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2013年6月30日 (日)

メモ

牧場巡りに出かけて、種牡馬や繁殖牝馬、あるいは乗馬になった引退名馬などとにかくバシャバシャと写真を撮りまくった挙句、家に帰っていざパソコンにデータを取り込んだら、写っている馬がいったい誰なのか分からない    

そんな失敗を、多少なりとも経験されたという方は少なくないのではあるまいか。競馬場ならゼッケンがあるし、ゼッケンが写っていなくとも、騎手の服色やメンコ、あるいは引手の顔で馬の特定が出来るが、放牧中の裸馬、しかも白い部分のないごくありきたりの鹿毛馬だったりすると、あとから見返して、「あれ? こいつ誰だっけ?」となることは少なくない。

Deep  

特に種馬場のパドック放牧を撮り歩くような場合だと、この危険性は増大する。事前に順番を決めてから撮り進んでも、シンボリクリスエスがまったく顔を上げない一方で、隣のディープインパクトがが愛想よく近寄ってきたので、ならばとディープを撮るうち、「なんだ、なんだ?」とシンボリも近づいてきて、慌ててシンボリの方にカメラを向けると、今度は向こうのタニノギムレットが元気よく走り始めたので、おお!こりゃあ撮らにゃ!とばかりにバシャバシャとシャッターを切る。こんな撮影展開になってしまっては、予定の順番も何も無くなってしまう。

Tanino  

そういう場合は、撮影直後にメモで記録しておくわけだけど、それでも撮りながら今目の前にいる馬が誰なのかわからないなんてことはザラ。それで「まあいいや。あとで調べよう」とメモをしないまま、その馬のことをすっかり忘れてしまうなんていうこともなくはない。結果、あとになって、被写体と馬名がひとつずつズレるという悲劇が起こる。せめて「?」とでも書いておけば避けられるミスなのに……。

もともとメモを取るという行為があまり得意ではない。特に人の話を聞きながらメモを取ることはなく、あってもせいぜい人の名前とか電話番号とかメールアドレスの類。メモを取らずとも、大事な内容なら自然と覚えているはずだし、逆に言えば、メモを取らなければ忘れてしまうような話は、覚える必要のない話だと割り切る。それぐらいで良いと思っている。むしろ、その場の空気感によって醸し出される自分の思考や直感を大事にしたい。

先日の社台グループ牧場ツアーでは、牧場スタッフの話を一生懸命メモっている人がいたけど、あの人はちゃんと自分の眼で馬を見る時間があったのだろうか? 忘れては困るからと一心不乱に書き留めているのだろうが、「メモした」という安心感のせいか、メモしたものは案外きれいさっぱりと忘れてしまうものだ。メモを見れば思い出すかもしれない。でも、メモを見て思い出しているようでは、もう遅いという場合もある。

ならばメモなど取らないことだ。ぼんやり聞いているだけで、たとえ話の大部分は忘れても、本当に大事なことは忘れない。細かく、すべてをメモろうとすれば、話の面白い部分がどこなのかもぼやける。大切なことは書かないでおく。そして、忘れてはならない。忘れたら取り返しがつかない、と言い聞かせるのである。そうすれば、将来に渡って脳に刻まれる。

むろん、メモを取るのは悪いことではないが、自分の思考や直感を引き出すことも忘れないようにしたい。

 

 

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2013年6月29日 (土)

オクトーバーフェスト

あのドイツブームは、いったいどこに行ってしまったのだろう?

Buena  

ブエナビスタにも、エイシンフラッシュにも、ディープブリランテにも、凱旋門賞馬デインドリームにも、ケンタッキーダービー馬アニマルキングダムにも、14戦全勝の怪物フランケルにも、皆その血統表のどこかにドイツ血脈が流れ込んでいるのである。なので社台の牧場ツアーなどでは、「これからはドイツ血脈」という言葉があちこちから聞こえていたはずなのに、最近ではついぞ耳にしなくなった。アニマルキングダムの弟・ニューキングダムが大活躍したりすれば、また違ったのだろうけど、今のところは難しそう。ドイツブームは既に去ってしまったのかもしれない。

Dein  

   なんて思っていたら、大井競馬からドイツブーム再燃の兆しが聞こえてきた。

といっても、血統云々ではなく、開催イベントの話。ドイツビールの祭典「オクトーバーフェスト」が、この夏、大井競馬場で開催されるというのである。

今では世界中から観光客が集まるビールの祭典として知られるオクトーバーフェストは、1810年にバイエルンの皇太子・ルードヴィッヒの婚約を祝って祝賀競馬が催されたのがその嚆矢。ゆえに、今でもオクトーバーフェストには馬が欠かせない。巨大ビール樽を引く馬車が街中をパレードし、祭りに合わせて競馬も開催される。

日本では2003年に横浜で初となるオクトーバーフェストが開催された。以来、徐々に規模を拡大しながら今年が11年目。4月のお台場を皮切りに、日比谷、駒沢、仙台、奈良、豊洲、大井、立川、芝、長崎と、半年に渡って日本各地で開かれる。もはやオクトーバーも何もあったもんじゃないが、まあそこはお祭りなので多目に見てあげよう。

重要なのは、今回大井競馬が加わったことで、元来のオクトーバーフェストには欠かせぬ「競馬」という要素が加わり、より本家に近づいたということである。大井競馬場でのオクトーバーフェスト開催は、7月29日~8月2日と8月12日~ 8月16日の計10日間。TCK公式サイトによれば「ドイツづくしの10日間」とあるが、前半の日程は恒例のサンタアニタウィークとも重なる。ドイツと米西海岸の融合ともなれば、もうタダごとでは済まされまい。興味のある方は、ぜひとも7月29日からの大井開催に足をお運びいただきたい。

 オクトーバーフェスト2013公式サイト
 http://www.oktober-fest.jp/

 

 

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2013年6月28日 (金)

テンセイフジの子がやってきた

大井開催の最終日は例によって能力調教試験。中でも2歳能験の受験馬は41頭と、いよいよ2歳馬たちの季節到来を思わせる。

第1レースの1着入線は、優駿スプリント当日にも触れたサウスヴィグラス牝馬のアイミー。母系は昨年の優駿スプリント勝ち馬・ゴールドキャヴィアの半妹とくれば、来年の優駿スプリントで姉妹制覇の期待もかかる。坂井英光騎手の手綱はがっちり押さえたままだったが、800mの走破タイム50秒8は見事。

1r  

第3レースの1着はトンキネンシス。鹿毛の牡馬は、曽祖母がヒシアマグリ、もといヒシアマゾンという名牝系の出自。51秒8で、もちろん合格。

3r  

第4レースに私の注目馬が登場。坂井騎手が手綱を取る牡馬ブラックビアドの母は、2005年の関東オークスでライラプスやコスモマーベラスといったJRAの強豪たちを、まとめて負かしたあのテンセイフジ。JRAの馬が出走できるようになった2000年以降、地方馬として初めて関東オークスを制した名牝の産駒が、ついに南関東にやってきた。

Black1  

しかし、1着入線はアドマイヤジャパン産駒のスマイルモンブランでした。走破タイムは50秒2。これは速い。

5r  

注目のブラックビアドは50秒6で2着。坂井騎手の言葉を借りれば、明らかに距離不足の800mでここまで走れば上等であろう。スタートしてすぐに3コーナーを迎える800mの大外枠だから、この差は仕方ない。今日の50秒台は、ここの1・2着馬と冒頭で紹介した1レースのアイミー。この3頭のみだった。先月のトレーニングセールで9頭を売却するなど日高で存在感を増しつつある愛知ステーブルと、今年は大井リーディングも狙えそうな勢いの藤田調教師とのコンビということでも、注目の一頭だ。

Black2 

 

 

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2013年6月27日 (木)

帰ってきたボンネビルレコード

昨年末の東京大賞典9着を最後に現役を引退したボンネビルレコードが、自らが6年前に制した帝王賞の当日に大井に帰ってきた。

Bon3  

「誘導馬」と聞くと、種牡馬になれぬ馬の引き取り先みたいなイメージを持たれる方もいるようだが、実際にはそう簡単に務まるものではない。彼らも厳選されたエリートだ。

まず、牡でなければならない。毛色も限定される。さらにゆったり堂々と歩けることこれだけでも、大半の馬がふるい落とされる。

これらの条件をクリアしても誘導馬になれるとは限らない。もっとも肝心なポイントは馬の気性にある。

Bon1  

なにせ、つい最近まで速く走ることだけを徹底して教え込まれてきたのである。かつての習性でファンファーレを聞いてイレ込むケースが少なくない。出走馬がすぐ隣をすり抜けていけば、負けじと走り出そうとするのも、競走馬としての性(さが)であろう。

それをクリアするには長い訓練を経なければならない。早くて1年、遅い馬は3年と言われるこの世界。東京大賞典から半年でのデビューというのは、驚愕にも値する。馬の頑張りとともに、調教関係者の熱意の賜物に違いあるまい。前日の優駿スプリント当日まで、ひとり練習を繰り返していた姿が印象に残る。

Bon2  

ただし、昨日は満員のスタンド、色とりどりの傘の花、そしてズラリとならんだカメラマン。明らかにこれまでの練習とは違ったシチュエーションであったが、私の心配をよそに本人は実に淡々と仕事をこなしていた。いや立派。

Bon4  

かつてのライバルで、ひと足先に誘導馬デビューを果たしたサクセスブロッケンのフェイスブックにも紹介されていた。この2頭が揃って誘導を務めるシーンを見てみたいと思うのは、ひとり私のみではあるまい。その実現のためにも、ボンネビルレコードには、誘導馬としての更なる精進をお願いしたいところだ。

 

 

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2013年6月26日 (水)

交流なき交流重賞

南関東の水曜日はこれで3週連続して雨に祟られた。「天候:雨」で行われる帝王賞は、2000年以来13年ぶりのこととなる。

Rain1  

梅雨だから仕方ないとはいえ、JRA東京開催が6月に一度も雨に降られなかったことを思えば、なんとなくヒキの悪さを思わずにはいられない。JRA6頭がすべてGⅠ級勝ち馬という好メンバー。間違いなく必見であろうこの一戦に、傘が必要となってしまったことには画竜に点睛を欠く思いがする。

Rain2  

JRA遠征馬の豪華さとは裏腹に、それを迎え撃つ地方所属馬の影が薄いのはいつものこと。しかし今回はそのコントラストがあまりにも強い。場内のあちこちから「6頭立て」との声が聞こえてくる。とはいえ、宝塚記念も「3頭立て」だと言われながら、結果その見立ては間違っていたではないか。競馬はやってみなければわからない。

地方馬の1番人気は、大井記念の覇者フォーティファイド。2000年の雨の帝王賞を勝ったファストフレンドの産駒である。父のフォーティナイナーも雨が滅法得意。準重賞1着→大井記念1着というステップはアブクマポーロを想起させるが、御神本訓史騎手の負傷乗り替わりは正直痛い。代打は山崎誠士騎手。昨日の優駿スプリント優勝の勢いをここに繋げられるか。単勝85.8倍。

続く地方の2番人気は、ダートグレード9勝、うちJpnⅠを3勝の格上スーニ。でも単勝は177.1倍。しかし凄いオッズだね。

地方の3番人気は……、えっ? ウソ! トーセンルーチェじゃないの? いや、失礼。3番人気はトウホクビジンですね。今日も元気に単勝270.6倍。

Bijin  

んで、この地方上位人気順の3連単のオッズが177848.4倍なんですよ。もはや「意地」とか「応援」などと言って買うことさえアホらしくなってくる。まあ、この中の1頭が、JRAの6頭の誰かしらに先着すれば、ある意味で“勝ち”だよな、と思いつつ迎えたレースは、武豊・ワンダーアキュートの逃げでスタート。

Wonder  

直線に向くと、1番人気のニホンピロアワーズがワンダーアキュートに並びかけて抜け出す構えを見せたが、それを楽々と交わしたホッコータルマエが重賞5連勝で帝王賞制覇を果たした。

Hokko  

JRA勢6頭は上位6着までを独占。そうなるだろうなと考えていた結果とはいえ、雨に打たれて全身ずぶ濡れになりながら見守っていた南関東寄りの人間のひとりとして、忸怩たる思いがないと言えば嘘になる。私が、「交流重賞」という言葉を使わずに、「ダートグレード」と書いているのは、「交流」という言葉がまるで似つかわしくないからにほかならない。勝ったホッコータルマエの秋は、南部杯からJBCクラシックというローテーションを進むとのこと。そこでは、「交流重賞」という言葉が使えるような結果が出るだろうか。

 

 

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2013年6月25日 (火)

サウスヴィグラス祭り

3回目を迎えた優駿スプリントは、大井1200mに3歳の韋駄天16頭が勢揃いした。1番人気は福山競馬最後のダービー馬カイロス。御神本騎手落馬負傷で、福山時代の主戦・佐原秀泰騎手で挑む。

Kai  

僅差の2番人気は、4月に水沢に遠征して重賞・留守杯日高賞を勝っているハードデイズナイト。

Hard1  

3番人気は浦和で連勝中のオキナワレッド。それもただの連勝ではなく、いずれも7馬身差のぶっちぎりでの連勝となれば、重賞未勝利とはいえども軽視はできない。

Okinawa  

……と、ここまで紹介した上位人気馬3頭は、いずれもサウスヴィグラスの産駒。さらにリコーシルエットとマケマケを加えて、総勢5頭のサウスヴィグラス産駒が大挙出走してきた。まさに“サウスヴィグラス祭り”の様相。昨年のNARリーディングサイアーで、今年もリーディング爆走中のサウスヴィグラスが、いよいよ確変モードに入ったか。

レースは、中団のインコースを追走したハードデイズナイトが、馬群を割って抜け出し、ゴール前では後続を突き放す強さを見せて完勝した。1馬身半差の2着にオキナワレッド。夏の夜の“サウスヴィグラス祭り”は、その産駒のワンツーフィニッシュという絵に描いたような結末で幕を閉じたのである。

Hard2  

しかも、1・2着とも牝馬。思えば、先日の兵庫ダービーを勝ったユメノアトサキや、昨年の佐賀2歳チャンプのロマンチック、あるいは昨年の兵庫ジュニアグランプリで3着したハニーパイなど、この世代のサウスヴィグラス産駒は牝馬の活躍が目立つ。

South  

2010年、サウスヴィグラスは日高地区繋養種牡馬としては異例とも言える212頭もの繁殖牝馬を集めた。すなわち今年の2歳世代に当たる。すでに4頭がJRA認定レースを勝ち上がっているのだが、なんとその4頭すべてが牝馬であった。古馬のラブミーチャンを引き合いに出すまでもなく、サウスヴィグラスの牝馬には一目置く必要がありそうだ。

 

 

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2013年6月24日 (月)

化骨と仮骨

右足第四指骨折の診断が下ってから3週間。跛行もずいぶんと治まり、痛みもあまり感じなくなったので、「もう治っちゃったんじゃないか?」などと軽口を叩きつつレントゲン撮影に臨んだ。明日は優駿スプリント、そして明後日は帝王賞である。走るのは無理でも、競馬場内を不自由なく歩き回れるだけで、ずいぶんと助かる。

ところが…。

「あぁ、まだぜんぜんだなぁ……」

撮影したばかりのレントゲン写真を一瞥するなり、医者は無慈悲に呟いた。

「あのう……“ぜんぜん”っていうことは、まだ骨がくっついていないということでしょうか?」

私は訊いてみた。指を力いっぱい曲げたらどうなるか分からないが、普通にしている限り痛みはないのである。せめてテーピングを外してしまいたい。

「まだ“仮骨”の前ですね」

「“化骨”の前?」

「そう仮骨です。ご存じですか」

「若馬の骨格が形成されることですよね」

「?」

「化骨前の馬を無理やり調教するとソエを発症しやすいと言うじゃないですか」

「いや…、あの…」

「ということは、いま無理すると、私もソエを発症しちゃうってことでしょうか? そうなったらブリスター塗らなきゃなりませんかね。いやあ、あれは痛そうだなぁ」

「何言ってんですか! 仮の骨と書いて仮骨。骨のもととなる細胞が患部に集まって、骨の前段階を構成するさらに前の段階だと言ってるんです」

「は…、はぁ…」

「そんなわけで、テーピングの固定はきちっと続けてください。あまり歩き回っちゃダメですよ。ハイ、お大事に」

つい最近まで、医者からは「もっといっぱい歩きなさい」と口を酸っぱくして言われていたのに、一転して真逆のことを言われるのだから、人生は分からない。日高で歩き回ってきたことは伏せておいて、今週の大井ではなるべくゴール前だけでジッとしていることにしよう。

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空港のレストラン

新千歳空港内『宮越屋珈琲』での朝の一杯は格別。都内にも支店はあるけど、もともとは札幌が中心のコーヒーチェーンである。ここでコーヒーを飲んでいると、ああ、北海道にいるなぁ、という気分が味わえる。

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その『宮越屋珈琲』の隣にあった、ノーザンホースパーク直営のレストラン『ノーザンキッチン』は昨年秋に惜しまれつつ閉店。跡地に収まったお店はなんじゃろな?と覗いてみたら、

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なんと、また牧場系ですか。それにしても、よりによって『花畑牧場』とは。

青山のレストランやソフトクリームショップが相次いで閉店に追い込まれていることを思えば、大丈夫なんかいな?と危惧を抱かずにはいられないが、空港内のレストランを利用する人というのは、味でもなく、値段でもなく、ましてや北海道の食材でもなく、「なんかしら北海道っぽいお店を」という選択基準を最優先するから、案外人気が出るかもしれない。「北海道ではカブが美味いんだよ!」という人間は少数派だろうし。

そう思うと、『ノーザンキッチン』が閉店してしまった理由も見えてくる。つまり、観光客の大半は「ノーザンファーム」の凄さなど知らないわけだし、「道内産の安全な野菜をふんだんに使った料理」などと謳っても、そもそも野菜など食べたくない。最初からコンセプトに無理があった。

だが、競馬を知る人間は、社台グループの経営にかかるレストランの価値を知っている。空港はダメでも、どこか別の場所での再開に期待したい。

 

 

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2013年6月23日 (日)

プラドジュール・イクタ

久しぶりに鵡川の『プラドジュール・イクタ』を訪れた。

前回と異なる印象を受けたのは、外壁の色が変わったからであろうか。聞けば、オーナー夫婦の手作業で塗り直しを終えたばかりだという。2年ぶりになるというのに、奥さまは私のことを覚えておいでであった。感激の至りである。

Ikuta

「プラドジュール」は「今日の特別料理」という意味で「イクタ」はこの地域の名前。かつての生田保育園の建物をオーナー夫妻自らがリフォームし、イギリスの田園地帯にでも迷い込んだのではないかと思わせるような瀟洒なレストランが誕生した。席数は少ないが、店内に飾られたインテリアの数々は、見ていて飽くことがなく、次々と運ばれてくる料理たちも出色の美味さである。

Kabu

写真は「アサリとカニとカブのパスタ」。むろんアサリもカニもカブも道内で採れたもの。地元の食材にこだわるというのは、言うほど簡単なことではないのだが、この一皿は素晴らしい。口に入れると、ふわっと広がる繊細な味わいをどう表現すればよいのか。カブ本来の甘みに加え、しっかり浸み込んだアサリとカニの旨味。これを文章で説明するのは至難である。我が文才を恥じつつ、いいから一度食べに来てくれ、と開き直るほかない。

想像するに、この一皿の主役はカブではあるまいか。主役たるカブをおいしく 食べるための脇役として、本来なら主役級のポテンシャルを持つアサリとカニが選ばれたように思えてならない。それほどカブの存在感は他を圧している。例によってボリュームも文句なし。久しぶりに訪れることができてよかった。 

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2013年6月22日 (土)

にげうまだもの

ぶんぶんとダイナミックに頚を振る一頭の種牡馬。

20130622120432 

今夏、産駒が2歳デビューを果たす年齢になったこの種牡馬。お分かりでしょうか? ヒントは額の星です。

Ajudi1  

答えはこちら。

20130622121154 

川島正行調教師も絶賛した「にげうまだもの」という横断幕が話題になったことで、相田みつを氏が馬名の由来と思われている方もいらっしゃるようだが、実際は馬主のお父様で、母・オリミツキネンの所有者でもあった先代のお名前「光男」から名付けられたもの。

まだ勝利を挙げた産駒はいないが、スーパーウィザード(母ケイエスヤア・荒山厩舎)が明日の大井2レースに真島大輔騎手でデビュー予定。父がいくつものビッグタイトルを獲得したゆかりの競馬場で、記念すべき初勝利を期待したい。

 

 

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似たもの親子

種牡馬一年生のトランセンド君です。

Tran1

種付があまり好きではないワイルドラッシュの後継として、生産地の期待を一身に背負って種牡馬入りしたのですが、最初のうちは、あまりソノ気にならないこともあったとか。

「やばい、そんなトコまで父譲りか……?」

Tran2

関係者の心配もつかの間、ようやくこれが自分の仕事であることに目覚めて、今ではそれなりに“業務”をこなしている様子。それでも、栗毛のベテラン牝馬が好みというあたりは、ワイルドラッシュの変態ぶりを受け継いでいるのかもしれません。まあ、つまり、その、それだけ期待できるということです。

 

 

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リーディングサイアーの午後

静内はようやく日差しに恵まれました。

South  

NARリーディングサイアーのサウスヴィグラスも、束の間の日光浴。昨日、名古屋でラブミーチャン勝ちましたね。今日の函館の新馬2頭は厳しい結果でしたが……。

あさっての大井優駿スプリントが5頭出しであることを考えても、やはり地方のダートが合うのでしょう。

 

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2013年6月21日 (金)

日高にホテルを

千歳の「ハイパーホテル」にチェックインを済ませて、今このテキストを打っている。先ほどから外は細かな霧雨が降ってきた。

Hotel  

このホテルを選ぶ理由はいくつかある。安いこと。駅直結だから、今のような天候の時に、いちいち傘をささなくて済むこと。浴室が独立していて、洗い場があること。その浴室用に花王の「バブ」が用意されていること……等々。

空港内の「エアターミナルホテル」では調教師や馬主の姿を見かけることがあるが、「ハイパーホテル」では食堂で競馬ライターと鉢合わせしたりする。まあ、これがあるべき棲み分けであろう。

社台、追分、ノーザンの各牧場に行くならば、千歳は拠点として申し分ない。だが、日高へは遠すぎる。実は明日も、静内まで行ってこのホテルに泊まらなければならない。できることなら、浦河まで足を延ばして、所有する繁殖牝馬に今年生まれた仔馬をひと目見たいところ。だが、千歳から浦河までの136キロは、スケジュール的に無理がある。静内まで行って踵を返さざるを得えないのは、なんとも切ないが、こればかりは仕方ない。

日高に宿を取れば良いのだろうが、それができないからこうして千歳のホテルから雨の夜景を眺めているのである。前々から訴えていることだが、日高管内にはホテルが少なすぎやしないか。「静内ウェリントンホテル」が廃業して、事態がますます深刻化しつつあるように思えてならない。

むかわ「四季の風」や新冠「ホテルヒルズ」のような一部の人気の宿は、数か月先まで満室という状況。むろん、選り好みさえしなければ空いている宿はあるのだろうが、零細の私でさえ泊まりたくないと感じるような宿に、日高の本客たる一流馬主さん方が進んで泊まろうとするだろうか。

1か月後に迫ったHBAセレクションセールに、大井馬主会の不参加が決まったそうだ。その理由は「宿が取れないから」だという。関係各位には、もはや日高の宿泊施設問題は、地域経済を揺るがしかねない大問題だと捉えていただきたい。来年のセリでは売る側に立つ可能性がある私としても、決して他人事とは思えぬ。

できれば、「ハイパーホテル静内」なんてのができてくれればありがたい。あちこち牧場を歩き回って疲れた身体を休めるのに、独立した浴室と「バブ」は、最高の組み合わせであろう。さらに言えばWINS静内の跡地だとなお嬉しい。そうなればセリ会場へも徒歩1分。馬を見るのに疲れたら、部屋に戻って休むこともできる。うーむ、無理だろうなぁ。

 

 

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2013年6月20日 (木)

肉の香り

グルメ番組で高級なステーキを紹介するレポーターの第一声は決まっている。「うわー、やわらかーい!」。しかるのちに、「ぜんぜん臭みとかなーい!」と続く。いつも注意して見ているのだが、これ以外のリアクションは見たことがない。想像するに、彼ら彼女らは、普段よほど硬くて臭い肉を食べているのであろう。

なんて皮肉はさておき、日本人は味わっているものに対しての表現方法が食感に頼りすぎているところがある。「コリコリして美味しい」「サクサクして美味しい」「アツアツで美味しい」という舌触りや温度などの食感を“美味しい”と判断するのである。逆に嗅覚、すなわち匂いに関する表現はとても少なく、たまに使われても冒頭のように邪魔なモノとして扱われることが多い。

そもそも食感を重視する風潮は我が国の食文化のひとつ。でなければカマボコやはんぺん、あるいは和菓子の「葛桜」のような料理は生まれまい。刺身にしても、その弾力が味を左右することを日本人の味覚はよく知っている。

だからといって、ステーキの美味い不味いは、肉の柔らさだけで決まるものでない。味わいに嗅覚が大きなウェイトを占めることは、鼻をつまんでモノを食べてみればすぐわかる。なのに、なぜか香りに関する表現を避けたがる。いやむしろ、肉は臭いものであるかのような発言さえ飛び交う始末。肉に対して無礼に思えてならない。

牛肉には、桃やココナッツに似た甘くてコクのある香り独特の甘い香りがあって、それが旨味のもととなっている。さらに、飼料由来の香りやその土地ごとの土の香りまでもが混ざり合うことで、独特の芳香を醸し出す。それがいわゆる“コク”のもと。これに触れぬのは、なんとなくもったいない気がする。

Kurobeko 

日高道・富川インターを降りて、国道237号線を平取方面に数分進むと、『くろべこ』という赤い外観のレストランが目に入ってくる。びらとり牛のステーキを食わせてくれるお店。ステーキを焼くジューッという音と、食欲中枢を直撃する強烈な匂いがたまらない。表現の仕方というものはTVなりの都合があるのかもしれないが、少なくともステーキは歯触りだけで味わうものではないよな、と改めて感じさせてくれる店だ。

 

 

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2013年6月19日 (水)

南関一筋29戦目の栄光

第16回目を迎える京成盃グランドマイラーズは、小雨そぼ降る船橋に歴戦の古馬14頭が集結。パドック周辺では、「豪華メンバー」という声と、「つまらないメンバー」という声が交錯する複雑なメンバー構成になった。

「豪華」の根拠を探すのは難しくない。14頭のうち重賞勝ち馬が9頭。マグニフィカ、アスカリーブル、ナイキマドリードといったダートグレード優勝馬がいて、ナカヤマフェスタを破ったことのあるアーリーロブストがいて、8連勝中のスマートジョーカーもいる。同じSⅢ格付でも川崎マイラーズに比べれば、確かにレベルは高い。なのに1着賞金は川崎マイラーズより200万円少ない1000万円なんですよ。不思議……でもないか。

一方で「つまらない」という意見の根拠はいくつかある。曰く「同一厩舎ばかり」「同一馬主グループばかり」「中央のオープンで頭打ちになって南関東のA1クラスに編入された馬ばかり」などなどなど。それぞれ言葉は違えど、根っこは微妙に繋がっている。

競走馬の引退年齢が上がり、オープン馬が急増するJRAでは、オープンに上がってから1年間のうちにひとつ勝てないと「収得賞金」の関係で希望するレースに出走することはほぼ不可能になる。ところが、地方では「入着賞金」で優先出走順が決定されるため、JRAで善戦しながら勝てないオープン馬が大量に流れてくるようになった。

Shadai 

加えて、クラブ法人に対して地方馬主登録が認可されたことが追い風となり、船橋の特定厩舎に特定クラブ法人の馬が集結。結果、大井や川崎の調教師が「コツコツ勝ってやっとオープンになったのに、地元の重賞にも使えないんだよ」と愚痴をこぼすことになる。

Sunday 

そういった様々な思いが渦巻くグランドマイラーズは、スタートから先手を奪ったセイントメモリーが、直線に向いてもその脚色は衰えず。4馬身差で逃げ切り勝ちを決めて見せた。

St 

セイントメモリーはデビュー以来一貫して南関東一筋。14頭の出走馬の中で、社台系クラブ法人の所有でなく、重賞未勝利で、なおかつJRAからの転入馬でもない唯一頭の馬が勝ってしまったのだから競馬は面白い。2歳7月のデビュー戦を圧勝するも、体質が弱く、休み休みの競馬を強いられながら29戦目。こつこつ賞金を稼いで、ついに重賞タイトルを掴み取った。本橋騎手快心のガッツポーズは、月岡調教師の思いも代弁していたのであろう。

 

 

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2013年6月18日 (火)

ハービンジャー祭り

「一昨年は“チチカス祭り”で昨年は”ロブロイ祭り”。さしずめ今年は“ハービンジャー祭り”だな」

そんな声があちこちから聞こえてきた今年の社台グループ各クラブの募集ラインナップ。これはすなわち、グループの総力を挙げて種牡馬ハービンジャーを成功させようという決意の表れでもあろう。

Harbin  

それが成功する保証がないことは、チチカステナンゴの成績を見れば分かる。とはいえ、これだけの牧場グループが総力を挙げるというのは、なまなかなことではない。社台ファームのエース・ダンスインザムードもハービンジャー。ノーザンでも、今年のクラシック戦線で孤軍奮闘したコディーノの弟がハービンジャー。あっちもこっちもハービンジャー。まさに今回はハービンジャーの子を見て回るツアーでもあった。

Harbin1  

来月のセレクトセールでも、ハービンジャー産駒は1歳当歳合わせて38頭が勢揃い。同じく30頭のディープインパクトが主役を張ることは間違いないが、下手をするとその主役を食ってしまう可能性もある。それくらいハービンジャー産駒の出来栄えは素晴らしい。

当歳の秋から1歳にかけてどんどん成長し、「これは、ちょっと早過ぎるんじゃないか?」とスタッフが心配するほどだったのが、ここへきて帳尻を合わせるかのように、どの馬も発育曲線が緩やかになってきているという。産駒の生育が早く、かつ大きくなり過ぎないのであれば言うことはない。

Kinkame  

こちらは、サンデーサイレンス系の繁殖牝馬との相性という点において、既に実績を挙げているキングカメハメハ。ところが、大事な商売道具にちょっとしたトラブルを抱えて、この春は種付け業務を途中で停止せざるを得なかった。そんな事情もあって、ハービンジャーにかかる期待はさらに深まっている。

社台グループが掲げる「芝2400mで世界一速い馬を作る」という目標を見据えれば、キングカメハメハ(日本ダービーをレコード勝利)やハービンジャー(キングジョージをレコード勝利)に行きつくのはごく自然な流れ。その流れに乗って、ワークフォース(英ダービーをレコード勝利)も社台スタリオンにやってきた。こちらは今年当歳が生まれたばかり。来年の社台ツアーが“ワークフォース祭り”になるのは間違いあるまい。

Work  

それにしても「祭り」というのは、実に都合の良い言葉ではないか。そこには、なんでも笑って済ませられる無礼講的要素が漂う。これがもし「チチカステナンゴ・キャンペーン」とか「ゼンノロブロイ強化月間」とかだったら、「結果を検証して評価報告書を出せ」などと言い出す奴が出かねない。あー、怖い怖い。

 

 

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2013年6月17日 (月)

氷点下30度の夜を耐え抜いて

社台サラブレッドクラブの募集カタログに掲載される1歳馬の見栄えが、昨年あたりから突然悪くなったと言われる。おかげで、ここ数年満口御礼だった社台の募集馬に残口が出る始末。だが、これには理由があった。吉田照哉氏もクラブ会報でお知らせしていたように、社台ファームでは昨年から冬期においても昼夜放牧を取り入れたのである。

Night  

冬期夜間放牧第2期生となる現1歳世代も、連日の暑さにも関わらず、未だ冬毛抜けきらぬクマのような風体。だが、これこそ記録的な厳寒と大雪に見舞われたこの冬を乗り切った証にほかならない。氷点下30度にもなる暗闇の雪原に、良血馬たちを放置する勇気が私にはあるだろうか。馬へのリスクを覚悟の上で、それでも馬を鍛えなければならないという覚悟には感服する。それが我が国のトップを走る牧場の選択だと思えば、その覚悟の重みもいや増す。

一般に夜間放牧にはこのようなメリットがあるとされる。

・放牧時間の増加による移動が増え、運動量が増加する。
・環境変化刺激による精神的成長が期待できる。
・ストレスが低減し、精神的に安定する。
・大嫌いなアブが夜は活動を停止する。
・いっぱい歩くからいっぱい食べる。
・社会性が育まれる。
・集放牧の手間が省け、コスト削減が見込まれる。

すなわち、健康で、馬体も大きく、ちょっとやそっとのことでは動じない強いハートを持った馬に育つというのである。

反面、このようなデメリットも指摘されている。

・天候の急変など不測の事態に即応できない。
・他動物との偶発的事故
・猛暑、低温にさらされることよる疾病
・放牧地の荒廃

「天候の急変」で怖いのは落雷。シーキングザパールが落雷で命を落としたのは米国内での出来事だが、ゲリラ豪雨や竜巻といった異常気象が、もはや“異常”ではなくなりつつある北海道においても、決して他人事ではない。

「他動物」ということではエゾ鹿があげられる。こちらも近年猛烈に増殖中。馬の放牧地なのに、馬よりも鹿の頭数の方が多いなんて光景はもはやザラ。夜間放牧中に鹿とぶつかり、その鋭利な角にやられて馬の方が死んでしまうこともある。

そんなリスクを抱えてまで、社台にも先んじて通年の夜間放牧に踏み切った牧場がある。新冠のノースヒルズファーム。海から離れた内陸の小高い丘に位置するこの牧場も、冬は相当に冷える。にも関わらず、3年前から冬場の夜間放牧に踏み切った。ということは、その中には今年のダービー馬キズナが含まれていたということになる。

Kizuna  

社台ファームの現2歳馬たちの中に、冬期夜間放牧の効果を見いだせる一頭が果たしているのか。この夏の2歳戦のテーマとして追いかけてみたい。

 

 

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2013年6月16日 (日)

オリエンタルアート×ステイゴールド

5月31日付で社台系クラブの不振を取り上げたこのブログを嘲笑うかのごとく、縦縞の勝負服が暴れまくっている。マルセリーナかマーメイドSを勝ち、アムールポエジーが関東オークスを勝ち、そして今日の函館スプリントSをパドトロワが勝ってみせた。計ったように社台の牧場ツアーに合わせて勝つのだからたいしたもの。重賞勝利にまさる営業効果はあるまい。

Oa2012   

晴れ渡った北海道の日差しを受けて黄金色に輝く栗毛馬が登場した途端、500人の参加者から「おおっ!」という声があがった。今年の社台ツアーの目玉、オリエンタルアート×ステイゴールドの牡馬の登場。配合も、性別も、毛色も、預託先厩舎も偉大な兄と同じで、馬体も文句なし。周回を重ねるたび、二重三重に取り囲んだ観衆から、自然とため息が漏れる。

見た目からしてオルフェーヴルの1歳時と瓜二つなのだが、実は彼に関しては兄と大きな違いがふたつある。ひとつは服色。この1歳馬は、バッテンではなく縦縞の服を着た騎手が乗ることになる。となれば、当然育成方針も変わってくるわけだから、この素材がこの先どういう成長を遂げるのか非常に興味深い。東主任の腕の見せどころだ。

Oa2012_2  

もうひとつの違いは、お値段。1億8千万円は、今年の社台&サンデーの全募集馬の中で抜けた最高額。実にオルフェーヴルの3倍にも相当する。

だからと言って、この栗毛の1歳馬がオルフェーヴルの3倍の賞金を稼ぐことはない。現時点のオルフェーヴルの獲得賞金が11億4千万円だから、その3倍ともなれば34億円にも及ぶ。国内最高賞金のジャパンカップを13勝してもまだ足りぬ見返りを期待する方がおかしい。

Oa2012_3  

それでもこの馬の周りには人垣が絶えることがない。儲かりそうだから買うのではなく、良い馬だからどうしても欲しい。そう思えるのは、セレクトセールで1頭に何億もつぎ込む大馬主も、クラブの一口出資者も同じだ。そもそも損得を考える人は、馬など買わぬであろう。この馬に大金を注ぎ込んで、たとえ思うように走らなくても、偉大な2頭の兄たちを恨むほかはあるまい。馬の値段というもは、そうやって決まるものなのだ。

 

 

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2013年6月15日 (土)

あごだし

先日、東京競馬場正門から歩いて5分ほどの距離にあるラーメン店に連れて行ってもらった。その連れは「あごだしが強烈なんだぜ」と言う。

アゴダシ……。

Kakedashi  

あ、いや、これはエアジハード産駒のカケダシでしたな。

「あご」とはトビウオのこと。焼いたあごで取るだしは、あっさりとしていながら深みのあるコクとほのかな香ばしさが食欲をそそる。あごの産地でもある長崎では吸い物に使われるほど、その味は上品かつ雑味はない。

そんなあごだしを「強烈」と表現するラーメンとは、いったいどんな一杯なのであろうか?

Ramen  

不思議に思いつつ出てきたラーメンは、鰹節を砕いた魚粉がスープに浮く一杯だった。たしかにスープはあごだしのようだが、それをはるかにしのぐ魚粉の香りは、なるほど「強烈」と表現するほかはない。

あとから調べてみると、「あごだし特有のクセ」とか「この匂いの正体はあごだし」といった表現がネット上に溢れていることに気付いた。繰り返すように、本来あごだしは実にアッサリしていて、むしろその味の薄さに物足りなさを感じるほど。それが「強烈」になってしまうのは、だしの取り方に問題があるのか、それともあごそのものに問題があるのか、あるいはあごだしの印象の薄さをカバーするために使われるこうした魚粉などのせいであろう。結果、あごと鰹の味が混同されているのだとしたら、あごにとってこれ以上の悲劇はあるまい。

Goto_2  

巣鴨のとげぬき地蔵近くに暖簾を掲げる『ここ長崎』は、東京では珍しい五島うどんを食べさせる店。五島のアンテナショップも兼ねており、バラモン揚げや珍しい焼酎などを楽しむことができるわけだが、やはり一番人気は五島うどんだそうだ。つるりと喉越しの良い麺と黄金色のあごダシとの組み合わせは、まさしくゴールデンコンビ。日本三大うどんのひとつであるとか、我が国のあらゆるうどんのルーツであるとか、そんな薀蓄を挙げればきりがない。「美味ければそれでいいじゃん」と言いたくなる一杯だ。

 

 

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2013年6月14日 (金)

59キロを背負って

戦前の女傑・ヒサトモは、前走から15キロもの斤量減で秋の天皇賞を大差で制した。前走が71キロでの出走、それが56キロになったのだから、大差勝ちも当然だろう。今の競馬ファンには信じらないかもしれない。

負担重量の仕組みは複雑だが、大ざっぱにいえば賞金と負担重量は連動しており、稼げば稼ぐほど重くなる。近年は賞金と負担重量の関係は緩やかになり、極端な重量を背負う馬はいなくなったが、それでも今週の函館スプリントSのようにドリームバレンチノの59キロが話題になったりもする。

函館スプリントSの場合、4歳以上牡馬の基本重量が56キロ。収得賞金が3000万円を超す場合、超過額2000万円ごとに1キロ加増の賞金別定で、ドリームバレンチノは収得賞金が9900万円のため3キロ増の59キロとなる。ちなみに収得賞金2億5935万円のロードカナロアが出走するとなると67キロを背負わされると思えば、59キロなんて騒ぐほどの重量ではないようにも思えてくる。

だが、札幌スプリントS時代を含め、このレースで過去59キロ以上を背負って勝った馬はいない。

1994年 ユウキトップラン8着(60キロ)、
1995年 ゴールドマウンテン4着(60キロ)
2010年 ビービーガルダン2着(59キロ)

「ドリームバレンチノ自身、58キロを背負ったシルクロードSを優勝しているのだから1キロくらい増えても大丈夫」という見立てもあるようだが、58キロからの1キロ加増というのは、53キロからの1キロ加増とはわけが違う。そもそも、そのシルクロードSで2着に敗れたダッシャーゴーゴーは59キロの斤量を背負わされていた。

芝1200mの重賞の中でも、斤量差が大きくなりがちなG3戦で、59キロを背負った馬が勝ったレースとなると、ショウナンカンプが勝った2003年の阪急杯以来途絶えている。すなわち今回ドリームバレンチノが勝てば10年ぶりの快挙。そんなことまで踏まえながら、このレース連覇がなるかに注目したい。

 

 

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2013年6月13日 (木)

EIPH(運動誘発肺出血)

唐突にオルフェーヴルの宝塚記念回避が発表された。

Olfe  

サンデーレーシングの表彰台独占もありそうな情勢だっだが、その可能性はグッと低下してしまったと言って良かろう。ちなみに、ローゼンケーニッヒがウィリアムズで出るので、表彰台独占の可能性は決してゼロではない。この3頭の3連単なら、そこそこ配当つきそうだ。買ってみようか。

EIPH(運動誘発肺出血)とは聞き慣れないが、要するに肺出血性の鼻出血の、鼻出血を伴わないパターンだと思えばいい。激しい運動によって心臓からの血液量が急増することで、肺の中の毛細血管の血圧が上昇。その結果、血管が破裂してしまう。心臓が強すぎる馬ほど発症しやすいとも言われ、女傑・ウオッカもこれにより現役引を余儀なくされたことは、まだ記憶に新しい。

ウオッカのように鼻出血を伴えば、1か月の出走停止のペナルティーが科されるが、オルフェーヴルのように肺出血のみの段階ではそのようなペナルティーはない。だが、逆に言えば、鼻からの出血が確認されないことで、EIPHが見過ごされている馬も少なからずいるはず。海外では、人気馬が不可解な敗戦を喫した場合、すぐさま内視鏡で肺出血を確認するのが常識となっている。

サンデーサラブレッドクラブのホームページの記述では、「2週間くらい安静すれば肺の状態も落ち着くのが通例」とした上で、放牧に出して様子を見る方針のようだが、私が気になるのはもちろんその先の凱旋門賞についてである。現地では前売り1番人気とも伝えられているのだから、ヨーロッパの競馬ファンにしてもきっと無関心ではいられまい。

1993年の皐月賞馬・ナリタタイシンは、当時は菊花賞のステップレースだった京都新聞杯の直前に肺出血を発症し、同レースを回避。その後、3日間だけ運動を控えて、菊花賞直行を決断する。結果、3番人気の支持を集めながら、大差のブービーに敗れた(※しんがりは心房細動を発症したネーハイシーザー)。陣営が肺出血に敗因を求めたことは、言うまでもない。

また2004年のCBC賞後に肺出血が判明したシーイズトウショウは、ただちに休養に入った。翌年5月の谷川岳Sで5か月ぶりに復帰を果たし4着に敗れるも、翌6月のテレビ愛知OPを1分6秒7という快時計で勝ち、返す刀で7月の函館スプリントS連覇を果たしている。

Sheis  

鼻出血を伴わない肺出血といっても、数か月程度の完全な休養放牧に出すことで完治を目指すのが理想であろう。だが、どんな馬だって多少の無理を押してレースに使われているのも事実。文字通り一点の曇りもない体調など、もとから望めるものでもない。オルフェーヴル陣営がどのような判断をするか、大いに注目すべきところであろう。

 

 

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2013年6月12日 (水)

メダル独占

関東オークスは今年も雨。梅雨だから仕方ないとはいえ、これだけ「カラ梅雨」が話題になっているのに雨に降られるというのは、主催者の普段の行動がよほど素晴らしいに違いない。それにしても、14頭がゲートを出るのと同時に、突如として雨脚が強まるのはいったいになぜであろうか?

1番人気はJRA所属のオメガインベガス。初ダートの未勝利戦を大差で逃げ切り、500万下も3馬身差で逃げ切ったその実力と、2009年のジャパンカップにも参戦した米GⅠ馬ジャストアズウェルの従兄妹という血統背景も魅力だが、何より川崎2100mを知り尽くした戸崎圭太騎手の手綱というのが心強い。単勝オッズは1.9倍。

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2番人気もJRAのアムールポエジー。やはり未勝利、500万下と連勝中で、ダートグレード2勝のミリオンディスクの妹という血統の持ち主。加えて手綱は岩田康誠騎手。単勝オッズ4倍ジャストは、案外美味しいのかもしれない。

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3番人気もJRA2勝馬モンシュシュ。こうなると、さながらJRAの3歳牝馬限定1000万条件戦の様相。

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4番人気にようやく地元川崎のフォレノワール……と思ったら、JRA4戦1勝で転入緒戦となれば、実質JRA所属馬と変わらない。こちらのお母さんは、牝馬ながら帝王賞を制したあのネームヴァリュー。まあ、そのネームバリューにしても、JRA準オープンからの転入後に大活躍したわけだけど。

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レースは逃げたデイジーギャルを2番手でマークしたアムールポエジーが、2周目の向正面から鞭を振って先頭に立つ積極的な競馬。追い込むオメガインベガスを5馬身突き放す圧勝だった。

Oaks  

登録時点では補欠の1番手。回避馬も出そうもなく、このまま放牧の可能性が高かった。出走権を持っていたエイシンラトゥナが急遽マーメイドSに向かうという幸運を、結果に結びつけたのだから素晴らしい。2か月前は未勝利だった馬が、こうして重賞を勝ったのだから、関係者の喜びはさぞ大きかろう。

それにしても気がつけば、3着モンシュシュまで社台ファーム生産馬が表彰台を独占ではないか。社台牧場ツアーやセレクトセールを前にしたこの時期ゆえ、その意義は小さくない。このお方が、わざわざが川崎まで足を運ばれただけのことはあった。

Daihyou  

 

 

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2013年6月11日 (火)

いざ豚肉

東京競馬場の5週連続G1と南関東のクラシックがぶつかるこの時期は、例年嵐のような忙しさ。加えて、2歳競馬のスタートと各クラブの1歳馬応募も重なり、今日は福島、明日は北海道とハードな日程が続けば、気づかぬうちに疲労もピークを迎える頃合いか。そんな時に、いつものようにうどんばかり食べていると、糖質や脂肪をエネルギーに変えるビタミンB1が不足し、疲労感はさらに増す。

Buta1  

そんな貴兄にぴったりなのが豚肉。先日の東京競馬場でも、『豚や』の「炙り豚めし弁当」を食べて、ビタミンB1の補給に励んだ。ビタミンB1には、ご飯などの糖質を体内でエネルギーへ変えるだけでなく、脳の中枢神経の機能維持にも欠かせない。午後の勝負を前にした昼食としては、もってこいのメニューであろう。

Buta2  

こちらの弁当は、甘辛いタレで焼いた薄切り豚肉がご飯の上に載せられたもの。吉野家の大盛弁当にボリュームでは及ばないが、脳神経のためだと思えば十分満足できる。

しかし、豚肉料理の王道と言えばやはり生姜焼き定食をおいてほかにあるまい。大井競馬場のお膝元、大井町・大森には、そんな王道を行く店がひしめき合っている。

Happiness  

大井町は言わずとしれた“芸術盛り”の名店『ハピネス』。やや厚目に切られた豚肉が鉄板にどどーんと積み上げられたその光景は、思わず息をのむ美しさだが、むろん味もパーフェクト。ただ、この店に来た以上は、山盛りのスパゲティーを頼まないわけにもいかず、そういう意味では客泣かせな一品ともいえる。

Shiga  

一方、大森には『福来食堂』の生姜焼き定食がある。平成も四半世紀になろうというのに、いまだ昭和テイストを失わない店内で供される生姜焼きは、まさに家庭の味そのもの。だいこんおろしがたっぷりなのが嬉しい。大井競馬場から片道10分もかからない場所だが、営業時間の都合上、ナイター帰りに立ち寄るのは無理。注意されたい。

 

 

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2013年6月10日 (月)

ケータイの功罪

長年愛用してきた携帯がうんともすんとも言わなくなったので、ついに私もスマホを持つ羽目になってしまった。最近になってメールの返信が遅れたり、ツイートが滞っているのは、端末の操作がおぼつかないため。どうか、いい年したオヤジが、漢字変換ごときに四苦八苦している姿をご想像いただきたい。ともあれ関係各位におかれては、事情をお汲み取りの上、なにとぞご容赦願う次第である。

思い返せば、私が初めて携帯電話なるものを所持したのは1993年。当時の携帯はレンタル契約のみで、加入時には10万円もの補償金と数万の加入料を支払った覚えがある。それはまさに一大決心。「0円ケータイ」が巷に溢れる現代からすれば、まさに隔世の感があるが、それでもたかだか20年前のこと。ウイニングチケットのダービーは、それほど大昔の出来事でもない。

そんな高価な携帯を持とうと決心したのは、競馬場での連絡手段確保にこれ以上のツールはないと確信したからだ。

当時の競馬場では、人と会うことは至難の業だったのである。

Derby  

なにせダービーでなくとも十数万の観衆でごった返していた当時のこと。「正午にゴール板前で」などと待ち合わせの場所を決めておいても、入場門からゴール板まで歩くことすら容易ではなく、人ごみをかき分けてようやくたどり着いたゴール板前は立錐の余地なき人の海。ついに待ち人との邂逅は果たせず、それが永劫の別れになる   。そんな悲劇も珍しくはなかった。

たとえそれでも、“待ち合わせ”というあの麗しき儀式を知らぬ今どきの若者は、つくづく気の毒というほかない。人を待つ間の期待と不安。ひょっとしたら、相手は来ないかもしれない。いやひょっとしたら、相手に日にちを間違えて伝えてしまったかもしれない。いやいやひょっとしたら、この人ごみの中で自分を探し回っているのかもしれない。あの逡巡が、「今どこ?」の一言で済んでしまう携帯電話というツールは、なんだか罪づくりにも思える。

Sb  

ところが、今でもダービー当日の競馬場では事情が一変するから面白い。ダービーデーに携帯で連絡を取り合おうと考えるのは危険だ。10万人が一か所に集まって携帯を使うのだから、昼休みの前やダービーの発走前後は、たちまちアンテナ圏外となってしまう。内馬場やってきた移動基地局車の応援程度では、到底まかないきれるものではない。かくして競馬場のコミュニケーション事情は、一気に20年前に逆戻りしてしまうのである。

ために私は、ダービー当日に人と会う場合、あらかじめ時間と待ち合わせ場所を決めておくことにしている。待ち合わせ場所に使うのは、今となっては懐かしき「柱番号」。昔は待ち合わせによく使った。伝えた柱の前でひたすら相手を待ち、ついに会えなかった相手もゼロではない。そんなファンの想い出が、この柱の一本一本に刻み込まれているのであろう。便利になったことで、失った物もある。

 

 

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2013年6月 9日 (日)

野次

東京3レースの3歳未勝利戦に、今日最初の騎乗となる岩田康誠騎手が姿を現すと、一人のオジさんが激しいヤジを浴びせ始めた。

Padock  

昭和の当時ならともかく、最近の競馬場では珍しい。だがその内容は、昭和とは何かが違うのである。

「岩田っ! てめぇ、汚ねぇ乗り方ばっかしてんじゃねぇよ!」

「自分ひとりで競馬やってんじゃねえだろ!」

「わかってんのかコラ! もっとフェアにやれ!」

かつて、パドックのヤジは前のレースで負けた騎手に向けられるものと相場が決まっていた。つまり「下手クソ!」「金返せ!」の類である。このオジさんも、安田記念ではショウナンマイティの単で大勝負をしていたのかもしれないが、勝った騎手に対するヤジというのは、聞いていて違和感を覚えた。

 Yasuda

安田記念の直線で外斜行し、10万円の過怠金という制裁を受けた岩田騎手に対する非難が広がっている。ネット上の匿名の声はともかく、評論家や馬主の一部からも彼の騎乗を問題視する声が上がったことで、競馬ファンの間にも馬券の収支を超えた憤怒が芽生えたのかもしれない。

あの安田記念のあと、何人かの記者やカメラマン、あるいは他競技の審判らと問題のシーンについて議論を交わす機会を得たのだが、その結論はすべて「ルール上はセーフ」というものであった。もちろん、美しい競馬ではなかったことは間違いないから、私自身岩田騎手を擁護するつもりはない。ここでのポイントは、ルール上セーフである以上、これがJRAが目指した競馬の姿であるという点にある。

昨年までは「他馬に妨害を与えた場合」だった審議基準が、今年から「妨害がなければ、被害馬が加害馬に先着していた場合」に変更となったことは周知の通り。安田記念の判定に多くのファンが納得できないのは、昨年までの判定基準のイメージから未だ抜けきらぬ証であろう。海外から「世界一フェア」と絶賛されたJRAの競馬は、JRA自身の手によって既に葬り去られた。もはやこれがJRAの目指す姿であると諦めるしかない。

安田記念を報じた新聞各紙も、岩田騎手の過怠金について「後味の悪さが残った」と判を押したような表現でまとめていたが、これがルール上セーフであり、ルール変更によってもたらされた変化の典型であるとなぜ明確に書かないのか。「後味の悪さ……」で済ませては、岩田一人が悪者になってしまう。「もっとフェアにやれ」というヤジが、正しい方向を向くよう導くのもメディアの役割であろう。

「ルールの範囲内なら何をやっても良いのか?」という批判めいた質問もあるようだが、それは「YES」であるとしか言いようがない。野球であれサッカーであれルールの範囲内で最大限の結果を求めるのがプロのアスリート。そこにファンの投じたお金が賭けられている競馬はなおさらだ。文句はルールを作った人に言うべき。現場は勝つことを最優先に戦っている。

3r 

ちなみに岩田騎手は、この3レースで5番人気グランデアリュールを見事勝利に導いた。さすが、園田のディープなファンに鍛えられただけのことはある。ヤジごときで動じるほどヤワなハートの持ち主ではない。

 

 

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2013年6月 8日 (土)

真島大輔1000勝達成

昨日の大井3レースでナイキスパークルに騎乗した真島大輔騎手は、このレース1着となり地方競馬通算1000勝を達成した。真島大輔騎手ご本人はもとより、ご両親である佐賀の真島元徳調教師ご夫妻にも祝福申し上げたい。おめでとうございます。

Mashima  

2001年10月の初騎乗から9712戦目での達成は決して早い方とはいえない。だが、デビュー直後から減量に苦しみ、2003年のようにわずか7勝に終わった年もあったことを踏まえれば、彼が20代のうちに1000勝を達成するとは思わなかった。関係者一人ひとりに感謝であろう。

Daija  

むろん、馬への感謝へも忘れてはならない。1000勝達成のメモリアルとなったナイキスパークルとのコンビでは、これが2勝目。その姉であるナイキフェイラーで3勝、同じく姉のナイキアステップで8勝、さらに弟のナイキフェイムとも4日の大井で勝ったばかり。この姉弟たちとのコンビで実に14勝を稼いでいると思えば、偉大な母ナイキアクトレスには足を向けて寝られまい。

Captain  

真島騎手の初重賞制覇はアウスレーゼで制した2006年トゥインクルレディー賞。以後、ショウリダバンザイの桜花賞やミヤサンキューティの優駿スプリントなど、通算10勝を数えるが、そろそろ大井のビッグタイトルが欲しい。今年の牡馬クラシックは羽田盃2着、東京ダービー3着。大一番を前に有力馬の手綱が回ってくるようになったことは成長の証であろう。だがそれは逆に、「惜しかった」では済まされぬ立場になったということでもある。

Yushun  

彼も来月8日で満30歳。30代は結果が求められる。

 

 

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2013年6月 7日 (金)

靴下の話に続いて靴の話。

ちゃんと競馬場に足を運んで競馬を楽しまれている方ならご同意いただけるものと思うが、競馬場という場所は実によく歩く場所でもある。骨折した足で競馬場を訪れてみると、それが身に染みてよくわかる。

指定席に入ったところで、馬券を買うには背後の階段を昇り降りせねばならず、ちゃんとパドックを見ようと思えばバルコニーまでの往復がそれに加わる。昼食時ともなれば、空いている店を探して歩き回ることになるし、食後のコーヒーを飲むためにまた歩かねばならない。たばこ一本を吸うにも、遥か彼方の喫煙室まで歩かなければならないのが昨今の競馬場である。

とはいえ、メタボに悩む中年オヤジにとっては、これも福音と捉えるべきであろう。医者から毎日1万歩のウォーキングを厳命されている我が身にしても、競馬場で過ごす日がなければ、とてもそのノルマを達成することなどできない。携帯の万歩計に記録された日々の歩数を顧みれば、土日ならびに水曜日の歩数が1万5千~2万であるのに対し、それ以外の曜日はおしなべて5千前後。JRA開催のある土日と南関東で重賞が行われる水曜が突出しているのである。ローカル開催に入ったらどうすればよいのか? 今は考えないでおこう。

ともあれ、健康法としてのウォーキングがもてはやされる昨今である。私も歩きやすいようにとシューズショップでは極力重量の軽い靴を選ぶようにしていたのだが、これは必ずしも正解ではないらしい。聞けば、長時間を続けて歩くような場合は、靴を振り子のようにして歩くので、ある程度の重量があった方が疲れが溜まりにくいのだとか。その目安は左右合わせて体重の1%。私なら片方400グラムが良いということになるが、これは歩き方やその距離によってもちろん異なる。

Kutsu  

騎手が履くブーツは、軽い方が良いに決まっている。ために一般的な乗馬用のブーツが天然皮革製であるのに対し、ジョッキーブーツは軽くて水にも強い合成皮革製。靴の底面には滑り止めのゴムを張るだけで、かかとの高さも数ミリ程度に留まる。「靴」というよりはもはや「靴下」。そこまでして軽量化にこだわる理由はフィット感だけではない。競走馬の負担重量は、騎手の体重に鞍とベストとブーツの重量を合算したもの。10グラム単位の減量に神経を擦り減らす騎手にしてみれば、ブーツの軽量化は死活問題でもある。

Tsuro  

ところで、東京競馬場7Fの馬主席からパドック脇馬主エリアへの往還は、まさに気の遠くなるような距離である。先月試しに歩数を計ってみたら、片道だけでなんと461歩を数えた。往復で900歩ちょい。1日12レース、律儀に往復を繰り返せば1万歩に達してしまうのである。普段の生活で1万歩を稼ぐには相当の決意と努力を要するというのに、競馬場とはやはり不思議な空間であると思わざるを得ない。

 

 

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2013年6月 6日 (木)

靴下

6月の東日本競馬の舞台が福島から東京に移されたことで、耳慣れぬ特別競走が目につく。先週土曜の「国分寺特別」は四半世紀ぶりの復活だそうだ。特別レースの命名にはJRAも苦労していると聞くが、自ら苦労の種を撒いているのだから世話はない。

Kokubunji  

かつて、秋の東京に「秋興特別」という特別レースがあった。900万条件の芝2000m戦。4歳(当時表記)のサクラローレルが圧倒的人気を背負って2着に敗れたこともある。

「秋興」と書いて「しゅうきょう」と読むのだが、私のPCの漢字変換機能では変換されない。そんな言葉の意味がわかる人が、果たしてどのぐらいいたのだろうか。広辞苑によれば「秋のおもしろさの意」とのこと。大半のファンにしてみれば、決して馴染みある言葉ではあるまい。わずか3年で消えてしまったのも無理からぬ話だった。

そういう意味では、園田競馬場で行われている「加古川くつした特別」といったレース名の方が、分かり易くかつ親しみも覚えるという点で断然優れている。兵庫県は、東京都、奈良県と並ぶ靴下の三大産地であり、兵庫県の生産量の半分は加古川市周辺が占めているのだという。ふーむ、なるほど勉強にもなる。

ところで靴下といえば、つま先が単純な円形で、左右兼用なのが当たり前だとばかり思っていたのだが、(柄の問題ではなく)形状的な意味あいで左右専用の靴下というのがあるのだそうだ。へぇ、知らなかったですね。

よくよく考えれば、履きやすく疲れにくくするには、靴同様に左右とも足の形に合わせた方が良いに決まっている。左右つま先の形状に合わせて立体的に編まれた靴下は、左右兼用靴下よりも窮屈さがなく、ずれにくいのだという。あのイチロー選手も愛用しているらしい。

ちなみに最近の私は、もらい物の「ドリームジャーニー靴下」「ワークフォース靴下」「ダノンシャンティ靴下」そして「ヴィクトワールピサ靴下」の4種8本の靴下をシャッフルして、そこから2本適当に選んで履いています。

「おお、今日は右がワークフォースで左がヴィクトワールピサか」

とか

「ややっ、今日はドリームジャーニーのゾロ目だ!」

なんて感じで遊んでいるわけですね。勝負服のワンポイントはズボンの裾に隠れるから、傍目には気づかれない。だけど、ダノンシャンティだけはなぜか茶色い生地なので、こいつが混ざるとちょっとした悲劇が起きることになってしまう。。。

Socks  

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2013年6月 5日 (水)

インとアウトの明と暗

人気を勘案すれば、新たなダービージョッキーの誕生が予感された第59回東京ダービーは、4番人気のインサイドザパークがゴール寸前で差し切って優勝。鞍上の左海誠二騎手は、9度目の挑戦で、ついにダービージョッキーの仲間入りを果たした。

Seiji1  

船橋所属でありながら、JRA重賞を3勝もしている腕達者。38歳でのダービー初優勝はむしろ遅かった気もするが、それがダービーというもの。観戦に来ていた戸崎圭太騎手も、「ダービーは簡単に勝てるレースではない」と語っていた。ダービー4勝ジョッキーの言葉だと思えば、その重みもいや増す。

実はこの言葉は、左海騎手に対してではなく、御神本騎手に向けられたものだった。圧倒的1番人気のアウトジェネラルの手綱を取った御神本騎手は、ダービー初勝利にもっとも近い距離にいるかに見えたが、掲示板にも載れぬ6着。持てる能力が抜きん出ていることは間違いなくとも、それだけではダービーの女神は微笑んでくれない。

「もし負けるとしたら、ゲートで遅れて内ラチ沿いに押し込められる展開くらいしか考えられない」と我々が思っていたのは、逆に言えばそれくらいしか死角を見いだせなかったことの裏返しでもある。それが現実のものになるとは、あまのじゃくな私も驚いた。「アウト」という名前とは裏腹に、インコースが仇になった格好。逆に「インサイド」という名の持ち主が、大外に勝機を見いだして豪快に差し切ったたのだから皮肉としか言いようがない。戸崎騎手によればアウトジェネラルはゲート1完歩目が遅いのだそうだ。両馬の枠順が入れ替わっていたら、結果は違ったものになっていたかもしれない。

Seiji2  

それにしても、南関東デビュー馬による東京ダービー制覇は久しぶりではないか。サイレントスタメン以来だから、4年ぶりということになる。道営やJRAで賞金を稼いだ馬が3歳になって南関東にやってきて、転入2、3戦目でダービーを勝ってしまうようでは、南関東の2歳競馬の意義が問われかねない。これから本格化する南関東の2歳競馬に、潤いと活力を与えるインサイドパークの勝利であった。

 

 

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2013年6月 4日 (火)

今日もどこかでフジキセキ

安田記念当日の日曜は、東京と阪神でひと鞍ずつ新馬戦が組まれたが、どちらもフジキセキ産駒が勝ち上がった。2011年以来種付けを休止しているフジキセキの産駒は、この2歳が最後の世代となる。最後のクラシックに向けて、まずは好スタートを切ったと言ってよさそうだ。

サンデーサイレンス産駒のトップを切って1995年に種牡馬入りしたフジキセキは、サンデー系種牡馬乱立の時代になってもなお存在感を失っていない。先週末は東京と阪神で5勝の固め打ち。由比ヶ浜特別のデンファレは、9番人気ながらハナ差で勝利をもぎとった。

10r  

今年の3歳世代でもメイケイペガスターとタマモホットプレイの2頭が重賞ウイナーとなり、見事ダービーにまで駒を進めている。この10年間でフジキセキ産駒不在のダービーは2度しかない。次から次へとサンデー系の新種牡馬が登場するこの時代にあって、この安定感は称賛に値する。

超大物は出ないかもしれない。でも、芝でもダートでも、2歳からでも古馬になってからでも、とにかく堅実に走る。社台の牧場ツアーに参加すると「初めて持つならフジキセキ」というフレーズが、半ば合言葉のようになっていた。だが、その言葉ももう今年からは聞くことはない。

Fuji  

フジキセキ産駒の今年のJRA勝利数は49。昨年に続く百勝超えも見えた。通算産駒勝利数で5位につけるフジキセキだが、4位ライジングフレームとの差は25だから、今年中の逆転は、ほぼ確実。通算勝利数のベストテンに、父子でランクインしているのは、サンデーサイレンス&フジキセキの父子のみ。それがいかに稀有な出来事であるか、説明の必要はあるまい。

Tamuro  

今週のエプソムカップにも、アカンサスとタムロスカイの2頭のフジキセキ産駒がエントリーしている。「出馬表を開けばそこにフジキセキ産駒」。そう感じるほどの不思議な存在感こそが、フジキセキ産駒の魅力のひとつであろう。

 【種牡馬のJRA勝利数ベスト10】

 〈1〉サンデーサイレンス 2749
 〈2〉ノーザンテースト  1757
 〈3〉ブライアンズタイム 1593
 〈4〉ライジングフレーム 1379
 〈5〉フジキセキ     1354
 〈6〉パーソロン     1272
 〈7〉ヒンドスタン    1258
 〈8〉サクラバクシンオー 1232
 〈9〉トサミドリ     1135
〈10〉ネヴァービート   1064

 

 

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2013年6月 3日 (月)

骨折

あろうことか、右足を骨折してしまった。

Paddock  

馬が、ではない。私自身の話である。

具体的には右足の第四指。土曜の朝に自宅のタンスの角にぶつけた。よくあるやつ。例によって飛び上がるほど痛かったのだが、まさか骨が折れているとは思わず、土日とも予定通り東京競馬場に出かけた。

ジッとしている分には問題ないのに、歩くと激痛が走る。土曜はなんとか履けた革靴が、日曜の朝にまるで入らなかったのは、骨折の影響で右足がパンパンに腫れ上がっていたからであろう。とはいえサンダル履きというわけにはいかないから、気合いで足を押し込んで、痛みを堪えつつ競馬場内を歩き回った。

むろん普段通りのペースで歩くことなどできない。レースが終わってやっとパドックに辿り着いたと思ったら、ちょうど騎乗命令がかかるところで、それでも最後の一周だけを眺めてエッサホイサと自席に戻れば発売締切のベルが鳴り響く始末。それでも、競馬場に来た以上、パドックは欠かせない。結果、私が競馬の次に楽しみにしている昼飯を食べる時間を犠牲にせざるを得なかった。

Load1  

安田記念に至っては、パドックを見終えてから、かえし馬を見たいあまり小走りをするという暴挙に出た上、ロードカナロアの1着ゴールを確認するや、エスカレータを駆け下りて、2階の一般席に降りてウイニングランを見物するという失態を演じてしまったのである。今になっては、この軽率な行動が骨折の全治を遅らせることに繋がらないことを願うのみだ。

Load2  

それにしても、“意識”というのは恐ろしい。今朝になっても、痛みが引かず、むしろ腫れがひどくなっていることが心配になって、念のためにとレントゲンを撮ったら、きれいに骨折線が写っていた。その画像を一瞥した途端、激痛が走り、歩くことさえ怖くなったのである。昨日の競馬場での我が身を振り返ると、気が遠くなる思いがする。

騎手たちが「鎖骨は折るためにある骨」とか「多少の骨折ならレースに乗る」と言うのを耳にするたび、「ふーむ、そういうものですか」と、なんとなく同意していたが、足の指がちょっと折れただけでこれだけ痛いことを知れば、おいそれと同意などできぬ。足の小さな骨がちょっと折れただけで、歩けなくなってしまうとは思わなかった。昨日の安田記念で、パドックからスタンド7Fまで、いったいどうやって走ったのか? 大いなる謎。ミステリーだ。

競馬ミステリーシリーズでお馴染みの作家ディック・フランシスは、現役騎手だった当時、鎖骨だけで13回の骨折を経験している。障害専門の騎手なのだから、その回数はさして驚くほどでもない。ただ、骨折のたびに、そのまま自分で車を運転して病院に行ったというエピソードには言葉を失う。落馬に対する恐怖心を克服するためには、それくらいの感覚でいなければならないんだとか。私は到底騎手になれそうもない。

それにしても、明後日の東京ダービーと、来週の社台牧場ツアーはいったいどうなってしまうのだろうか?

 

 

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2013年6月 2日 (日)

歴史的名馬の予感

1989年に生まれたサラトガデューは、3歳の1月にニューヨーク・アケダクト競馬場でデビュー。H.マコーレー騎手を背に、5馬身3/4差でデビュー戦勝利を飾った。するとそこから一気の5連勝。6戦目に初黒星を喫したものの、秋にはガゼルH、ベルデイムSと2つのGⅠを連勝し、ニューヨーク州産馬として初となるエクリプス賞・最優秀3歳牝馬に耀くこととなる。

Laod1 

サラトガデューの3代母シリアンシーは、今もアメリカ史上最強との声が根強いセクレタリアトの全姉にあたる。そんなボトムラインを持つサラトガデューに、母の父セクレタリアトのストームキャットを配合して生まれたのが、JRA5勝のレディブラッサム。すなわち、安田記念を勝ったロードカナロアの母である。距離不安が囁かれていたロードカナロアだが、母系に潜むセクレタリアト×シリアンシー姉弟のクロスから、マイル戦にも対応できる底力を受け継いでいたのかもしれない。

Load2 

マイルGⅠ2勝で、前哨戦マイラーズカップも完勝のトップマイラーが馬群に消え、かわりに浮上したのがマイル戦未勝利かつ東京コース未経験の馬と、芝1800未満初出走の馬   。それだけを聞けば、今年の安田記念も波乱だったかと思ってしまうところだが、それが1番人気→3番人気なのだからファンはちゃんと見ている。

Load3 

さて、GⅠレース4勝目をマイル戦初勝利で飾ったロードカナロアの秋のローテーションは、いったいどうなるのだろうか。

実は高松宮記念を勝った時点で、この秋はセントウルS→スプリンターズS→香港スプリントの3戦のみで現役引退することが、一度は発表されている。だが、安田記念を勝ったからには、マイルチャンピオンシップに興味が向かぬはずはあるまい。古馬牡馬混合のスプリント&マイルGⅠ4レースの完全制覇となれば、空前の大記録。オルフェーヴルやジェンティルドンナらの成績によっては、年度代表馬の目も見えてくる。

もともと、今回の安田記念出走も突然だった。高松宮記念を勝った直後は「春シーズンは休養」と発表されたのに、「58キロで出られるから」という理由で一転出走。調教師は「東京のマイルでどんな走りをしてくれるかな」程度の思いだったようだが、終わってみれば選択肢が大きく広がる結果になった。秋のローテも見直されることになるかもしれない。

 

 

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2013年6月 1日 (土)

ウインズ静内廃止に思う

キズナと武豊に14万観衆が熱狂した5月26日、場外馬券発売所「ウインズ静内」が35年の歴史にひっそりと幕を下ろした。

Wins  

1978年に開業したウインズ静内は、91年には約80億円を売り上げを記録したものの、2011年には16億9千万円にまで減少。年間2億円の赤字を出し続ける存在になってしまったことから、経費削減、事業再編の一環として営業終了に至ったという。

発端は10年ほど前、総務省が農水省に対して、売り上げ減少が続くウインズの規模縮小を求めたことに始まる。

1990年に馬券発売全体のうち6割を占めていたウインズのシェアは、総務省勧告が出た時点で4割に落ち、現在は3割を割り込んでいる。その背景にPAT投票の普及にあることは言うまでもない。ウインズの外周を二重三重に取り囲むほどの絶望的な行列に並んで馬券にありついていた我が身にとっては、俄かに信じられぬが、どうやら事実らしい。

同じオフトラックでも、ウインズはPATに比べて賃借費用や人件費といった経費が膨大になる。投資効率の悪いウインズを廃止・縮小するという方針は、経営判断として間違ってはいまい。PATの普及とリンクさせれば、「時代の変化」と総括することで、ファンの理解も得やすくなる。

だが、私自身のようにPATでの馬券購入にネガティブな人間もいる。理由は前にも書いたので割愛。さらに、馬券配当への課税が社会問題化しつつある昨今、アシの付くPATでの馬券購入をためらう向きもあると聞く。薔薇色にも思えたPATの先行きも、決して万全とは言えない。

廃止となったウインズ静内の代わりは、道営のミニ場外「AIBA静内」(J−PLACE)で賄うという。だが、最小限の設備しかないAIBAとウインズとでは、その居心地はまったく違う。そもそもAIBAは「居心地」など考えてない。それゆえの「ミニ場外」という規格である。ウインズに慣れた人に「代わりにAIBAがあるじゃん」と言うのは、実情を知らぬ者の言い種であろう。netkeibaの田中哲実氏のコラム(5/29付)では、利用者のそんな声が綴られている。ぜひこちらも参考にされたい。

http://news.netkeiba.com/?pid=column_view&wid=H01

ウインズを「ファンが一日を楽しく過ごせる場」として発展させるつもりはないのだろうか。かつては、そういうコンセプトで作られたウインズもあったはず。ウインズ回帰の動きも出始めた今日この頃だけに、JRAの見据える先が気になるところだ。

 

 

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