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2013年9月 3日 (火)

馬主服と騎手服

先日行われた韓国の国際交流レースに、大井所属の的場文男騎手が、自らの「赤、胴白星散らし」の騎手服を着て勝った。実は、韓国は日本の地方競馬と同じく騎手服を採用している数少ない国。的場文男騎手だけでなく、真島大輔騎手も、柏木健宏騎手も、見慣れた自分の騎手服を着ての参戦だった。逆に言えば、韓国と日本の地方競馬以外で騎手服を採用している国はない。

折もおり、この騎手服にまつわる問題がクローズアップされている。吉田照哉氏が「地方競馬でも馬主服を採用していただきたい」と訴えたのは、今月号の社台グループ会報誌でのこと。先週金曜日には、斎藤修氏がnetkeibaのコラムの中で「中央で馬主資格を持っているオーナーさんなら、たとえ地方所属の馬であっても、自分の馬には自分の勝負服で出走させたいと思っている人は少なくないはずだ」と指摘している。

Jockey  

騎手がレースで着用している服を「勝負服」と呼ぶことは、競馬ファンなら誰でも知っている。近年は「ここ一番の場に臨むにあたり気合を入れるための服」という使われ方が浸透してしまったが、もともとはれっきとした競馬用語。その起源は古く、18世紀に英国に創立された「ジョッキークラブ」が発した2番目の規約、いわゆる Second order において、「レース中の出走馬を識別をより正確に行うため、ジョッキークラブに登録した者(馬主)は、配下の騎手が着用する服色をあらかじめ登録しておくこと」と定められている。

その目的は人馬をきちんと識別するため。黎明期の競馬は5~10マイルといった長い距離を競うもので、コースの多くは森の中であったり草むらの中であったりして、人馬の判別が出来ないことが懸案とされていた。実際、レース中に馬をすり替えたり、騎手が乗り替わったりするといった不正が横行していたという。そこで、不正防止の手段として、原色の単純図形を組み合わせた極めてカラフルなデザインの「勝負服」が採用されたのである。

ちなみにジョッキークラブの発した First order は、「騎手は必ず後検量を受けなければならず、その許容範囲は2ポンド以内とする」というもの。これについても不正防止の観点が色濃い。

ともあれ、現代においてはレースの最中に馬や騎手がすり替えられたりすることはなく、勝負服は馬主のアイデンティティとしての存在意義を強めている。

Tosaki  

さて、世界でも類を見ない騎手服だが、同一服色によるミスジャッジ防止に寄与するだけでなく、染分け帽も必要なくなるという利点がある。また、JRAで稀に見るような、調教師が勝負服を忘れて、斜め縞の貸し服で走るようなみっともない光景もない。むろん勝負服の作成費用は馬主の負担。騎手服の採用は、経済的に厳しい地方馬主に対する配慮でもある。

実際、馬主服の導入を求める声は、JRAの馬主資格を持つオーナーからこそ聞くものの、地元の地方馬主から聞くことはほとんどない。いやむしろ、「騎手と騎手服はセットで地元ファンに愛されてきた」とか、「的場さんは、あの服色だから格好良い」などと概して騎手服には肯定的だ。

Yutaka  

騎手の移籍やスポット騎乗が活発になって久しい。JRA馬主資格を持つオーナーの馬が地方競馬のレースに武豊騎手で出走することもれば、交流重賞の地方馬に戸崎圭太騎手が乗る場合もあり、「あれ? この場合、服色はどうなるの?」という疑問が湧く機会も増えた。こういう問題提起が起こるのは、それだけ中央地方の垣根が低くなったことの証であろう。

 

 

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