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2013年5月18日 (土)

勝って、驚きたい

「いや、待てよ……」

自宅を出て、駅に向かってしばらく歩いてから、ふと思いたってその歩みを止めた。

今日は、知人の馬がメインレースで人気を背負って出走する。ということは、メインの口取り撮影に写り込むことになるかもしれない。錚々たる馬主の方々たちを差し置いて、社台ファームのみなさんと同じフレームに収まる可能性があると思えば、それ相応のナリが必要なのではあるまいか。

立ち止まって我が身を顧みるに、いつものシャツにいつものネクタイ、それといつもの靴。馬主エリアのドレスコードを満足こそすれ、正直これでは大井に行くのと変わらない。こんなナリでは馬を持つ知人に対してはもちろん、一緒に写真に写る日本競馬の重鎮たちにも失礼であろう。東京競馬場のメインレースであることを思えば、場内のファンに対してさえ礼を失するように思えてしまう。

私は直ちに踵を返した。しかるのちに、ダービーで着ようと思って買ったままの状態になっている新品のシャツをおろし、クローゼットの奥から普段は滅多に着ないダブルのスーツを引っ張り出し、パントレセレーブルの凱旋門賞で着用したネクタイを合わせ、アスコットで購入した靴を履いた。私の貧相なワードロープの中で、これ以上のコーディネイトはない。あらためて自宅を出た途端、近所のおばさんから「あら、結婚式?」と声をかけられ、競馬場に着くや田中勝春騎手から「ダービーは来週だよ」とからかわれた。

9r  

それにしても東京の芝は前が止まらない。内ラチから2頭分を空けたあたりが特に伸びる。9レースのカーネーションCも、勝ったダイワストリームこそ大外を伸びて快勝したが、それ以外に掲示板を確保した4頭はすべて前残り。直線だけの勝負を挑むのは難しそうだ。そんな馬場状態のせいか、9レースは3連単54万円、10レースは76万円と波乱が続く。メインレースで人気を背負う立場としては、あまり良い兆候とは言えない。

11r  

不安は的中してしまった。メインのメイSはタムロスカイがまんまの逃げ切り。なんとしんがり人気である。ラチ沿いのかぶりつきで声援を送っていた私は、単勝1万9千円、3連単129万という波乱の結果に、気を失ってそのまま芝生に崩れ落ちた。いくら前残りの馬場とはいえ、大逃げを許すとは情けない。薄れゆく意識の中で、タムロスカイの騎手が田中勝春騎手であることを思い出した。ヤロウ、私の服装を冷やかしておきながら、なんてことをしてくれたんだ。ただじゃ……、おかないぞ……、その先は記憶がない。

意識を回復してたのち、これは厄払いせねばと訪れた馬頭観音で、手を合わせつつ思ったのである。すべての非は、勝ったあとの心配ごときにうつつを抜かした私にあるのであろう。あのまま私が着替えずに競馬場にやってきたところで、結果に違いが出たはずもないのだが、私にはそう思えてならない。問題は服装そのものではなく、私の意識の中にあった。「勝って、驚く」の境地は、まだまだ遠い。

 

 

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