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2013年10月12日 (土)

馬も肥えぬ暑い秋

「馬肥ゆる秋」はどこへやら。東京府中の最高気温は31.3度を記録した。観測史上もっとも遅い真夏日が秋華賞の前日に記録されるとは……。もはや、秋の華やかさも何もあったものではない。もともと馴染みの薄い「秋華」という言葉なのだから、この際「襲夏賞(しゅうかしょう)」とでも変えてしまっても良さそうな気がする。

ところで、秋に肥えるのは何も馬だけに限った話ではない、他の野生動物だって肥えるし、人間だって太る。

馬だってもとは野生動物である。家畜化される前は、野山や草原で暮らしており、当然のことながら厳冬期の食料確保は困難を極めた。

雪が解け、草木が芽吹く春が過ぎ、青草をお腹一杯食べられる夏がやってきても、夏の暑さに弱い馬はすぐに太ることはない。ようやく過ごしやすい秋を迎えると、草木が実を付け栄養価を増えることも手伝って馬は見る見る太り、再び訪れる冬に備えるのである。

家畜化され、食べ物の心配をする必要のなくなった今も、その習性はDNAに刻み込まれたままだ。馬は秋になると当然のごとく食べ、筋肉は盛り上がり、毛艶はいちだんと美しくなる。俗に言う「夏の上がり馬」も、晩夏から初秋にかけて馬の体調がアップし、春とはまるで別馬のような活躍を見せる馬が現れるからこその表現である。

Automn  

競馬においては、日本のみならず世界でも秋に重要なレースが数多く開催される。人間のカレンダーに合わせて、年末にクライマックスを迎えたいという興業的な思惑もあるだろうが、もとはといえば競馬が馬の能力検定であった時代の名残である。能力検定だから、馬の体調がベストの時期に行う、というのがその理由だ。

「天高く馬肥ゆる秋」というフレーズは、もともとは中国の言葉。「秋になると辺境から異民族が馬で襲来するぞ」と警戒を呼びかける、まあ一種のスローガンである。それがいつしか日本では「食欲の秋」を現す言葉に変貌したわけだが、そういうことは他の言葉でも間々あること。だが、さらに飛躍させて、「天高く馬肥ゆる秋。お馬さんはグルメなんですね」なんて発言をするTVキャスターもいたりして、これには閉口してしまう。

馬に関する故事やことわざが他の動物に比べて圧倒的に多いのは、馬が人間にとって身近な存在であったことの証である。一方で、その誤用が蔓延るのは、それだけ日本人の生活から馬が遠ざかったことの現れなのであろう。

 

 

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