたします。

* * * * * * * * * *

Hongkong_2  

フジヤマケンザンの香港国際カップ制覇に始まる90年代後半の海外遠征ブームは、上記の褒賞金に支えられていた部分が大きい。タイキシャトルが勝ったジャック・ル・マロワ賞の1着賞金は100万フラン(当時のレートで約2400万円)だが、その7倍にも相当する1億6800万円もの褒賞金がJRAから支給されたのである。

褒賞金の支給額はレースの格によってJRAが定める。同じ時期にモーリス・ド・ゲスト賞(1着賞金約1200万円)を勝ったシーキングザパールには9200万円が支給されたが、ほとんどの日本人が知らなかったこのレースを一躍有名にしたのは、このレースの褒賞金ランクがこの年から上がったことを知っていた森調教師の知見によるところが大きい。

ところが、99年からは褒賞金が徐々に引き下げられていく。海外で日本調教馬の活躍するようになり、その役目を終えたというのが表向きの理由だが、それとは別に、多くの一流馬の目が外に向くあまり、日本国内のGⅠレースに空洞化現象が見られるようになったことも原因のひとつだ。

2001年には、秋の天皇賞馬アグネスデジタルと、ドバイシーマクラシックの覇者ステイゴールドの有力馬2頭が、揃って有馬記念を袖にして香港へと渡った。

当時の有馬記念の1着賞金は1億8000万円。香港カップ1億6300万円、香港ヴァーズ1億2800万円に比べれば高いが、これに褒奨金を加えれば有馬記念出走よりもメリットが大きい。むろん相手との力関係もある。実際両馬とも勝ってしまったのだから、その見立ては間違っていなかった。その一方で、有馬記念の売上は前年比12.3%という大幅な落ち込みを記録する。JRAのジレンマはこの時ピークを迎えていた。

今回発表された一連の制度変更は、ここ数十年続いた海外志向から国内重視へと舵を切ったことの現れだろうか。海外遠征を奨励しておきながら、それと同時に国内GⅠのメンバー充実のためにも金を出すという矛盾が解消されたことは評価できる。だが、これによって遠征熱が冷めてしまっては残念だ。去年や今年の凱旋門賞で、多くのファンは世界最高峰のレースで繰り広げられる興奮の味を覚えてしまった。競馬ファンから競馬への情熱そのものを奪う結果になってしまっては、元も子もない。

 

 

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2013年11月21日 (木)

褒賞金

昨日発表された来年のJRA番組概要では、JCダートから衣替えするチャンピオンズカップの1着賞金が9400万円とされてた。今年のJCダートの1着賞金は1億3000万円だから、実に3600万円もの減額。「日本調教馬を中心としたダート最高峰競走としての位置付けを明確にする」と謳っていたはずなのに、これではフェブラリーSと変わらないではないか。

   と思ったら、過去1年の国内ダートGⅠ(もちろん地方のダートグレードJpnⅠも含む)競走の優勝馬が1着になった場合、5000万円の褒賞金が出されるという。本賞金と合わせれば1億4400万円。これは、JC、有馬記念、日本ダービーに次ぐ金額。これなら最高峰と呼ぶに相応しかろう。

ところが、実際に「過去1年の国内ダートGⅠ優勝馬」がJCダートを勝った例は以外にも少なくて、13回行われたJCダートのうち該当するのは半数以下の5回。JBC、JCダート、東京大賞典、川崎記念、フェブラリーSとGⅠ日程がやや過密気味のこの路線の中にあって、JCダートをスキップする馬も珍しくはない。

とはいえ、褒賞金の有資格者なら、来年以降はチャンピオンズCを積極的に狙いたくなるのではあるまいか。来年のチャンピオンズCは12月7日。そこから中2週となる東京大賞典への影響が今から気になる。

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もうひとつ気になるのは、有馬記念に特別出走奨励金が交付されるという項目。GⅠ3着以内、もしくは重賞勝ち馬で、ファン投票10位以内に選出されて出走した場合、ファン投票の順位により500万~2000万円が交付されるというものだ。

もともと有馬記念には、当該年度のGⅠ優勝馬が1着になった場合に3000万~5000万円の褒賞金が交付される制度がある。だがこの条件では、仮に今年の有馬でオルフェーヴルやジェンティルドンナが優勝しても、褒賞の対象とはならない。

そんなケースに対応するのが今回の特別出走奨励金。注目すべきは、ファン投票順位によって金額に色を付けたことだろう。上位になればなるほど奨励金はアップするから、出走へのインセンティブも高まる。形骸化が叫ばれて久しいファン投票も、その順位に意味を持たせることで、ファンの参加意識も高まる可能性がある。

ただし、出るだけで5着賞金と同じ2000万円がもらえるとなると、出走そのものにインセンティブが傾いて、肝心な勝利に向かない恐れもある。出走するけど、無理はしたくない   そんな馬の見極めが、今後は必要になるかもしれない。

 

 

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2013年11月20日 (水)

中央と地方の狭間で

その出自で見れば、騎手は全員地方所属で、馬はマグニフィカ1頭を除いてみな中央所属という浦和記念。これもある意味では“交流”重賞なのかもしれないが、シビルウォー、エーシンモアオバー、ランフォルセの実質3頭立てのレースでは、「交流」という言葉の持つイメージは正直湧いてこない。

Urawa2 

実際、3番人気ランフォルセが勝って、三連複以外の配当はソコソコついた。それでも2着シビルウォー、3着エーシンモアオバーで三連複配当は130円。10頭立ての重賞ということを考えれば記録的ではないか。

それにしても今日のランフォルセは、行きっぷりがここ数戦とまるで違った。前走で15キロ減っていた馬体も、今日は9キロ増。体調の良さに加えてブリンカー着用が功を奏したか。いつでもハナに立てるくらいの手応えで、1周目のゴール前を通過すると、2コーナーでぽっかり空いた内を突いて進出。3コーナーで先頭に立って、そのまま押し切った。

Urawa 

長らく続く西高東低現象は芝もダート路線も変わりない。ダートグレードレースで関東馬のワンツーは、昨年の7月マーキュリーC以来のこととなる。そのマーキュリーCを勝ったのはシビルウォーだった。それが今日は1番人気で悔しい2着。結果的にランフォルセの戸崎圭太騎手に出し抜かれる格好になったシビルウォーの内田博幸騎手は、2コーナーでランフォルセが内を突いたことに触れ、「あそこで内が開くかぁ?」と悔しさを滲ませた。確かに2コーナーの内外の差が、そのままゴールでの1馬身になったようにも思える。

しかしその後の「中央じゃ、あんな競馬ありえない」というダメ押しの言葉が、ちょっと引っ掛かった。冒頭に、騎手の出自はみな地方と書いたが、「元地方」を「地方」と一緒にするのは、やはり無理があるのかもしれない。とはいえ、それも当然か。競馬はセンチメンタリズムだけで成り立っているわけでもない。内田騎手にも   ひょっとしたら勝った戸崎騎手にも   もどかしさはきっとある。我々はそのギャップを意識しながら、中央や地方の競馬を見ればいい。そういったことも含めての交流であろう。

 

 

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2013年11月19日 (火)

オシャレバンチョウ初勝利と

行こうかどうしようか悩んだ末に、笠松へ行くのをやめた。

いや、決してサボりではなく、ちゃんとほかに用事があるから。でも、そう決めた時点で「ああ、これで俺の目当ての馬が勝つんだろうな」と覚悟した。行く→負ける。行かない→勝つ。このスパイラルに一度ハマると抜け出すのは簡単ではない。

まずはオシャレバンチョウの移籍2戦目となる7R。前走は逃げることもできず4着に敗れた。笠松は4着だと賞金が出ない。札幌の新馬戦で4着に粘った時は110万円もらえたのに……。置かれた立場が身に沁みる。

今日の馬体重は8キロ減って473キロ。前走のプラス21キロは、いかにJRAからの移籍緒戦とはいえ、やはり太かったのだろう。しかも今日はマイル戦。すんなり先手を取ると、あとは余裕の一人旅。4馬身差で嬉しい初勝利を飾った。思えばずいぶんと時間がかかったけど、まがりなりにも3歳で1勝を挙げたことを喜ばなければなるまい。目指すはスマートカイザーの代表産駒。騎手、調教師、愛知ステーブルのみなさん、その他関係者すべてに感謝したい。

もうひとつの注目レースは、地方全国交流重賞の笠松グランプリ。大井、川崎、船橋、園田、佐賀からの遠征馬を迎えて総勢10頭が1400mを争う。1番人気は先月までJRAのオープンで活躍していたエーシンジェイワンで、2番人気は南関東と岩手で重賞5勝の社台牝馬ナターレ。

しかし勝ったのは、佐賀からやってきたエスワンプリンスだった。好発からの逃げ切りで勝ち時計は1分24秒5。昨年のこのレースを勝ったラブミーチャンの勝ち時計が1分24秒8だから、レベルは決して低くはない。以前笠松に遠征した時は、あまりのモノ見に行き脚がつかず3着に敗退。今回もモノ見をして、スタート直後や1コーナーではフラつくシーンもあったが、どうにか持ちこたえたのは1番枠の恩恵か。むろん、恩恵を結果に結びつけることができるのは、実力があればこそである。

昨年の九州ダービー馬は、地元佐賀では馬体重を計らせないことでも知られるが、他場ではおとなしく体重計に乗ってくれる。9か月ぶりに計量されたその馬体重は496キロ。9か月前と比較してマイナス5キロだが、その間佐賀で4戦しているからあまり意味のある数字でもない。

「これで重賞7勝目」とメディアには紹介されるのかもしれないが、重賞格付け乱発の佐賀では、彼の馬体重同様、その数字にさほどの意味があるとは思えぬ。敢えて数えるなら、飛燕賞、九州ダービー、ロータスクラウン賞に続く実質4勝目といったところか。むしろこれからは、全国地方交流やダートグレードの数を数えるような活躍を期待したい。

S1  

ちなみに、今日の笠松での私の目当ての馬というのが、このオシャレバンチョウとエスワンプリンスだった。自分が行かないと、これほどまでに完璧に勝つものか。嗚呼…。

 

 

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2013年11月18日 (月)

天馬とソーキそば

平日も土日も競馬三昧の日々を過ごしていると、たまには意識して競馬を断ち切って一日を費やさないと、生活に支障をきたすようになる。それが今日。浦和さんには申し訳ないけど。

クリーニング店に行って溜まったシャツを出し、郵便局から小包を送って、銀行に立ち寄って振り込みと入金確認を行い、文房具店で封筒とガムテとコピー用紙を買った。いったん帰宅ののち、図書館で借りてた本を返して新たな本を借り、TSUTAYAの会員証を更新して、どうせならばと散髪を済ませたところで正午を迎えた。

事務作業一辺倒の一日とはいえ、メシを食べなければ死んでしまうので店を探す。だが、まともな飲食店には月曜定休の店が多い。知り合いが店を開くにあたり、水曜定休と聞いて、「そりゃあやめた方が良い。月曜にしなよ」と口を挟んだこともある。だが、歩けど歩けど「本日定休」の札しか目にできぬ街並みを前にしては、我ながら余計なことを口走ったことを今更ながら後悔した。

最初のうちは、食後にコーヒーを飲みながら借りたばかりの本を読めるような店をと探し歩いていたのだけど、さすがにもう何でも良い。そんな時、目に飛び込んできたのが、こんな屋号。

Tenma  

「天馬」といえばトウショウボーイ。でも、店は競馬には何の関係もなく沖縄料理のお店だった。カウンターに座ってソーキそばを注文する。

そういえば最近は強い馬にニックネームを付けることがなくなりましたね。「天馬」のライバルは「貴公子」テンポイント。シンボリルドルフは「皇帝」で、その息子トウカイテイオーは「帝王」。2005年のダービー直前に、武豊騎手がディープインパクトのニックネームは何が相応しいか?と問われて「英雄」と答えたが、ファンやマスコミに浸透した形跡はない。

騎手についても、昔は「剛腕」とか「鉄人」とか「穴男」といった別名があったのに、今は聞かなくなった。馬も騎手も個性派が育ちにくい時代になったということか。

先日、調教師を勇退された田島良保氏は「仕事人」の異名を取った。ヒカルイマイのダービーなどGⅠ級を7勝したが、1番人気は一度もない。それでテレビの実況アナウンサーが「必殺仕事人」と呼んだのが始まり。そういう上手いことを言えるアナウンサーや記者が減ったのも、ニックネームが廃れた一因だろうか。

Soki  

店名の由来は分からず終い。ソーキそばはごく普通の味でした。

 

 

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2013年11月17日 (日)

霜月Sを勝った3歳馬

福島記念とマイルチャンピオンシップとの谷間にひっそりと行われた東京の霜月Sは、ダート1400mのオープン特別。兵庫チャンピオンシップを6馬身差で逃げ切ったコパノリッキーと、重賞3勝のエーシントップの3歳馬2頭が人気を分けていた。

だがこのレース、3歳馬が苦戦するレースでもある。オープン特別となった1998年以降、女傑ファストフレンドや、今や人気種牡馬のサウスヴィグラスといった面々が勝ち馬に名を連ねているものの、3歳馬の勝利は一度しかない。2歳から3歳限定のレースで格付け上はオープンとなっても、500万、1000万、1600万を着実に勝ち上がってきた古馬に分があることは我々も肌で感じている。ましてや、初ダートとなるエーシントップには、一抹どころではない不安もつきまとう。単勝オッズ4倍の2番人気という微妙な数字が、ファンの心理を反映しているようだ。

Ashin  

とはいえ、ヴァーミリアンも、カネヒキリも、エスポワールシチーも、ゴールドアリュールも、ブルーコンコルドも、メイショウボーラーも、トランセンドも、芝から出発したダートチャンピオンは、最初はみんな疑われた。彼らですら初めてダート戦は、ことごとく1番人気を他馬に譲っていたのである。

ヴァーミリアンが初めてのダートで勝利を挙げた2005年のエニフSは、単勝で1080円もつけたし、カネヒキリに至っては、初ダートの一戦で単勝5950円の大波乱を演出している。見る目がないと言われればそれまで。初ダート組に死角を唱えるのも予想のうちだが、ダートがプラスとなる馬がいるはずだと推理する心も忘れぬようにしたい。

ともあれエーシントップは初めてのダートを克服して、見事優勝を果たした。ダートに実績を誇るテイルオブザキャットを父に持ち、母の父アンブライドルズソングはラヴェリータの父としても知られる。しかも芝では最後のツメが甘いところを見せていた同馬のことだから、結果的にダートは大歓迎だったということになろう。

Blue  

先ほども書いたが、過去に3歳馬が霜月Sを勝ったことは一度しかない。しかもその馬も、2歳時に京王杯2歳Sを勝ちながらその後芝で結果を残せず、スワンSの大敗を契機にダートへ活路を求めてきたのである。エーシントップの戦績とダブるその馬の名前はブルーコンコルド。後に刻まれる彼のGⅠ級レース7勝の軌跡は、実は3歳秋の霜月S優勝から始まっていた。ちなみに当時は6番人気での勝利。エーシントップにとっては、励みとなるに違いない。

 

 

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2013年11月16日 (土)

この馬と再びこの地で

秋陽ジャンプSで落馬したアポロマーベリックがレース終了後もぐるぐるとコースを走り続けてしまったおかげで、予定時刻よりも遅れて迎えた奥多摩S。メインでもない条件戦の割にファンの歓声が思いのほか大きいのは、いったいなぜだろうか。

GⅠ2着の実績を誇るメジャーアスリートが出ているから?

Mejar_2 

……ではなさそう。だいたいその「GⅠ」を知っている人からして多くはない。

ふんじゃあ、GⅡ2着の実績を誇るセイクレットレーブが出ているからだろうか?

Seiku 

そんなはずもないですよね。正解は、この人馬を応援したいがためであろう。スタンドから「頑張れ!」の声も聞こえてくる。

Sudachi 

昨年のNHKマイルCでシゲルスダチに騎乗した後藤浩輝騎手は、直線で急に内斜行したマウントシャスタに進路を塞がれて落馬。頸椎を損傷して、1年5か月にも及ぶ戦線離脱のきっかけとなった。

リハビリ中も、そして復帰してからも、後藤騎手はシゲルスダチへの騎乗を熱望していたとされる。CBC賞に出走するシゲルスダチの応援のためにわざわざ中京まで足を運んだり、復帰直後には栗東を訪れて追い切りに跨っていたが、ようやく1年半ぶりのコンビ再結成は、なんと因縁の東京競馬場で実現した。

「必ずまた同じ場所に戻る」

長く辛いリハビリを支えたのは、そんな一念だったに違いない。その思いを遂げるには、再びシゲルスダチに跨り、今度は一緒に決勝線を駆け抜ける必要があったのだろう。

レースはエールブリーズの9着。しかし、彼らにとって無事にゴールを果たした意義は大きい。前述のメジャーアスリートとセイクレットレーブは、実はあのNHKマイルCに出走していた2頭。止まったままになっていた後藤騎手とシゲルスダチの時計は再び動き出した。後藤騎手は間違いなく“ここ”に帰ってきたのである。

Ale 

NHKマイルCで転倒したシゲルスダチは、幸いにも故障個所はなく、すぐに立ち上がった。だが、アポロマーベリックの例を持ち出すまでもなく、騎手を落とした馬はたいてい一目散に逃げ出すもの。この時も放馬止め係には緊張感が走ったに違いない。なにせ、GⅠレースの舞台である。

しかし、シゲルスダチは馬場に投げ出されてピクリとも動かない後藤騎手に歩み寄り、その傍を離れようとしなかったのである。

キーストンの悲劇を彷彿とさせるシーンに、観客はもとより、のちに話を聞いた後藤騎手も深い感動を覚えたという。馬と人との絆の強さは、西園厩舎のスタッフの愛情の証でもある。明日のマイルCSで連覇を目指すサダムパテックも西園厩舎の所属。これは注目せねばなるまい。

 

 

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2013年11月15日 (金)

連覇か、戴冠か

マイルCSはスペシャリストのレース。過去に29回しか行われていないのに、連覇が5頭、2年連続して3着以内に入った馬が合計11頭もいる。今回は昨年1着のサダムパテック、2着グランプリボス、3着ドナウブルーの3頭が揃って出走してきた。たとえ近走不振でも軽視はしたくない。

Sadam2  

中でも史上6頭目の連覇を目指すサダムパテックは、前走スワンSで復調の兆しを見せただけに、不気味な存在だ。今年は和田騎手の手綱に替わったが、もともと騎手を選ばないタイプでもある。

Sadam 

それに待ったをかけそうな存在がダノンシャーク。昨秋もマイルCSを目指したものの、獲得賞金が足りなかったことから毎日王冠、スワンSとマイル以外のGⅡを連戦。だが、それぞれ5着、4着と敗れて、賞金を加算することができなかった。

本番直前になってダノンヨーヨーの外傷回避により、18番目の出走枠に滑り込んだものの、厳しいローテーションに加え、出走が叶うかどうか手探り状態での仕上げを強いられたことで、万全の状態ではなかったことは想像に難くない。それで6着ならむしろ健闘した方か。賞金に余裕ができたこの秋は、京王杯AHから富士Sとゆとりを持った、かつマイル戦ばかりのローテーションを選択。それで2着→1着と調子を上げつつ本番を迎えるのだから、これは1番人気になるものうなずける。戴冠は目前だろうか。

Shark 

ちなみに、サダムパテックとダノンシャークの直接対決は過去に5回あり、サダムパテックが先着したのが2回に対し、ダノンシャークの先着は3回と、ダノンシャークがわずかに勝ち越している。とはいえ、ダノンシャークが先着を果たした3回を着順で見ると、それぞれ2着、5着、3着と勝ち切れていないのに対し、サダムパテックが先着した2回は、いずれも1着ゴールというのは気になるところでもある。

Daitaku  

マイルCS連覇を果たした過去の5頭を順番に挙げれば、ニホンピロウイナー、ダイタクヘリオス、タイキシャトル、デュランダル、ダイワメジャーと錚々たる名前が続く。これら5頭ともが種牡馬となり、その産駒がGⅠを勝っているのだから、なお凄い。マイルCS連覇は名馬の証し。サダムパテックも、皐月賞ではオルフェーヴルを差し置いて1番人気に推された一頭。素質でも負けてはいない。

 

 

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2013年11月14日 (木)

肉汁信仰

東京競馬場の最寄駅・府中本町から武蔵野線で1駅。北府中駅のほど近くに『カロリーハウス』という知る人ぞ知るステーキハウスがある。使っているのはオージービーフ。霜降り信仰などクソくらえと言わんばかりの赤身肉をしっかりと噛み締めれば、肉本来の味を確かめることができる。

Cal  

巷では「牛脂注入肉」問題が騒がしい。牛脂注入肉を使って「霜降りステーキ」と表示するのは、景品表示法違反の恐れがある。抵触するのは、実際より著しく良いものに誤解させる「優良誤認表示」。だが、牛肉を食べる我々日本人の舌にも、実は致命的な誤解が潜んでいるように思えてならない。

「肉汁たっぷり!」

「あふれる肉汁」

「肉汁がジュワーッと」

ステーキやハンバーグなどの肉料理をTV番組で紹介する際、リポーターはたいていこんな表現で美味しさを表現する。では「肉汁」とはいったい何だ? 広辞苑(岩波書店)によれば

 ①牛肉などからしぼりとった液汁。肉漿。
 ②鳥獣の肉を煮出した汁。スープ。
 ③肉を焼くときにじみ出る汁。

とあるが、一般的には③であろう。じゃあ、③そのものがどれだけ旨いのか。ためしに飲んでみるといい。それがステーキの味わいに等しいはずがない。肉汁がステーキの味を構成する大きな要素であることは否定しないし、私自身肉汁にテンションが上がることもある。だが、それがすべてとは思わない。ステーキの美味さというのは、肉片そのものを噛んで得られるすべての感覚によるものである。

すなわちそれは、肉を噛んだ瞬間に押し返される弾力であり、繊維を噛みちぎる時の歯触りであり、程よい油分による滑らかさである。さらに、肉汁に含まれるイノシン酸、アミノ酸といった味覚成分。むろん塩分や香辛料もそこに含まれる。のみならず、ナッツや桃にも似た牛肉特有の香りに加え、それを焼いたことで得られる香ばしさ。ステーキの「美味さ」の正体とは、これらの総合感覚としか考えられない。霜降りや肉汁だけが美味さの決定的要因ではないのである。

そもそも、日本独自の霜降り和牛は、すき焼きに代表される日本独自の牛肉料理に合わせて淘汰選別されてきた経緯がある。ステーキにことさら肉汁を求めるのは、TVのレポーターらによってもたらされた誤解がその源流にないか。ステーキの美味さを、その複雑な芳香や舌触りで表現するのは至難この上ない。もっとも手っ取り早いのは、TV画面に流れる肉汁の姿。これなら「ご覧ください、この肉汁!」のひと言でリポーターの仕事は終わる。

さらに誤解は続く。「A5ランク」の肉を最上級のものとしてもてはやす風潮があるが、1桁目のA~Cで示される指標は、一頭の生きた牛から、実際どれだけの肉がとれるかを示す「歩留まり等級」。肉牛業者にとっては重大な指標だが、1人前にカットされた状態でお目にかかる客にとって意味があるものとは思えない。

牛脂注入肉の存在は、そんな誤解の集積が生んだ象徴ではあるまいか。もちろん「霜降り牛肉」は日本が世界に誇るべきトップブランド。とはいえ、それを食べる日本人が盲目的であっては、ちと恥ずかしい。

ともあれ、今年の東京開催もいよいよ残すところあと2週。今週は久しぶりに『カロリーハウス』に足を運んで、カロリーを補給することにしようか。

 

 

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2013年11月13日 (水)

手碾きカレー

ここ一番の勝負に臨むにあたり、トンカツやカツ丼を食べる人は多いと思うが、カツカレーもまた勝負メシとしての地位を確固たるものにしている。

昨年末の総選挙では、安倍自民党総裁が党の決起集会でカツカレーを食べて話題になったし、つい先日のプロ野球クライマックスシリーズ西武・ロッテ戦でも、チーム番記者たちが集まる関係者食堂でカツカレーの注文が殺到。担当チームの勝利を祈願するためとはいえ、在庫のトンカツ24キロが瞬く間に品切れになったと聞けば、驚きを禁じ得ない。

Sample  

むろん競馬場でもカツカレーはゲン担ぎメニューの定番。ちょっと気の利いたレストランなら、メニュー名に「勝つカレー」と表記している。むろん、これを食べたからといって必ずしも「勝つ」とは限らない。そんなことは誰でも分かる。さすがにこれを「メニューの偽装」などと騒ぐようなバカはいない。

東京競馬場フジビュースタンド1F西側レストランエリアには、カレーの老舗『メトロ』が軒を並べている。メニューは「カツカレー」もあるが、カレー専門店ではトンカツにガッカリさせられることも少なくない。

そこで、ちょっと余裕のある時は、普通のカレーライス(560円)を購入し、そのままエリア右端の『鳥千』まで移動。そこでフライドチキン(310円)を購入し、カレーライスに載せてもらえば、オリジナルのチキンカツカレーの完成である。

Chikincarry  

もともと、それだけで食べても旨いフライドチキンである。それがカレーと組み合わさって旨くないはずがない。カリッと痛快な歯応えの衣とカレーの相性は抜群。ジューシーな鶏肉から滴る脂がカレーをいっそう旨くする。敢えて難点を探せば、塊のチキンがスプーンでは食べにくい点だろうか。どうしても手を汚さなければならない局面もあるので、『鳥千』で紙ナプキンを多目にもらっておこう。

Tebiki  

ちなみに、『メトロ』の看板には「手碾きカレー」の文字がある。かつて、東南アジアの国々から直接香辛料を買い付け、それを毎朝手で挽いてカレー粉を作っていた当時の名残り。今はそこまではしていないという。とはいえ、これをして「偽装だ!」などと目くじらを立ててはいけない。あくまでも屋号の一部。それくらいの気持ちがなければ競馬場で食事などできない。

 

 

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2013年11月12日 (火)

転入シーズン本格化

今朝の関東地方は今シーズン一番の冷え込み。宇都宮では冬日を記録した。かねてより「シーズン最初にコートを羽織るのはJCの公開調教の朝」というルールを守ってきた私も、さすがに耐えかねてコートの世話になることに。今日は門別でもナイター開催。彼の地は氷点下だというから、これくらいで「寒い」などと言っては怒られるだろうか。でも寒いものは寒い。

寒い日の川崎で身体を温めてくれるものと言えば、前開催でも紹介した担々麺。今日は一風変わった「坦々つけ麺」を目当てに、中華そば『おかべ』に立ち寄った。この店は煮玉子が出色。辛さに負けそうになった口に含めば、ふんわりとした甘さが広がる。

Okabe1  

一風変わっているというのはつけ麺だけではない。実はこの店、ビジネスホテルの1階に暖簾を掲げている。実際、以前はビジネスホテルによくあるレストランだったが、ご主人がかつて中華料理のお店で修業していたこともあり、ラーメン屋に様変わりした。結果、ラーメン屋としての評判は上々で、昼時には行列も珍しくないが、肝心のホテル業がどうなっているかは知る由もない。私のような川崎市民にしてみれば、ラーメンが美味ければそれで良い。

Okabe2  

すっかり身体が温まったところで、川崎競馬場へ。2歳牝馬による重賞・ローレル賞は、南関東11頭に北海道、笠松からそれぞれ1頭ずつの計13頭が揃った。背後から「これだけ寒いと、道営馬が有利だろうな」なんて声も聞こえてくるけど、寒かろうが、暑かろうが、この時期の2歳戦は道営馬が強い。実際、このレースも、ただ一頭の道営馬・クライリングの完勝だった。

Cry  

寒風に吹かれながら第一京浜を川崎駅へと歩く。東京都心で最高気温31.3度を記録し、1875年の統計開始以来、最も遅い真夏日を記録したのは、10月12日のことではなかったか。Tシャツ1枚でも「暑い、暑い」とぼやいていたあの日からちょうど一か月。競馬場で過ごすのにもっとも適した「秋」が、年々短くなる傾向にあるのはいったいどういうわけか。このまま秋が消滅してしまい、「秋華賞」とか「秋の天皇賞」といったレース名が成立しなくなるのではないか。そんな不安を禁じ得ない。

明日は今年の南関東3歳牝馬路線のクライマックス・ロジータ記念。人気を集めるカイカヨソウも、実は道営で2歳デビューを果たしている。昨年暮れの東京2歳優駿牝馬を圧勝は、南関東移籍戦だった。今年も道営ナンバーワンと噂されるノットオーソリティーが、すでに船橋・川島正行厩舎に転入を済ませている。ちなみに今日勝ったクライリングはこのまま川崎・山崎厩舎に転入。どちらも狙うは東京2歳優駿牝馬のタイトルだ。道営2歳馬の強さを思い知るのは、むしろこれからなのかもしれない。

 

 

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2013年11月11日 (月)

5回東京3日目第8レース

重賞や特別レースが毎年ほぼ同じ日程で行われていることは知られているだろうが、それ以外の一般レースも、特に変更の必要がなければ同じ番組が繰り返されることが多い。例えばジャパンカップ当日の東京には、たいてい芝2000mの新馬戦が組まれており、ペルーサやカミノタサハラといった後の重賞ウイナーがデビュー戦を飾っている。

おとといの東京8レースは1000万条件のダート1300m戦だったわけだが、昨年の同じ日、すなわち2012年の5回東京3日目第8レースも、まったく同じ条件のレースが行われている。そのときは1番人気の5歳馬ベビーネイルが1分18秒4で快勝した。

Babynail 

そこから丸一年の休養を経たベビーネイルが、同じ5回東京3日目、すなわちおとといの東京競馬場に姿を現したのである。ただし、この日は8レースではなく10レースの銀嶺S。ちなみにベビーネイルは3歳時にもこのレースに出走し、1番人気に推されながらも、スターボードの5着と敗れている。3年越しのリベンジなるか。ファンの注目を一身に集めて(でもないか)スタートを切ったが、ここはオールドパサデナの圧勝だった。ベビーネイルは8着。1年ぶりの競馬なら、むしろ頑張った方かもしれない。

Old 

一方で、昨年の5回東京3日目第8レースでベビーネイルに負けた2頭が、今年も同じ5回東京3日目第8レースに出走してきた。マックスガイとアルセーヌシチー。マックスガイは2月に一度このクラスを卒業したが、すぐに降級。夏場を休養に充てていた。その後は、昨年のリベンジを果たすため、ここに照準を合わせてじっくり調整……なんてことはなくて、たまたま復帰戦がここになっただけの話。それでも、昨年も同じくこのレースで彼を見ていた私からすれば、その走りに注目せずにはいられない。

Max 

んでも、結果は12着。そんな話は簡単ではないですね。デビュー以来ずっと手綱を取り続けてきた柴田善臣騎手が、直前のレースで落馬負傷。急遽乗り替わった影響もゼロではあるまい。直線で「おっ!?」と思わせるシーンがあるのはいつものこと。競馬は果てしない既視感の繰り返しでもある。

Kikuno 

勝ったのは4歳馬キクノストーム。その勝ち時計1分18秒4は、昨年の5回東京3日目第8レースのそれと、まったく同じだった。

 

 

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2013年11月10日 (日)

田辺裕信騎手絶好調

東京2レース、芝マイルの2歳未勝利戦を勝ったのは、田辺裕信騎手が手綱を取るイタリアンネオ。

重賞3勝イタリアンレッドの甥という血統背景に加え、内田博幸騎手やミルコ・デムーロ騎手が跨りながら勝ち切れなかったことから、今日は人気を下げて4番人気。しかし好発から3~4番手を追走し、直線では早めに先頭に立つと、アースプレイらの追撃をクビ差凌いで見事1着ゴールを果たした。

 Tanabe2  

検量に戻った田辺騎手は、開口一番「背中の使い方がまだまだ」とひと言。勝っても負けても彼はあまり手放しで馬を褒めない。たまには褒めてくれよと言っても、「それじゃあ、高みを目指せないでしょ」と笑う。具体的な課題を示されると、そんじゃあ、また彼に乗ってもらおうか、という話にもなりやすい。そういう意味でも巧い。

Tanabe3  

田辺騎手は続く3レースの新馬戦も勝って連勝。7レースも勝って今週6勝の固め打ち。しかも2週連続で重賞勝利中。一昨年に88勝をあげてブレイクを果たした彼も、昨年はちょっとスランプに陥っていた。しかし、今年はこれで75勝。重賞も3勝。しっかり持ち直している。もともと騎手デビューから初勝利まで5か月、63戦を要した彼のこと。ちょっとやそっとのことでは動じない。

Keio  

ウイナーズサークルに向かうイタリアンネオの馬体をしげしげと眺めながら、「これだけの筋肉はなかなかいない。“優”がもらえますよ」と口にした田辺騎手の父親はJAで肉牛を扱っている。「牛と一緒にするな!(笑)」と怒られていたが、イタリアンネオの馬体にそれほどの素質を見たのであろう。その筋肉の力をすべて出し切れば、もっともっと高みを目指せるという意味の「まだまだ」に違いあるまい。今後が楽しみな馬が、また一頭が表れた。

Stecker  

 

 

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2013年11月 9日 (土)

連闘

戦後の国営競馬で走ったサシカタは通算159戦未勝利という昭和版ハルウララ。しかもその敗戦記録の半数を超える82戦を、8歳時の一年間に記録しているというから驚く。

一年は52週なのだから、毎週走っても足りない。いったいどうやったのか? 答えは「連闘」。当時の「連闘」といえば土日の2日連続出走を指した。一開催8日間全日出走という、とてつもない記録も残した彼女にしてみれば、現代の連闘など鼻で笑うに違いない。

サシカタの時代から60年を経て、先週土曜の新馬戦を勝ったのはフレンチデピュティ産駒のカラダレジェンド。

Shimba 

前半のペースが遅かったせいで、勝ち時計は1分24秒4と平凡だが、スタートするやスッと好位の3番手につけるセンスの高さに加え、持ったまま後続を2馬身突き放して、最後は流す余裕も見せた。追えば、もっと着差は開いていたに違いない。

だから、そのカラダレジェンドが連闘で今週の京王杯2歳Sに出てくると聞いても、それほど驚くことはなかったが、デビュー戦と同じようなレースぶりでアッサリ勝ってしまったことには、多少なりとも衝撃を受けた。

Keio 

馬が慢性的に不足していた戦後の競馬場とは違い、「連闘」と聞くと、どうしてもネガティブにとらえられがちの昨今である。実際、連闘をしないことをポリシーとする調教師がいる一方、連闘にポジティブな調教師もいたりと様々。ポジティブ派のひとりでもある角居調教師は、「調教で鍛えられない部分を実戦で鍛えることができる」と連闘のメリットを挙げている。

また、水・木に追って中3日でレースを迎えるより、期間にゆとりがある連闘の方が逆に調整しやすい場合もある。カラダレジェンドの前走は、追い切りも軽めで、レース内容は馬なりの本馬場調教にも等しい。しかも調教師は新馬を使う前から、「勝ったら連闘で京王杯」と公言していた。よほど自信があったのだろう。

新馬勝ちの翌週に重賞を勝った例といえば、1984年の函館3歳Sを勝ったエルプスを思い出す。エルプスはその勢いのまま、翌年の桜花賞を逃げ切った。この世代初の牡馬の重賞勝ち馬となったカラダレジェンドは、いったいどんな3歳春を迎えるのであろうか。

 

 

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2013年11月 8日 (金)

馬装不備

【日本中央競馬会競馬施行規定第126条】

(略)次の各号のいずれかに該当する馬主、調教師、騎手、調教助手、騎手候補者又は厩務員に対して、期間を定めて、調教若しくは騎乗を停止し、戒告し、又は50万円以下の過怠金を課する。

(19)その他競馬の公正確保について業務上の注意義務に違反した者。

グリーングラスが勝った1978年春の天皇賞。2番人気に支持された前年の菊花賞馬プレストウコウが1周目の坂の下りで鞍ずれを起こして競走を中止した事件は、長い天皇賞の歴史の中でも大きな汚点として記録されている。郷原騎手が普段使用している腹帯を忘れたことが、そもそもの始まりだった。

腹帯は鞍を取り付けるための付属具で、馬の胸に回して締める帯のこと。これが緩むと鞍ずれの原因になるが、強く締め過ぎると馬の能力減退を招くことにもなりかねない。なので、絶妙の締め加減が求められるわけだが、このとき替わりにと渡された腹帯は、郷原騎手も加藤調教師さえも使ったことのない最新のゴム製だった。

加藤調教師は何度も腹帯を締め直して愛馬を送り出したが、結果的には「注意義務を怠った」として過怠金5万円の処分が科された。とはいえ、多くのファンはそれで納得することは無かったことであろう。

ここで私が気になるのは、こういう時の馬主の心境である。調教師はJRAに罰金を支払うが、顧客たる馬主に対しては   もちろん謝罪はするだろうけど   金銭的な補償をすることはない。進上金という成功報酬制度がある一方で、明らかな人為的ミスに対する補償という概念がない仕組みに、そこはかとなく違和感を覚えるのである。

Kurazure  

先日のアルテミスSを勝ったマーブルカテドラルは、プレストウコウと同じように鞍ずれを起こしたが、はからずもレースに勝ったことで、問題は起きなかった(上原調教師は戒告処分)。それでも、負担重量不足や出張馬房からの逃避などで失格や出走停止になるケースは後を絶たない。

管理契約を結んでいる相手の管理ミスにより、期待された目標を達成できなかったわけだから、過怠金とは本来馬主が受け取るべき性格のもの。とはいえ、「それでは調教師と馬主とがグルになって公正競馬を脅かしかねない」と主催者は危惧する。結果、馬主はミスを許容する大きな心が求められることとなる。

Hami  

それでも、馬装不備を敗戦の言い訳にされると、さすがにカチンとくる。しかも、それを主催者には内緒にしてくれと念を押されることも。話が大きくなると過怠金の対象になってしまうからだ。それぐらい堂々と払えよ!と言いたくもなるが、ふと我が身を省みれば、そんな調教師にしか預かってもらえないような弱い馬しか持っていないのがいけないのか、と自虐的にもなる。

ともあれ、鞍ずれにせよ負担重量不足にせよ、馬の側に落ち度はない。いかなるレースでも、馬の全能力を発揮させてやらねば、競馬に携わる人間として情けないと思うのである。

 

 

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2013年11月 7日 (木)

目指せB-1グランプリ

昨日の大井にこんな屋台が出ていた。

Yatai  

「大田汐焼きそば」は、大田区の有志が地元に何かB級グルメ的な名物を、と考案した塩焼きそば。多摩川をイメージしたというオリジナルの平打ちの麺に、海苔やアサリにカリカリ梅と、焼きそばの常識に捕らわれない遊びゴコロ満載の一品だ。

Dsc_0693  

味自体は想像の枠を越えるものではないが、この平打ちの麺がやたらと美味い。とはいえ、あまりに具だくさんなので、麺を思いっきり食べたいという衝動に駈られる。それで、おかわりが欲しくなる。それを狙ってやっているのだとしたら大したものだが、果たしてどうだろうか? 真相を確かめてやろうと、今日も再び大井にやってきたのだが、残念ながら出店は昨夜限りだった。真相は確かめようがない。

Bon  

とはいえ、今日大井にやって来たのは焼きそばを食べるためではなく、かといって誘導の練習に励むボンネビルレコードの姿を見るためでもない。北海道2歳優駿に出走する愛馬の馬券を購入し、声を枯らして応援せんがためである。前走後にひと頓挫あって、直前まで出否未定。さすがに門別まで出かける勇気はなかった。

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そうは言っても腹は減るので、今日はこちらの屋台をリサーチ。

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都内一の出荷量を誇る練馬産のキャベツを多くの人に知ってもらう目的で開発された「練馬野菜ぎょうざ」は、練馬産キャベツを使用し、その他の野菜は国産であり、価格は1人前500円以下   など8つの条件を満たしていなければならない。「野菜」を前面に押しているわりにはジューシーで、見た目よりも食べ応えがある。ちなみに、こちらの屋台は明日の最終日まで出ているそうだ。

Dsc_0694 

おりしも明後日からは、愛知県豊川市でB-1グランプリが開催される。これらふたつのメニューもB級グルメを謳っているわけだが、「富士宮やきそば」や「厚木しろころホルモン」のような昔からあった地元の味ではなく、こうした「開発型」のメニューがグランプリを獲得した例はない。それでも、地元の仲間が集まって楽しめれば、それでイイじゃないかという気もしてくる。

一方で、「声を枯らして応援」するはずだった北海道2歳優駿のポップレーベルは、声を出す局面すらない惨敗。負けは覚悟していたが、ブービーという結末にはちょっと言葉がない。ともかく今日は、大井まで餃子を食べに来たと思い込むことにしよう。それにしてもブービーとは、嗚呼……。

 

 

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2013年11月 6日 (水)

目指せマイルグランプリ

出走16頭のうち、JRAからの転入馬が半数越えとなる9頭を数えた今年のマイルグランプリ。中でも注目の的となったのは、JRA重賞3勝、日本ダービー2着の実績を誇るスマイルジャックであろう。

Sj3 

京成杯オータムハンデを走ってからわずか2ヶ月。関屋記念と東京新聞杯を勝ち、安田記念で2年連続3着の実績からすれば、マイル適性もズバ抜けている。とはいえ近走は二桁着順が続いている上、JRAで2度経験したダートも14着と13着では強気になれまい。しかも59キロ。単勝6番人気というのが、ファンの逡巡を如実に示している。

Sj1  

エイシンチャンプやマーベラスクラウン、あるいはサンライズバッカスなど、JRAのGⅠ馬が南関東に転入してきた例がないわけではない。しかし、日本ダービー2着馬となると話は別だ。なにせ、先日の菊花賞を勝ったエピファネイアも、今年の春の天皇賞を勝ったフェノーメノも、先日の天皇賞を勝ったジャスタウェイの父・ハーツクライも、揃いも揃ってみな日本ダービーの2着馬。ダンスインザダーク、シンボリクリスエス、ゼンノロブロイ……。ダービー2着の名馬を挙げればキリがない。そんな格式あるカテゴリに含まれる馬が、南関東にやってきたのだから、注目しないわけにはいくまい。

Sj2  

近い例としては、ダンツフレームの例がある。2001年のダービーでジャングルポケットの2着し、翌年の宝塚記念を勝って現役を引退したまでは良かったが、諸事情あって種牡馬になることができず、やむなく1年後に荒尾で現役復帰。その後、浦和に移籍するも勝てずに再び引退。その半年後に病死してしまった。

もちろんスマイルジャックの置かれた立場は、ダンツフレームとはまるで異なる。余計な心配をする必要はなかろうが、10着に敗れた今日の走りを見る限り、ダートでは苦労しそうな雰囲気がしてならない。とはいえ、今回は転入緒戦。馬も人も手探りの部分もあるだろうし、移籍前の競馬で目イチの競馬を強いられていれば、その疲れが残っていることもあり得る。もう少し様子を見る必要がありそうだ。

さて、マイルグランプリは、2番手追走のトーセンアドミラルが3コーナーを過ぎたところで早くも先頭。外から追い込んできたピエールタイガーとの一騎打ちをアタマ差凌いで、スパーキングサマーカップに続く重賞2勝目をマークした。

Mileg  

昨年のこのレースの勝ち馬でもあるピエールタイガーは、首の上げ下げで連覇を逃したことになる。これは悔しい。もし勝っていれば、1996-97年のコンサートボーイ以来の快挙だった。

 

 

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2013年11月 5日 (火)

目指せ豚のどんぶり

大井や船橋の開催中は、ちょっと油断すると牛丼ばかりの日々が続いてしまうので、そういう時は意識的に豚肉を食べるようにしている。なんだ、結局「肉」なのかよ!という批判は甘んじて受ける。

ウインズ新橋やウインズ汐留に行くのにJR新橋駅を利用すれば、SL広場に隣接する「ニュー新橋ビル」を目にすることは多いはず。その1Fに店を構える『豚大学』は、大盛りの豚丼を安く味わえる競馬ファンの強い味方だ。

Daigaku1  

豚肉は注文を受けてから焼かれる。炎が上がる焼き台を眺めながら待つこと約10分。運ばれてきた丼は、ひと口大に切り分けられた豚バラ肉がまさに肉の花を咲かせている。タレの味付けは濃い目。それで白飯がまた進む。

Daigaku2  

豚丼は、小・480円から特大・990円まで4段階から選べる。ただし特大は総重量1キロ。注文される方は、くれぐれも自分の腹と相談されたい。店内には「残すべからず」の訓示が掲げられている。自ら注文しておきながら食べ残すのはいただけない。そんなことをしていては、直線であからさまに脚を残して負けた騎手に対し、二度と文句を言えなくなる。

Butaya1  

東京競馬場1Fのホースプレビューへとつながる通路の一角に『豚や』というお店が暖簾を出しているのをご存じだろうか? 立地が微妙なせいか、あまり繁盛している様子はない。私が好きなのはご覧の角煮丼。その額770円。この値段設定も微妙だ。というより、すぐ近くで『吉野家』が牛丼大盛を480円で売っていることを考えれば、正直高いようにも感じる。

Butaya2  

だが、もともと豚の角煮は高級料理でもある。箸を刺すとスッと切れるこの柔らかさ。なのに脂身ばかりというわけでもない。煮汁をたっぷりと吸込み、口の中でほろっと溶ける。この味わいを求めるならば、少々高いのもやむを得まい。ただし、全体を見渡した時、ゆで玉子が冷たいことが難。コレいらないから700円にできないだろうか?なんて思ってしまう。それができないなら、温泉玉子にするとか、角煮の煮汁で煮た煮玉子にして欲しい。競馬場の770円には、そんなさまざまな意見が付随するくらいの価値があると思うのである。

 

 

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2013年11月 4日 (月)

騎手・横山和生

先週土曜の東京6Rで1番人気に推されたのは横山和生騎手のシュガーヒルで、2番人気が横山典弘騎手のナスノシベリウス。何でもないごく普通の500万条件ダート1600m戦が、親子で人気を分け合う注目の一戦となった。

シュガーヒルはご存じアパパネの半弟。ここ数戦は前々でレースを進めながら、ゴール前で相手の決め脚に屈して勝ち切れない競馬が続いていたが、テン乗りの横山和生騎手がどう乗るか。一方のナスノシベリウスも実績上位ながら500万クラス脱出に手間取り、横山典弘騎手の進言でダートに活路を求めてきた。親子対決の行方のみならず、そのレースぶりにも注目が集まることとなる。

軍配は息子に上がった。和生騎手とシュガーヒルは、逃げるゲンテンを深追いすることなく中団を追走。直線で内に進路を取ると、これまでの末の甘さが嘘のようなしっかりした脚色で坂を上り先頭ゴール。見事1番人気に応えたのである。

Suger  

和生騎手は今年がデビュー3年目。1年目が4勝、2年目は12勝、そして今年は現段階で34勝をマーク。先月はダートグレードのエーデルワイス賞で重賞初制覇も果たし、着実にステップを上っている。

和生騎手が今年マークした34勝のうち、実に半数近くの16勝までが逃げ切り、もしくは4角先頭というレースぶりによってもたらされたもの。初めてシュガーヒルの手綱を取った今回も、逃げるかあるいは番手でレースを進めるだろうと見ていた私には、意外にも思える待機策だった。

息子のレースぶりを、ナスノシベリウスの背中から見ていた典弘騎手は、果たしてどう見ただろうか。

7月6日の福島・天の川Sのこと。それまで和生騎手が手綱を取り、逃げて3連勝していたルナを、典弘騎手は敢えて控えさせて3着に敗れた。1番人気馬の敗戦に場内はざわめく。勝ったのが13番人気のメイショウサミットで、しかもそれが逃げ切りだったものだから、場内の不満は収まらない。典弘騎手の騎乗に非難の声があがったのも無理からぬ話だった。

Luna  

次走の漁火Sで和生騎手の手綱に戻ったルナは、連勝時と同じようにハナを奪って逃げ切り勝ちを収めた。そのとき和生騎手が残した「自分の形(逃げ)なら負けない」というコメントは意味深長だ。だが、1番人気に推された京成杯AHでは、テイエムオオタカのダッシュ力に屈してハナを奪えず10着と大敗する。

「今までとは相手が違った」とうなだれた和生騎手は、父が天の川Sで見せた騎乗の真意に気付いたのではあるまいか。シュガーヒルで見せた騎乗ぶりに、成長の跡を見たような気がした。もはや「ノリの息子」ではなく、いちジョッキー「横山和生」として彼を見なければなるまい。

 

 

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2013年11月 3日 (日)

偽装

阪急阪神ホテルズに端を発したメニュー偽装問題は全国各地のホテルチェーンに波紋を広げて、終息の見通しすら立っていない。今朝になって京都のホテルがロコ貝を「アワビ」と表記していた案件が新たな問題として浮上した。ここまでやると、回転寿司にまで手を付けなければ、事態は収まらないのではあるまいか。

実はこの件、発端の一部は競馬にも絡む。阪神競馬場6Fのレストラン『フローラ』は、阪急阪神ホテルズの経営に掛かる店舗。「既製品のハンバーグを“手捏ね”と称して提供していたという当初の一件は、このレストランが舞台となっているのである。

具体的には『手捏ね煮込みハンバーグ(1700円)』というメニューに使われているハンバーグが、実は手捏ねではありませんでした、というもの。メニューから受ける印象としては、注文を受けてからシェフがその手でタネを入念に捏ねて整形し、特製のデミグラスソースでじっくり煮込んだ一品   といったところか。だけど、競馬場のレストランでそんな悠長なことをやっていたら、「おい!いつまで待たせんのや! 次のレースが始まってまうやろ!」なんて、客から怒鳴られそうだ。なので、客のためを思って既製品を使うことにしたのかもしれない(笑)

実際に「手捏ね」をハンバーグのウリにする店は多い。そうはいっても、手でタネを捏ねることで何が生まれるのか。あるいは、何を失わないで済むのか? 

手で空気を入れるように捏ねるとふっくら仕上がるとか、機械で捏ねると肉の繊維が壊れてしまって食感が悪くなるとかいう一方で、手で捏ねると手の体温で肉質が変化してしまうので、敢えて機械で捏ねるという専門店もある。そもそも、機械で捏ねたタネを手で整形しても「手捏ね」だというし、工場で手で捏ねたハンバーグを冷凍し、各地の店舗に配送したものを解凍して客に提供しても「手捏ね」だというのだから、「手捏ね」の看板に振り回されるのは考え物だ。そのうち「手握り」をウリにする寿司屋が出てきそうそうで怖い。

結局は、提供する側がどれだけ信念と責任を込めて作っているか、それを客が推し量るための尺度にしたいのであろう。手間暇をかけていればいるほど、味もそれに比例する可能性が高い。だが、それも“誤表記”の壁の前には無力だ。

2010年5月。ホテルグランヴィア京都の直営レストラン『ル・タン』の弁当で、メニューに「京地鶏」と表記しながら実はブロイラーが使用されていたという一件があった。発覚のきっかけは、それを食べた客からの「京地鶏にしては歯応えが軟らか過ぎる」という指摘だっという。お客さん、なかなかやりますね。

今回問題となったのは煮込みハンバーグである。煮込まれた状態のハンバーグが、手捏ねであるかそうでないか。たとえ口には言い出せなくても、その違いに気づいた客は果たしていたのだろうか。私などは、次のレースのことで頭の中がいっぱいで、メニューに「手捏ね」とあったこともすぐに忘れてしまいそうだ。競馬場のレストランに期待するレベルは限られている。早く提供できること。そして、安心できる味であること。背伸びをする必要などなかった。

Hamberg  

高田馬場に『ザ・ハンバーグ』という店がある。メニューに並ぶのは150グラムから1500グラムまで、50グラム刻みの分量のハンバーグ。メガ盛りですっかり有名になってしまったが、カウンター席からは手捏ねでハンバーグを作る様子をじっくりと眺めることができる。濃い味のソースはなし。大根おろしが添えられたハンバーグは、牛肉の味がシンプルに伝わってくる。これぞまさしく「ザ・ハンバーグ」。手作りをアピールするなら、これくらい思い切るべきなのであろう。

 

 

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2013年11月 2日 (土)

残りものの福を見逃すな

社台グループの1歳馬募集を前にした会員の悩みは決まっている。

走るのはどの馬か?   ではない。ほとんどの馬が走るからである。問題はその中で、競争率が低いのはいったいどの馬か? 第1希望から第3希望まで名前を書き連ねても、抽選が通らない。「走る一頭を買うのではなく、どうにか買えた一頭が走ると信じるしかない」というのは、とある古参会員の言葉。言い得て妙を得ている。

Marble1  

ところが、今日のアルテミスSを勝ったマーブルカテドラルは、社台レースホースの第一次募集で希望口数が40口に到達しなかった珍しい一頭だ。いや、それだけではない、その後も残口を抱えたまま2歳の春を迎え、入厩直前まで満口にならなかった一頭なのである。会員さんなら、「ああ、あの馬か」と心当たりがあるだろう。

父はダイワメジャー。母はチューリップ賞の勝ち馬ヘルスウォール。それで2000万円(一口50万円)なら安い。実際、私も募集馬リストに◎印を付けた。だが、写真入りのカタログが届いて「うぅーむ……」と唸ってしまったのである。不格好な腹身に極端すぎる斜尻。ここから果たして1年後にスッキリした馬体に仕上がるものだろうか……?

それで印を▲に落とした。その後、牧場ツアーで実馬を確認した上で無印に。恥を晒すようだが、確かこの無印にはかなり自信があったように思う。見る目がないと言われればその通り。だが、周囲の大半の会員も同じ評価だったと思えば開き直れる。これは仕方ない。腹身がいびつで斜尻でも走る馬は走るわけだ。いい勉強になった。残りものの中の福を、みすみす見逃してはならない。

Marble 

勉強になったといえばもうひとつ。私はここまでの鞍ズレを起こした人馬が、1着でゴールインする姿をこれまで見たことがなかった。田辺裕信騎手は3コーナーで鞍ズレに気付いたというが、それでも落ち着いて直線まで誘導すると、きちんと馬を追って、最後はきちんと半馬身差を付けて勝つのだから大したもの。人気を集めた天皇賞・春で鞍ズレを起こして競走中止したプレストウコウを思い出した。鞍ズレを起こしても、走る馬はやはり走る。ともかく事故にならくて良かった。

Marble2  

ただ、鞍ズレの原因は、私がかつて違和感を感じた腹身の形状にあるのではあるまいか? いくらキツく腹帯を締めても、ズレやすい馬はいる。ともかく今後はくれぐれも注意してください。

 

 

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2013年11月 1日 (金)

【訃報】オレハマッテルゼ

「そんなに強い馬だとは思っていなかった」

Ore2  

新馬戦に間に合わず、3歳5月で迎えたデビュー戦は、勝ち馬から2秒近くも離された11着。4戦目で初勝利を飾ってからコツコツ走り続けてオープンまで上り詰めたけど、25戦して重賞未勝利の身分では、調教師の口からそういうコメントが出ても仕方ないのかもしれない。

ところが、その馬は4番人気で高松宮記念を勝ち、重賞初勝利をGⅠ制覇で飾ると、返す刀で59キロを背負った京王杯SCを一気呵成に逃げ切ってしまう。だが、結局はこの2戦が彼の競走生活のピークであったと言っても、差支えあるまい。

Ore1  

10月のカレンダーをめくったその日に飛び込んできたのは、2006年の高松宮記念と京王杯SCの勝ち馬オレハマッテルゼの訃報であった。驚くのは13歳という若さ。明後日のアルゼンチン共和国杯に出走するトウカイトリックより、わずか2つばかり年上なだけではないか。腰萎での予後不良は珍しくはないとはいえ、それが種馬となるとあまり過去に覚えがない。

冒頭の言葉は、同馬を管理していた音無調教師が高松宮記念で残したコメントである。2010年にリーディングトレーナーとなり、今日現在でJRA重賞47勝を誇る名伯楽も、意外なことにGⅠはこれが初めての勝利だった。厩舎に初のビッグタイトルをもたらした功績馬の早すぎる死に、音無師の心中はいかばかりであろうか。

オレハマッテルゼには同い年の相棒がいた。その名も「アラシヲヨブオトコ」。ニホンピロウィナー産駒の牡馬だったが、あまりの気性の悪さに去勢され、「オトコ」はまずいだろうと、「オカシナヤツ」に馬名変更された。いずれにせよ、裕次郎世代の中高年に競馬場に戻ってきてほしいというオーナーの願いが伝わってくる。

Hanazu  

ダイナカールから枝葉を広げる牝系はエアグルーヴを筆頭に活躍馬の宝庫だが、意外にも日本のGⅠを勝った牡馬となると、オレハマッテルゼ唯一頭しかいない。種牡馬としても期待が高まってきた矢先だった。活躍馬の筆頭格は来週のエリザベス女王杯に出走するハナズゴール。ジェンティルドンナさえをも下したあの末脚をもう一度繰り出して、天国の父に吉報を届けたい。

 

 

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