« 野次 | トップページ | いざ豚肉 »

2013年6月10日 (月)

ケータイの功罪

長年愛用してきた携帯がうんともすんとも言わなくなったので、ついに私もスマホを持つ羽目になってしまった。最近になってメールの返信が遅れたり、ツイートが滞っているのは、端末の操作がおぼつかないため。どうか、いい年したオヤジが、漢字変換ごときに四苦八苦している姿をご想像いただきたい。ともあれ関係各位におかれては、事情をお汲み取りの上、なにとぞご容赦願う次第である。

思い返せば、私が初めて携帯電話なるものを所持したのは1993年。当時の携帯はレンタル契約のみで、加入時には10万円もの補償金と数万の加入料を支払った覚えがある。それはまさに一大決心。「0円ケータイ」が巷に溢れる現代からすれば、まさに隔世の感があるが、それでもたかだか20年前のこと。ウイニングチケットのダービーは、それほど大昔の出来事でもない。

そんな高価な携帯を持とうと決心したのは、競馬場での連絡手段確保にこれ以上のツールはないと確信したからだ。

当時の競馬場では、人と会うことは至難の業だったのである。

Derby  

なにせダービーでなくとも十数万の観衆でごった返していた当時のこと。「正午にゴール板前で」などと待ち合わせの場所を決めておいても、入場門からゴール板まで歩くことすら容易ではなく、人ごみをかき分けてようやくたどり着いたゴール板前は立錐の余地なき人の海。ついに待ち人との邂逅は果たせず、それが永劫の別れになる   。そんな悲劇も珍しくはなかった。

たとえそれでも、“待ち合わせ”というあの麗しき儀式を知らぬ今どきの若者は、つくづく気の毒というほかない。人を待つ間の期待と不安。ひょっとしたら、相手は来ないかもしれない。いやひょっとしたら、相手に日にちを間違えて伝えてしまったかもしれない。いやいやひょっとしたら、この人ごみの中で自分を探し回っているのかもしれない。あの逡巡が、「今どこ?」の一言で済んでしまう携帯電話というツールは、なんだか罪づくりにも思える。

Sb  

ところが、今でもダービー当日の競馬場では事情が一変するから面白い。ダービーデーに携帯で連絡を取り合おうと考えるのは危険だ。10万人が一か所に集まって携帯を使うのだから、昼休みの前やダービーの発走前後は、たちまちアンテナ圏外となってしまう。内馬場やってきた移動基地局車の応援程度では、到底まかないきれるものではない。かくして競馬場のコミュニケーション事情は、一気に20年前に逆戻りしてしまうのである。

ために私は、ダービー当日に人と会う場合、あらかじめ時間と待ち合わせ場所を決めておくことにしている。待ち合わせ場所に使うのは、今となっては懐かしき「柱番号」。昔は待ち合わせによく使った。伝えた柱の前でひたすら相手を待ち、ついに会えなかった相手もゼロではない。そんなファンの想い出が、この柱の一本一本に刻み込まれているのであろう。便利になったことで、失った物もある。

 

 

|

« 野次 | トップページ | いざ豚肉 »

競馬」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 野次 | トップページ | いざ豚肉 »