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2013年9月10日 (火)

五輪用の馬を調達せよ

東京オリンピック招致決定の祝賀ムードに水を差すつもりはないが、半世紀前に行われた1964年の東京オリンピックの準備の中で、もっとも困難を極めた問題は、いったい何だかご存じだろうか。

それは近代五種に使う馬の調達。近代五種は、馬術、フェンシング、射撃、水泳、そして陸上の5種目を1日1種目ずつ順を追って競技するのだが、このうち馬術で使用する馬だけはオリンピックの主催国が準備しなければならない。選手が自前で馬を調教して、試合に臨む馬術競技とは、この点が大きく異なる。

戦前なら軍用馬も使役馬もそこら中にいた。おそらく苦労はなかったであろう。だが、戦後も20年近くが経過し、馬集めは困難を極めた。苦慮した組織委員会がIOCに対し、五輪種目から近代五種を外してくれと申し出たのは語り草だ。だが、さすがにそんな理由で五輪種目から除外されるはずもない。本来オリンピックで禁止されていた競走馬の競技使用が、東京大会に限り特例的に許可されたことで、ようやく明るい兆しが見えてくる。

それでも組織委員会関係者の苦悩が晴れたわけではなかった。競走馬の購入用に充てられた予算は二千万円。それで必要な頭数は80頭である。一頭あたり25万円にしかならない。いくら昔のこととはいえ、その当時でも競走馬一頭は数百万円はするのが常識だった。

そこで目を付けたのが地方の所属馬。だが、足元を見られて商談はなかなか進まない。結局、脚部に不安があり、ほとんどまともに走れぬ馬ような馬ばかりを買うはめになった。心肺機能の鍛錬はしてあるのだから、脚さえ治れば使えると判断して購入されたという。

さらに、障害馬として使い物になるようにするための、調教の問題が行く手を阻む。なにせ、ついこないだまで、ただひたすら早く走ることだけを教えられてきた馬たちに、棒や水たまりを飛び越えることを教えなければならないのである。しかも相手は脚に不安を抱えている馬ばかり。大井から派遣された十代の見習い騎手たちが懸命の調教に当たったが、十日に一度は救急車がやってきたというから、それがいかに危険なプロジェクトであったかがお分かりいただけるであろう。

2020年の東京オリンピックの準備は、これから本格的にスタートする。よもや大井の若手騎手が障害調教で怪我をするような事態にはなるまいが、半世紀前の反省点は生かしたい。「東京五輪のお荷物」と揶揄された不名誉なレッテルを返上する絶好の機会。万全な準備で、無事の開催を祈るばかりである。

 

 

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