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2013年5月31日 (金)

懊悩の6月へ

今年の日本ダービーには、ひとつ象徴的な出来事があった。「黄・黒縦縞・袖青一本輪」の不在。すなわち、社台レースホース(以下「社台RH」)所有馬の出走がなかったのである。2002年から11年連続で出走馬を送り込んできた記録は、ついに途切れてしまった。

社台RHの現3歳世代の重賞勝ちはゼロ。3勝馬も皆無とあれば、ダービー出走など叶うはずもない。それでも51勝でリーディング首位を突っ走っているから不思議。クラブ全体として調子が良いのか悪いのか計りかねるが、古馬を含めてもJRA重賞勝ちがグレープブランデー1頭という現状は、不本意であろう。

姉妹クラブのサンデーレーシング(以下「サンデーR」)も、状況は似ている。ダービーに唯一頭出走を果たしたコディーノは、見せ場もなく9着に敗退。考えてみれば、昨年末は「ダービー確実」とも言われた馬である。会員さんにしてみれば、もどかしい半年間だったに違いない。サンデーRはこの世代で重賞3勝だから、社台RHよりはマシか。だが、ひとつ上の現4歳世代は、昨年のこの時点でGⅠ4勝を含む重賞8勝だったことを思えば、やはり物足りなさを感じてしまう。

2004年以降、社台RHとサンデーRは、リーディングオーナー首位と2位を独占してきた。GⅠレースは“社台の運動会”と揶揄され、真顔で「独占禁止法違反」を訴えるものまでいたほど。なのに、その勢いが今年ははっきり薄れている。昨年、118勝でリーディング首位のサンデーRは、5月終了時点でその3分の1にも満たない36勝。やはり2004年から続けてきた年間百勝越えに黄信号が灯った。

社台RHとサンデーRの3歳世代が不振に終わった一方で、サラブレッドクラブ・ラフィアンとシルクは、この世代からGⅠ馬を送り出している。さらにシルクはダービー2頭出しの快挙。ロードホースクラブに至っては、サンデーR不在のオークスに3頭出しするなど、各クラブが存在感を示したクラシックだった。

Load  

折しも、各クラブは1歳馬募集の時期。社台グループでも、本日から公式サイトで募集カタログが公開された。周辺の社台会員からは「今年の募集価格は安い」という声が聞こえる一方、「ラインナップからすれば今年はシルクだろ」と言い切る社台会員も。なんでも、今年のシルクの募集馬には、ウインドインハーヘアのメス(父キングカメハメハ)やアコースティクスの牡(父ネオユニヴァース)、さらにメジロドーベルのメス(父ゼンノロブロイ)までいるという。あるいはそれが、社台やサンデーの募集価格に影響しているのかもしれない。

Silk  

今年の3歳世代の成績が、一過性のものなのか、あるいは何か大きな地殻変動が既に起きているのか。出資会員が一年でもっとも頭を悩ます6月が、いよいよ始まる。

 

 

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2013年5月30日 (木)

「おおもり」に気をつけろ

先日もちらっと書いたが、ここ数日は大森に通う日々が続いていた。

「そんな機会になぜ大井が開催していないんだ!」という不満が湧くのは当然だが、仕事の選り好みができるような立場ではない。そのストレスは当然のごとく昼食にぶつけられることとなる。

Ogawa1  

イトーヨーカドー大森店の向いのビル3Fに店を構える焼肉『OGAWA』は、小川畜産食品の経営にかかる一軒。某馬主氏によく連れて来て頂くのだが、昼に訪れるのは初めてだ。

Ogawa2  

注文はカルビ定食。その肉質、価格とも、さすがは精肉業者直営店と唸るほかない。他店なら上~特上レベルの肉に、ライス、味噌汁、サラダ、キムチがセットになって980円。その安さに、ついつい肉を追加オーダーしてしまった。満腹感を忘れるほど美味いものというのは、時に困りものである。

なので、その翌日の昼飯はさっぱりとざるそば程度で済ませようと蕎麦屋を探して歩いていたら、なんと行列ができている蕎麦屋を見つけた。ラーメン屋ならまだしも、蕎麦屋に行列は珍しい。これはさぞかし美味いのであろう。

Yuzuki2  

そそくさと列の最後尾に並び、席に着くや「ざる、大盛!」と注文。メニューを見れば「大ざる800円」とある。まあ、驚くような値段ではない。

ところが、目の前に運ばれてきたそのざるそばの威容に、私は思わず言葉を失った。

Yuzuki1  

……デカい。

“ざる”ではなく巨大な皿に盛られた蕎麦の山は、普通のざるそばならゆうに4人前、いや5人前はあろうか。普段ならうどん3玉を軽く胃袋に流し込む私も、さすがにこの分量は怯む。しかも意表を突かれたせいもあり、箸が止まりかけた。食っても食っても山が減らないのである。これは無理か……。とはいえ、一度注文したものを残すわけにはいかない。それは、スタート直後にポジションを下げておきながら、直線で脚を余して負ける愚行に等しい。それだけは許されん。

胃袋は脂汗を流していたかもしれないが、涼しい顔をなんとかキープしつつ、どうにか完食。それでも蕎麦湯を飲もうという気は起きなかった。

さすがは大森。その地名はダテではない。来週からの大井開催に合わせて大森で食事をされる貴兄は、注意が必要だ。

 

 

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2013年5月29日 (水)

実はスプリンター?

どんよりした梅雨空に覆われた浦和競馬場では、間もなくJpnⅡさきたま杯の発走を迎える。

Stand  

交流重賞だからと言って観客が集まる時代でもない。ましてや、あの狂乱の日本ダービーが終わったばかりである。客が少ないのは仕方ない。レースの合間には余計なアナウンスもなく、やかましいBGMも流れていないから、場内はすこぶる静か。聞こえてくるのはヒバリの鳴き声と、遠くの工事現場の機械音のみ。一足早い夏競馬の風情漂う本馬場に、出走馬たちが姿を現した。

人気はセイクリムズン。昨年の優勝馬にして、交流重賞5勝の実績。別定57キロで、最も得意とする小回り1400mならば、負けるわけにはいかない。単勝オッズは1.7倍。

Seiku  

そのセイクリムズンに前走かしわ記念で先着したテスタマッタが2番人気。JpnⅠタイトル2勝の格上だが、逆に小回りの1400mが足枷になりそうということで単勝オッズは3倍ちょうどに留まっている。

Tesuta1  

レースは好枠からがサイモンロードがハナを主張。セイクリムズンは中団の外目。テスタマッタは、しんがり追走という隊列で馬群は1コーナーへ。

Start  

早くも向こう正面でレースが動いた。最後方からテスタマッタが一気に進出。そのままマクり上がって2番手で直線に向くと、前を行くナイキマドリードを交わし、さらにセイクリムズンの追撃を半馬身凌いで、1着ゴールを果たした。

Tesuta2  

テスタマッタは、これで重賞4勝目。その内訳は、3歳時のJDD(2000m)、5歳時のマーチS(1800m)、6歳時のフェブラリーS(1600m)、そして7歳で勝ったさきたま杯(1400m)である。年齢と共に適応距離が長くなることはよくあるが、逆のパターンは珍しい。このまま現役を続ければ、来年あたりJBCスプリントを狙えるのではないか。もともと、父のTapitはスタミナよりはスピードを全面に押し出す種牡馬。テスタマッタ自身、JDDの前2戦は1400m、1200m戦を直線一気の競馬で連勝していた経歴を持つ。ダービー馬がチャンピオンスプリンターになったりしたら、それはそれで面白い。

ちなみに戸崎騎手は、これがJRA移籍後にJRA所属馬での初重賞ということになる。が、そんなことより、JRA重賞を早く勝ってしまいたい。安田記念は一昨年に9番人気の馬で制したゲンの良いレース。ダークシャドウでの一発に期待したい。

 

 

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2013年5月28日 (火)

狂騒と静寂のダービー

おとといの日本ダービーでの出来事。地鳴りのような大歓声に誘導馬が驚いて、地下馬道に戻ろうとする隊列が突如乱れるシーンがあった。ターフビジョンの映像がダービー出走馬の一覧に切り替わり、発走が近いと喜んだファンたちが一斉に歓喜の雄叫びを上げたのである。

Stand  

一昨日のダービーの熱狂ぶりは凄まじかった。いや「熱狂」なんて生易しいものではない。「狂騒」あるいは「狂乱」と感じた方もいらっしゃるのではないか。あとから入場者数が14万人弱だったと聞き、「たったそれだけ?」と私が感じたのは、その熱狂度合いが15万、16万のそれに匹敵していたからに違いない。

コディーノやヒラボクディープなどは、馬場入場時の大歓声に驚いて早くもテンションMAX。この時点で彼らのダービーは既に終わっていた。大歓声を直接浴びることになる大外枠を引いたミヤジタイガも、気の毒と言うほかはない。鞍上の松山騎手はダービー初騎乗。あの歓声に曝されて、それでも平常心を保てと言うのは酷であろう。しんがり負けは決して彼らの実力ではない。

Gate  

現役当時の岡部幸雄氏は、発走前に大声を出すのをやめて欲しいと、ことあるごとに訴え続けてきたが、なかなか浸透しなかった。2番人気のシャイニンルビーで挑んだ2002年の秋華賞では、スタンドの歓声に舞い上がった馬がゲートに入ろうとせず、消耗の挙句に外枠発走の憂き目に。結果しんがり負けを喫した。「JRAはあのバカ騒ぎをやめさせろ」と珍しく強い口調で毒づいたのは、そのレースの直後のことである。

JRAも一時はターフビジョンなどでファンに注意を促していたが、最近ではあまり見かけなくなった。むしろ、発走直前に前年のレース映像を流したり、国歌斉唱を織り込んでみたりするなど、ファンの熱狂を煽る方向に傾注しているようにも思える。

実際、あれだけの人数を一か所に集めておきながら、「騒ぐな」と言うのは無理がある。すし詰めのスタンドで何時間も待たされ、ようやく目当ての一戦が始まると思えば、気持ちが昂るのは当然。ダービーを第1レースに組めば、もっとおとなしくなるだろうが、売上を捨ててまでJRAがそんなことをするとは思えない。

「スタンドから遠く離れた場所から本馬場入場すれば良い」とか、「発走前に流すファンファーレをやめてしまえ」など、いろいろな意見も聞こえてくるが、私個人は、「狂騒」を、「12ハロンの距離」とか「直線の長い坂」などのような日本ダービーで人馬がクリアすべき要素のひとつと割り切るようにしている。それらをすべて克服して、1着ゴールを果たしたのがキズナだった。

Kizuna  

ドバイワールドカップでは発走直前にドカンドカンと花火が打ち上がる。歓声や騒音にいちいち反応しているようなヤワな精神の持ち主では、日本ダービーもワールドカップも勝てない。ブエナビスタは歓声にも花火にもまったく動じなかった。

ダービー80回の歴史の中には、馬券発売がなく、一般客の入場も認められず、わずか200人の関係者だけが見守る中、ひっそりと行われたダービーもある。戦時下の1944年、「東京能力検定競走」として行われた第13回ダービー。勝ち馬は「カイソウ」と記録が残る。そのダービーに持ち馬トキノチカヒを出走させていた文豪・菊池寛は、この年のダービーを生観戦した数少ない一人だ。愛馬が9着に敗れるのを見届けるや、「歓声がないと馬も走らん」と言い残して競馬場を後にしたという。静まり返ったダービーというのは、想像するにしてもちょっと怖いものがある。

 

 

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2013年5月27日 (月)

名前のちから

「ウチは白帽に縁がある。大丈夫」

Yutaka  

私の隣に立つ人物が自らに言い聞かせるように呟いた。その視線の先には1枠白帽を被った武豊騎手の姿。どうやらノースヒルズの関係者のようだ。

なるほど、ノースヒルズの勝負服がGⅠを勝ったシーンを思い出すと、たしかに白帽であることが多いように思う。

ノーリーズンの皐月賞に、

Noreason 

ヘヴンリーロマンスの天皇賞・秋。

Heavenly_2 

さらにはアーネストリーの宝塚記念、ビリーヴの高松宮記念、ビートブラックの天皇賞・春、そしてキズナのお姉さんファレノプシスがエリザベス女王杯を勝った時も1枠白帽だった。

キズナを管理する佐々木晶三調教師も、1番枠を引いたと聞いて表情が緩んだという。佐々木師は過去にGⅠレースを4勝しているが、うち3勝が1枠白帽でのもの。ゲンが良いと喜んだのも、無理はない。

逆に言えば、大の大人が縁にすがり、ゲン担ぎに一喜一憂するほど、ダービーは怖ろしいということであろう。完璧の仕上げで、完璧なレースをしても、それだけではダービーは勝てない。なぜか。ほかの17頭も同じように死力を尽くすからである。だから「運」の出番となる。勝敗が運に左右されるのだとしたら、ほんのわずかでも運を味方につけたい。

Kizuna_2 

キズナは、その心に響く馬名が与えられた瞬間から、そんな「運」を身につけていたのではないか。命名の経緯についてはあちこちに書き尽くされているので割愛するが、ダービー馬となるに相応しい、なにか特別な力を感じる馬名である。皐月賞馬を抑えて1番人気に推されたのも、この不思議な馬名と決して無関係ではあるまい。

ビリーヴ、スティルインラブ、サーガノヴェル、ラヴェリータ……等々。前田オーナーのその美しいネーミングセンスには定評がある。かつてはオーナーの名前から「マエコウ」の冠名を使っていた時期もあったが、牧場名を「マエコウファーム」から「ノースヒルズマネジメント」に変更したの機に冠名の使用をやめた。以来、馬たちは大活躍に転じ、ついにダービーの高みに到達したのである。

「命名」は馬主が直接馬に関われる唯一の仕事だという。そういう意味においても、前田オーナーの仕事ぶりは傑出していた。

 

 

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2013年5月26日 (日)

13万9806人との絆

ダービーの発走直前にふと日吉が丘の方に目を向けたら、芝生エリアの端の端までびっしりと観客で埋まっているので、ちょっと驚いた。

East 

振り向いて西門の方を見れば、やはり通路の奥までびっしりと人で埋め尽くされている。

West 

むろん眼下のゴール前には立錐の余地がない。今年のダービーは、ここ数年を遥かに凌ぐ大勢のお客さんが入っているようだ。

Center 

発表によれば、入場者数は13万9806人。もっと入っているような気がしたのは、13万超えそのものが久しぶりだからだろうか。ちなみに昨年のダービー当日の入場者数は11万5407人。今日の数字は、ここ10年間では2005年の14万143人に匹敵する。その年のダービーを勝ったのは、キズナのお父さんディープインパクトであった。

馬主席でお会いしたとあるオーナーは、これが初めてのダービー観戦だとおっしゃっていた。指定席に入った知人も今日が初めてのダービーだという。お二方とも、競馬のキャリアは30年を超すベテラン。それでもダービーの生観戦は初めてというあたりも、ダービーが特別なものであることの証だ。この二人のほかにも、初めてのダービーを過ごされた方々がスタンドのあちこちにいらしたに違いない。

Derby 

そういう意味では、今日のダービーは“良いダービー”だった。これほど豪快かつ美しいレースは、普段のレースでもなかなか見ることはできないし、ダービー5勝ジョッキー誕生の瞬間などこの先あるかどうかわからない。

多くの専門紙やスポーツ紙がロゴタイプに本命を打つ中、それでもキズナが1番人気に推されていることに、私個人は少なからず戸惑いを覚えていた。しかし、今日のレース結果がすべてを物語っている。ファンの慧眼は素晴らしい。レース後、武豊騎手は関係者や馬との絆を強調したが、今日私が感じた絆はファンと武豊騎手のそれであった。

Kizuna  

久しぶりのユタカ・コールに、時間をかけてゆっくりと応えた武豊騎手。多くのファンは長い間この瞬間を待っていたのであろう。“それが今日ここで起こる”と確信して押し寄せた人の波が、ディープ以来の14万人なのである。そしてそれは本当に“起きた”。繰り返す。競馬ファンの慧眼は素晴らしい。

 

 

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2013年5月25日 (土)

節目のダービー

今年、日本ダービーは80回の節目を迎える。それを記念して、明日の東京競馬場では様々なイベントも予定されているようだ。

 第10回 セントライト(3冠馬)
 第20回 ボストニアン(2冠馬)
 第30回 メイズイ(2冠馬)
 第40回 タケホープ(2冠馬)
 第50回 ミスターシービー(3冠馬)
 第60回 ウイニングチケット
 第70回 ネオユニヴァース(2冠馬)

過去7回の節目のダービー馬のうち、実に6頭がクラシックのタイトルを複数獲得していることは特筆に値しよう。あるいはロゴタイプにしてみれば、心強いデータかもしれない。

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唯一の例外は第60回のウイニングチケット。だが、そうかといってこの年のダービーが凡戦だったかと言うと、決してそんなことはない。

いや、むしろ逆であろう。柴田政人騎手が悲願のダービー制覇を成し遂げたことで、人ばかりがクローズアップされた感のあるダービーだが、馬の方も近年まれにみるハイレベルなメンバーだった。ダービー出走18頭のうち重賞ウイナーは15頭(※ダービー後の成績を含む)。そのタイトルの合計は、GⅠ6勝を含む全31勝である。ダービー出走を果たしながら、条件馬のまま現役を終える競走馬が珍しくない中、この数字は凄い。

3歳クラシックでは「3強」の構図が形成されることも多いが、3強が皐月賞、ダービー、菊花賞のそれぞれで上位争いを繰り広げ、しかもそれぞれが1冠ずつを分け合う結果になることは滅多にない。そういう意味では、この年は「ウイニングチケット、ナリタタイシン、ビワハヤヒデの3強が3冠を制した」とも思える。

60  

そのウイニングチケットが、明日の東京競馬場にやってくるらしい。これも80回目の記念イベントの一環だという。個人的には、是非とも柴田政人調教師とのツーショットを拝見したいところだ。

 

 

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2013年5月24日 (金)

「競走馬」を目指して

日本ダービーや馬券裁判の話題を避けるように今日も2歳馬の話。

朝から快晴の川崎競馬場では、20頭の2歳馬が能力試験に、さらに1頭が調教試験にそれぞれ臨んだ。

Noken 

おっと! こんなところに経費が落ちている。

Keihi 

さて、試験1レースの1位入線はウィンカイザー。800mの走破タイムは51秒9。父リンカーン、母リンデンループの牡馬。祖母にエリザベス女王杯を勝ったリンデンリリーがいる。ちなみに「ウインカイザー」ではなく「ウィンカイザー」です。注意されたい。

1r 

2レースはシナノリュウセイが1位入線。タイム53秒3。父タイムパラドックス、母キョウエイシェーンの牝馬。

2r 

3レースはブルーセレブが1位入線。タイム51秒2。父アサクサデンエン、母カリビアンセレブの牝馬。近親にはフラワーパークの名も見える。

3r 

ちなみに、このレースで52秒9で合格したシナノショーテンは、今年の菊水賞、のじぎく賞と連勝し、牝馬ながら兵庫ダービー最有力とされるユメノアトサキの妹。ド派手な顔立ちにも注目だ。

Shinano 

4レースの1位入線はただ1頭だけ調教試験だったブルーフジ。タイム51秒9。父マイネルラヴ、母クインクインクインの牡馬。

4r 

ところで「能験」を「能検」と書く主催者もあることをご存じだろうか。前者は「能力試験」の略。後者は「能力検査」の略である。

そもそも、2歳馬の仕上がり具合を調べて、レースに出走し得る能力が備わっていることを確認するその手段を「試験」と呼ぶか、それとも「検査」と呼ぶかの違い。どちらも、ある一定の水準に達しているかどうかを調べる行為を指す。だが、後者には、水準に達していないものがあると予見される場合、その排除を目的としたニュアンスで使われることが多いのだそうだ。

南関東が4場揃って「能験」であるのに対し、道営や岩手や佐賀では「能検」が使われていることに多少気掛かりな部分もあるが、深く考えることはやめておこう。晴れて「競走馬」となった2歳馬たちを、心から祝福したい。  

 

 

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2013年5月23日 (木)

川崎マイラーズ

25戦ものキャリアを積んだ6歳馬が、初めて挑む重賞レースで1番人気に推され、それに応えて勝ってしまうなんてことが、果たして過去にあっただろうか。アブクマポーロが重賞初挑戦の大井記念を1番人気で勝ったのは通算15戦目。ベルモントアクターの船橋記念も通算16戦目のことだった。

Smart  

しかも、負かした相手はクラーベセクレタにピエールタイガー、カキツバタロイヤルといった南関東一線級である。55キロの斤量に恵まれたとはいえ、圧勝と言っても良い2馬身半。そう考えれば、昨日行われた川崎マイラーズでのスマートジョーカーのレースぶりは、見事というほかはあるまい。

一足先に重賞ウイナーとなっている全妹コテキタイにも、これで面目が立とう。26戦目にして持ち時計を大幅に更新する勝利に、展望は広がった。次走京成盃グランドマイラーズでは、9連勝の期待もかかる。

Kurabe  

一方、前走しらさぎ賞の大敗でレースぶりが注目されたクラーベセクレタは、3番人気で3着。南関東ファンの眼は鋭い。しかし、この3着をどう評価すれば良いのか。前走よりも見どころがあったのは間違いない。スタート直後に挟まれる不利がありながらの3着は、むしろ底力の為せる業と評価する声も聞こえた。

だが、本来負けるはずもない相手に続けて負けた事実は重い。この中間は覇気を取り戻すべくブリンカーを装着して調教されていたとも聞く。一度失われた闘争心を取り戻すのは、簡単ではないようだ。つくづく牝馬は難しい。こちらの次走はスパーキングレディカップとのこと。この日と同じ川崎1600mの舞台で、南関東最強牝馬の意地を見ることができるだろうか。

 

 

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2013年5月22日 (水)

ダービーどころでは

朝5時に自宅を出て、アクアラインを渡って千葉へ向かった。

目的はサーフィンでなければ釣りでもない。市原の育成牧場での馬見。北海道から到着したばかりの2歳馬の様子をこの目で確認したら、直ちにとって返す。大森に到着したのは9時前であった。

Baboh  

そのまま某施設にカンヅメとなり、晴れて解放されるや、大森駅前から無料バスに飛び乗って大井競馬場へ。開催してない競馬場にわざわざ出向く理由は、場外発売の馬券を買うためでは当然なく、やはり2歳馬を見るため。

用件が済んだら、立会川から京急で川崎競馬場へ。川崎マイラーズの発走にギリギリ間に合った。気がつけば、朝から昼飯を一回食べただけ。普段なら、昼飯を食いながら「さて夕飯は何を食おうか?」などと考えるほどの私が、メシも忘れるほどの多忙を極めている原因は、2歳馬たちにある。

この時期、競馬関係者は揃いも揃ってダービーに心ときめかせているわけではない。ダービーに参加するのは、一部の厩舎と、ごく一部の生産者と、ごくごく一部の馬主のみ。そりゃそうですよね。なんてったって18頭しか出られないんだから。

大半の関係者にとって、今は馬の入れ替えの時期である。来週からはJRAや南関東でも2歳戦がスタート。明後日の川崎能験にも21頭の2歳馬が登場する。

かく言う私も、共同所有する2歳牡馬が道営の能検に合格した。これでこの仔も晴れて競走馬。最初は「不合格だったらどうしよう…」と心配ばかりしていたのに、持ったまま1着ゴールとの知らせを聞いたとたん「函館2歳Sに出ることになったらどうしよう…」と心配するんだから現金なもの。でも7月21日は、もう別の予定が入っちゃってんだよなぁ。

   なんて具合に、すでに頭の中は2歳馬のことでいっぱい。ダービーどころじゃないんですよ……というのは、まあ、負け惜しみですけどcoldsweats01

Joker  

川崎マイラーズはスマートジョーカーが重賞初制覇。このレースについては、また明日にでも。

 

  

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2013年5月21日 (火)

1番人気を背負うのは

日本ダービーを5日後に控えた現時点では、なんとキズナが1番人気に推されそうな雰囲気である。圧倒的スケールで重賞連勝中なのだから、人気を集めるのは当然。しかし、2つのGⅠを含め昨秋から4連勝中のロゴタイプを差し置いて、1番人気になることがあれば、その時点でひとつのニュースであろう。

Nb  

朝日杯が東西統一の2歳チャンピオン決定戦になって以降、朝日杯と皐月賞を勝った馬はミホノブルボンとナリタブライアンの2頭しかいない。その両馬ともダービーでは1番人気を背負って、ぶっちぎりの勝利を収めている。19年ぶりに朝日杯と皐月賞を制したロゴタイプの人気は、はたしてどうなるだろうか。

勝ち負けよりも人気が気になるのにはわけがある。明後日にはダービーの枠順が発表となるが、なぜか1番人気馬が8番枠に入った年のダービーは荒れるのである。

ことの始まりは第16回日本ダービーに遡る。歴史に残る単勝配当55430円というタチカゼの大穴馬券を許したこの年の1番人気馬は、8番枠に入ったトサミドリ。他馬に競られて暴走の挙句、7着と敗れた。

以来、ダイナナホウシユウ、トウショウボーイ、ウアルドマイン、カネツセーキ、アズマハンターといった1番人気馬が、8番のゼッケンを付けてダービーを走り、そして敗れ去ってきた。唯一の例外はミハルオー。だが、1番人気を背負って8番枠に収まったのもつかの間、ゲート内で暴れて外枠発走となってしまったのだから、厳密には「8番枠からの発走」ではない。そのおかげか、結果は優勝。馬自身が“8番枠のジンクス”を知っていたのかもしれない。

ちなみに、8番枠そのものが忌まわしいわけではない。現にメリーナイスなどは、8番のゼッケンを背負い、6馬身差の独走でダービーを制した。だが、このとき同馬は4番人気。不思議なことに、8番枠のジンクスは1番人気馬だけを狙い撃ちする。

そして昨年、アズマハンター以来30年ぶりに1番人気を背負ってダービーの8番枠に入ったワールドエースも、あろうことか4着と敗れた。30年を経て、なおジンクスは生きていたのである。

Wa  

さて、80回目を迎える今年のダービー。1番人気はキズナか、あるいはロゴタイプか。いずれにせよ、できることなら両馬には8番枠を引いて欲しくない。そこは本命馬を飲み込んで逃さないブラックホールだ。

 

 

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2013年5月20日 (月)

朝の脳

「ゆうべ2時までじっくり考えたから、今日はバッチリだ!」

Oaks  

昨日の東京競馬場でのこと。背後の席からそんな言葉が聞こえてきた。毎週のようにGⅠレースが続くこの時期、夜遅くまで競馬専門紙を睨みながら、脳をフル回転させて馬券検討をする向きも多かろう。中には「朝まで寝ずに考えた」という人だっているかもしれない。

とはいえ、脳科学的にはこれは正しいやり方とは言えないようだ。脳科学者・茂木健一郎氏によれば、ひらめきを得るためには、脳がある程度『退屈』しないとダメらしい。目新しい情報が次から次へと示されると、脳はそれを処理するだけで手いっぱいになってしまうという。「検討」といいながら、結局は専門紙に書いてあることの「追認」になりがちというわけだ。

その昔、北宋随一の名文家と謳われた欧陽脩は、文章を練るのにすぐれた考えがよく浮かぶ三つの場所として、馬上、枕上、厠上の「三上(さんじょう)」を挙げた。このうち「枕上」というのは、一般に、寝る前の時間だと思われているようだが、実は、朝、目が覚めてから起き上がるまでの時間だと聞いたことがある。歴史的な数学や物理学の大発見は、朝に着想を得たというケースが多い。

だいたいが、寝る前にあまり深い考え事をするのは、寝つきを妨げるだけだ。それでいざ眠ろうと意識すると、あとからあとから様々なことが次々と頭に浮かんで、なおさら眠れなくなる。このとき頭に浮かんだ事柄を「枕上の発想」だと勘違いし、喜んで枕元の紙にメモを取る人もいるようだが、こういう精神状態に妙案が現れるとは考えにくい。

さらに「馬上」についても、「現代で言えば通勤電車の中」というような解釈をされることが多いようだが、少なくとも私はラッシュの電車に揺られているさなかに名案を得たという経験を持たない。これはそのまま「馬上」で良いのではないだろうか。つまり欧陽脩さんは、ひらめきというのは脳がリラックスできる環境で生まれるものだと言いたいのであろう。乗馬の経験がある方なら、馬の背に揺られるときに得られる気分を思い出していただけばわかる。明け方の布団の中やトイレが、精神的に落ち着ける場所であることは言うまでもない。

現代の日本で馬に乗りながら馬券の予想をするのは難しそうだが、残るふたつは実践できそうだ。すなわち、競馬専門紙は寝る前に読むのではなく、枕元に置いて眠りにつき、目が覚めたら手を伸ばす。あるいはトイレの目につく位置に、メインレースの馬柱を貼ってみる。

どこの国だか忘れたが、「夜書いた手紙は、一晩そのままにしておいて、翌日読み返してから投函せよ」という教訓があると聞いた。朝になって読み返してみると、おかしなところに気づくことが少なくないというのである。たとえ同じ人間であっても、朝と夜とでは脳の状況が違う。どうせなら朝の脳を有効的に使いたい。

 

 

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2013年5月19日 (日)

16年目の涙

第74回オークスは、内ラチ沿いの中団でレースを進めた武幸四郎騎手のメイショウマンボが、直線では馬場の中央を堂々と突き抜けて優勝を果たした。

Oaks1  

武幸四郎騎手のGⅠ勝ちは7年ぶりだという。引き上げてきたその瞳にはうっすら涙も浮かんでいた。むろん勝った喜びもあろうが、そこは16年目のベテランのこと。決してそれだけではあるまい。

若手の台頭に地方のトップジョッキーの移籍、そして短期免許で来日する外国人ジョッキーたち。ここ数年、騎乗数が激減した幸四郎騎手に、救いの手を差し伸べてくれたのが松本好雄オーナーだったことは良く知られている。オークスへのクラシック登録がなかったのに、「オークスに行きたい」という武幸四郎騎手の申し出を受けて、200万の追加登録料を払ってのオークス出走。涙の理由は、ひとえにオーナーへの感謝の気持ちからであろう。

幸四郎騎手の兄、武豊騎手も、いろいろあって有力馬への騎乗が激減しているが、最近では松本オーナーの勝負服を着ている印象が強い。JRAオフィシャルの顏写真でも松本オーナーの服を着ているし、昨日の京都10レースを勝ったメイショウキラリも、背中は武豊騎手であった。

今日のオークス、ペースを作ったのはその武豊騎手である。1200m通過が1分11秒4という厳しい流れは、デニムアンドルビーやレッドオーヴァルといった人気馬を戸惑わせた一方で、スタミナに勝るメイショウマンボにとっては願ったりかなったりであった。常日頃、松本オーナーへの恩義を感じている武豊騎手が、自身の勝ちを捨てて弟の勝利をアシストした   なんてストーリーは考え過ぎだろうが、もしそこまで考えて馬券を取った人がいたら、それは素晴らしい。

Oaks2 

それにしても、幸四郎騎手がデビューしてから丸15年が経過していることに今さら気づいて、思わずため息が出た。初騎乗でいきなりGⅡ勝ちという離れ業を演じたのは、1997年3月のこと。その夏に小倉の新馬を勝ったメイショウアヤメは、メイショウマンボの“祖母”ではないか。それを思えば、月日の流れの速さを感じているのは、私よりも武幸四郎騎手本人かもしれない。

 

 

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2013年5月18日 (土)

勝って、驚きたい

「いや、待てよ……」

自宅を出て、駅に向かってしばらく歩いてから、ふと思いたってその歩みを止めた。

今日は、知人の馬がメインレースで人気を背負って出走する。ということは、メインの口取り撮影に写り込むことになるかもしれない。錚々たる馬主の方々たちを差し置いて、社台ファームのみなさんと同じフレームに収まる可能性があると思えば、それ相応のナリが必要なのではあるまいか。

立ち止まって我が身を顧みるに、いつものシャツにいつものネクタイ、それといつもの靴。馬主エリアのドレスコードを満足こそすれ、正直これでは大井に行くのと変わらない。こんなナリでは馬を持つ知人に対してはもちろん、一緒に写真に写る日本競馬の重鎮たちにも失礼であろう。東京競馬場のメインレースであることを思えば、場内のファンに対してさえ礼を失するように思えてしまう。

私は直ちに踵を返した。しかるのちに、ダービーで着ようと思って買ったままの状態になっている新品のシャツをおろし、クローゼットの奥から普段は滅多に着ないダブルのスーツを引っ張り出し、パントレセレーブルの凱旋門賞で着用したネクタイを合わせ、アスコットで購入した靴を履いた。私の貧相なワードロープの中で、これ以上のコーディネイトはない。あらためて自宅を出た途端、近所のおばさんから「あら、結婚式?」と声をかけられ、競馬場に着くや田中勝春騎手から「ダービーは来週だよ」とからかわれた。

9r  

それにしても東京の芝は前が止まらない。内ラチから2頭分を空けたあたりが特に伸びる。9レースのカーネーションCも、勝ったダイワストリームこそ大外を伸びて快勝したが、それ以外に掲示板を確保した4頭はすべて前残り。直線だけの勝負を挑むのは難しそうだ。そんな馬場状態のせいか、9レースは3連単54万円、10レースは76万円と波乱が続く。メインレースで人気を背負う立場としては、あまり良い兆候とは言えない。

11r  

不安は的中してしまった。メインのメイSはタムロスカイがまんまの逃げ切り。なんとしんがり人気である。ラチ沿いのかぶりつきで声援を送っていた私は、単勝1万9千円、3連単129万という波乱の結果に、気を失ってそのまま芝生に崩れ落ちた。いくら前残りの馬場とはいえ、大逃げを許すとは情けない。薄れゆく意識の中で、タムロスカイの騎手が田中勝春騎手であることを思い出した。ヤロウ、私の服装を冷やかしておきながら、なんてことをしてくれたんだ。ただじゃ……、おかないぞ……、その先は記憶がない。

意識を回復してたのち、これは厄払いせねばと訪れた馬頭観音で、手を合わせつつ思ったのである。すべての非は、勝ったあとの心配ごときにうつつを抜かした私にあるのであろう。あのまま私が着替えずに競馬場にやってきたところで、結果に違いが出たはずもないのだが、私にはそう思えてならない。問題は服装そのものではなく、私の意識の中にあった。「勝って、驚く」の境地は、まだまだ遠い。

 

 

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2013年5月17日 (金)

トライアル連勝

今年の南関東クラシックでは、クラウンカップと東京湾カップがいずれも「ダービートライアル」として施行された。

Ame1  

このようなケースは過去に4度あるが、その両方を同じ馬が勝ったのは初めてのこと。おかげで獲得賞金順によるダービーの出走枠が6頭から7頭に増えた。東京湾Cで2番人気に推されながら惜しくも3着に敗れたイヴアルブは、現時点で賞金順9番目。陣営にしてみれば、賞金上位馬の動向はもちろん、下位馬の逆転にも気を配らなければならない。週明けの川崎には賞金順11番目のセイントスターも出走を予定している。

クラウンCと東京湾Cがいずれもダービートライアルとして施行された過去4度の勝ち馬とダービーの勝ち馬は以下の通りだ。

 2004年 ブルーローレンス アジュディミツオー アジュディミツオー
 2007年 エスプリベン ウエスタンローレル アンパサンド
 2008年 モエレラッキー ギャンブルオンミー ドリームスカイ
 2009年 サイレントスタメン ブルーラッド サイレントスタメン
 (※年度、クラウンC、東京湾C、東京ダービー、の順)

勝ち馬ではないが、2007年の東京ダービー3着馬のロイヤルボスは、クラウンCで2着していた実績を持つ。また2008年に至っては、クラウンC10着、東京湾C4着という臨戦過程のドリームスカイが10番人気でダービーを勝つ大波乱。2着に食い込んだのも、クラウンカップ1着、東京湾C3着の9番人気モエレラッキーで、大井競馬の重賞史上最高となる3連単325万920円の高配当を記録している。

Dream  

ともあれ、クラウンCと東京湾Cが揃ってダービートライアルとして行われた過去4回のダービーでは、そのどちらかに出走していた馬が、本番で馬券に絡んでいるのだ。しかも、波乱を演出しているという事実は見逃せない。

そうなると、史上初めてクラウンCと東京湾Cの両方を勝ったアメイジアは、当然ダービーで好走してもおかしくはない。また、クラウンCでは5馬身半もあったアメイジアとの差を、東京湾Cでハナまで縮めてみせたキタサンオーゴンにも穴党の触手は動くであろう。

Ame2  

今年は、京浜盃と羽田盃の上位馬が同じ顔ぶれということで、それ以外の路線が軽視されそうなムード。そういう意味では京浜盃勝ち馬ディラクエと、羽田盃勝ち馬ニックバニヤンが揃って沈んだ2008年にも似る。こういう時こそ、視野を大きく持ってレースに臨みたい。

 

 

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2013年5月16日 (木)

モチモチとシャキシャキの狭間で

日曜の東京6R。フルゲート18頭のゲートが開いた次の瞬間、場内から悲鳴にも似たどよめきが上がった。あろうことか単勝オッズ1.5倍の1番人気エールブリーズが、スタートで大きく出遅れたのである。ポツンと最後方を追走する人気馬の姿に、「あぁ、終わったぁ!」という呻き声も聞こえてきた。

Breeze 

ところが馬群が直線に向いて、やおら外に持ち出したエールブリーズの馬体がグッと沈んだように見えたかと思うと、そこから矢のような加速を見せて、前を行く全馬を差し切ってしまったのである。まさしく絵に描いたようなゴボウ抜き。「Breeze(そよ風)」と呼ぶには強烈過ぎる末脚に、場内には安堵のため息が響いた。

こんなレースを見た直後は、無性にゴボウが食べたくなるものである。

Mugi 

フジビュースタンド『夢吟坊』の「冷やしかき揚げうどん」は、かき揚げうどんには珍しく、かつ京うどんとしても珍しい「冷やし」のスタイル。キリッと冷えた京うどんはモチモチ感に優れ、薄くスライスされたゴボウのかき揚げは、冷たいツユに浸されることでシャキシャキ感がよりアップしている。モチモチとシャキシャキの奇跡の出会いが、いまこの一杯に実現した。なんとなくエールブリーズに感謝したくもなる。

「ゴボウ天うどん」がメジャーな存在であるのに対し、「ゴボウ天そば」をあまり見かけないのは、モチモチとシャキシャキのコントラストが織りなすその愉悦にあるのではあるまいか。だとすれば、うどんでも讃岐のようなコシの勝った麺ではなく、博多うどんのような柔らかい麺の方が具合がいい。博多うどんの店に「ゴボウ天うどん」が欠かせないのは、そのためであろう。

Dontaku1 

そんな折、東京駅八重洲口に博多うどんの立ち食い店がオープンしたというので、さっそく足を運んでみた。その名も『丼拓(どんたく)』。

Dontaku2 

カツオ、サバ、ウルメイワシから引いたダシに、福岡の食卓には欠かせないニビシ醤油で仕上げたというツユを衣に纏ったゴボウ天は実に滋味深く、博多うどん特有のモチモチ感とのコントラストもシャキッと冴え渡っている。戦時中、捕虜にゴボウを与えた日本兵が「雑草の根を食べさせる虐待」の罪で戦犯となったことを思えば、欧米人にこの美味さは理解できまい。まさに日本人の愉悦。たかが380円のゴボウ天うどん一杯で、たいそうなことにまで思いが及んだ。

 

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2013年5月15日 (水)

藤田輝信調教師が初重賞

大井8Rは御神本騎手のエタニティが最内からしぶとく伸びて勝利。ジャングルポケット産駒の牝4歳。お母さんのリードスキーはGⅢ・エーデルワイス賞を勝っている。

8r 

続く大井9Rは御神本騎手のヴィルマールが最内を鮮やかに突いて勝利。Charge Forward 産駒の牡7歳。お母さんの Soap Opera は、ニュージーランドのGⅡ・Japan-NZ International Trophy の勝ち馬。

9r 

さらに続く10R・大井記念は御神本騎手のフォーティファイドが4角先頭から直線は独走。後続を10馬身も千切る圧勝だった。フォーティナイナー産駒の牡8歳。お母さんのファストフレンドは、帝王賞と東京大賞典を勝ったGⅠ馬だ。

10r 

似たような展開が続いた御神本騎手の3連勝は、その勝ち馬の母馬が揃って重賞勝ち馬という珍しいものだった。しかもレースを経るにつれ、GⅢ→GⅡ→GⅠと格が上がっていったのも興味深い。

間もなく厩舎開業からまる3年を迎える藤田輝信調教師にとっては、この大井記念が嬉しい初重賞制覇となった。開業当初はなかなか勝てずに焦った時期もあったようだが、ポーカーアリスでの初勝利からコツコツと勝ち星を積み重ねて、ついに昨年は大井リーディング5位と躍進した。勝率.205は、あの川島正行調教師をも上回る。

今年も既に17勝で勝率.239。実に4回に1回近くのペースで勝っていることになる。凄い。

リーディングを狙おうかという調教師と、リーディング独走中の騎手とのタッグで、良血馬に初タイトルがもたらされた。しかも帝王賞での期待が膨らむ10馬身。今年の帝王賞に出走するJRA勢は、近年にない豪華メンバーになることが予想されているが、地元大井所属馬がJRA勢の一角に食い込むことができれば、さらにレースは白熱しそうだ。

 

 

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2013年5月14日 (火)

立ち食い

先日、課題だった東京競馬場『なとり』の「麦とろ定食」を食べる機会をようやく得た。立ち食いで麦とろを食べるというのは初体験だが、このトロロはなかなか美味い。高めの価格設定も、これならばと頷けるものがある。

Tan  

そも、競馬場で摂る食事には立ち食いが多い。東京開催で私が昼食を世話になる店といえば、『梅屋』『馬そば深大寺』『夢吟坊』そして『吉野家』といったところだが、どれも立ち食いの店ばかり。少人数がじっくり味わって食べるためではなく、大勢が忙しい合間にサッと食事を済ますための店舗形態なのだから、勢い立ち食いが主流となる。

だが、元来、日本人は欧米人と比べて立ち飲みや立ち食いは苦手とされてきた。欧米人はカフェやバーで平気で立っているし、パーティーともなれば立食形式が当たり前。日本の居酒屋と英国のパブは、それぞれのお国柄を端的に表している。

とはいえ、江戸前の寿司は屋台の立ち食いから始まったと指摘されるかもしれない。だが、これもあくまで新興スタイル。新しいもの好きの江戸の町民たちが、“立ち食い”という新鮮な店舗形態に惹かれて、江戸の寿司ブームが起きた。昨今の立ち飲みブームにも似通うところがある。

船橋駅の北口に『吉光・船橋北口店』という小さな寿司屋が暖簾を掲げている。店内はカウンターのみで椅子はない。立ち食いで7人入ったらいっぱいになる。客同士詰め合い、混雑時は半身の姿勢で食べるのが暗黙の了解だ。

江戸の昔を思わせる店内では、ネタケースを挟んで、50センチ程度の至近距離で職人と対峙する格好となる。カウンターの手元に手を洗う蛇口がずらりと並んでいるのは、手づかみで寿司を食う立ち食い店ならではの光景。シャバッと指先を拭って、次の1カンをつまむのが格好いい。

Sushi  

写真の「おまかせ1.5人前」は、マグロ、中トロ、スズキ、生シラス、イクラ、ウニなど総勢15カンの豪華握り。これで1800円。シャリが大き目の握りは、握り寿司が酒のつまみではなく単なる食事であった江戸前寿司の名残。注文してから3分で出てきて、5分で食べ終え、サッと会計を済ませる。江戸の粋を船橋に見た。

 

 

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2013年5月13日 (月)

特別登録

日本ダービーの最終登録が締め切られ、皐月賞馬ロゴタイプを筆頭に22頭が登録を行った。

Derby  

今年の日本ダービーの優勝賞金は、これまでの1億5千万円から2億円に増額されることが既に決まっている。有力馬をお抱えのオーナーや出資会員の方におかれては、きっとテンションの上がる話であろう。南関東を根城にする馬主にしてみれば、東京ダービー1着分の賞金をポンと上積みしてくれる気前の良さは、俄かに信じ難いものがある。

「有馬記念と並んで国内2番目の高額賞金レースになった」との報道がなされているが、これは厳密には正しくない。1着馬に3千万以上もの付加賞が上乗せされるダービーの方が、実質的に有馬記念よりも実入りは大きい。

実は、はるか昔はさらに付加賞に重みがあった。例えば1着賞金が1万円の時代で、かつ付加賞制度のあった9回のダービーのうち7回は、本賞金より付加賞の方が多かったと記録に残る。すなわち馬主の負担が相当に大きかった。当時の登録料は200円だから馬主は1着賞金の50分の1を負担していたことになる。1着賞金2億円の現在に当てはめると、400万もの登録料を支払う計算だ。

そんな大金を一括で支払うとなれば、躊躇いがあっても仕方ない。そこで登録を4回に分けて行う方式(現在は3回)が取られる。何度も繰り返し行われるクラシック登録は、巨額な登録料の分割払いの意味もあって生まれた。

現在では、2歳秋の第1回登録が1万円、3歳1月の第2回登録が3万円、そしてダービー直前の最終登録に36万円を収めることになっている。合計40万円。第2回までの登録料はさほど負担を感じさせないが、それでもクラシック登録のない3歳馬は少なくない。

1950年はクモノハナが皐月賞とダービーの2冠を制したが、もしウイザートが出ていたら勝負の行方はわからなかった。なんとダービーの直前まで11連勝もしたウイザードに、クラシック登録がなかったのである。それから38年後、空前の競馬ブームを引き起こすオグリキャップにも登録がなく、ウイザードと同様、クラシックとは無縁の3歳春を余儀なくされている。

未登録の理由は能力判断によるところがもっとも多いと思われるが、意外にも関係者の手続き忘れというのも後を絶たない。馬にしてみればたまったものではなかろう。そこで登場したのが追加登録制度という救済手段。未登録の馬でも一定の資格を得て200万円を払えば、クラシックに出られることになったのである。テイエムオペラオーやヒシミラクルが、この制度を利用してクラシックを制したのは記憶に新しい。

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「レースに出走するだけで200万も!?」。競馬を知らぬ人は驚くかもしれない。だが、アルゼンチン2冠馬ジェントルメンは、1998年のブリーダーズカップに挑戦するために、80万ドル(当時のレートで約9600万円)もの追加登録料を支払っている。まあ、これは極端な例としても、海外のビッグレースの追加登録料は1000万円前後のケースがほとんど。日本の追加登録システムは、欧米に比べれてずいぶんと値頃感が漂う。

ちなみに、9600万円を支払ってブリーダーズカップへの出走を果たしたジェントルメンだが、あろうことか鼻出血による競走中止の憂き目を見た。こういうとき、関係者はいったい何を思うのだろうか。私なら悶絶死するに違いない。

 

 

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2013年5月12日 (日)

スランプ脱出

一流選手といえども、ひとたび調子を落とせば、普段のパフォーマンスを発揮することすら困難になる。いやむしろ、一流選手ゆえであろうか。「二流選手にスランプはない」と言ったのは南海ホークス当時の野村克也氏。一流であればあるほど、泥沼からの脱出は難しさを増す。

今年すでに重賞5勝の内田博幸騎手。なのに、GWに入ってからというもの、ことごとく重賞で人気を裏切り続けてきた。

単勝1.8倍の圧倒的1番人気レッドレイヴンで11着に沈んだ青葉賞が泥沼の始まり。ゴールドシップで天皇賞史に残る敗戦を喫すると、NHKマイルカップでも1番人気エーシントップで7着。そして昨日の京王杯でも、2番人気のトウケイヘイローで8着と敗れた。迎えたヴィクトリアマイルのパドックでは、“内田スランプ説”が堂々と語られる有様である。

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苦しんできたのは騎手だけではない。ヴィルシーナは牝馬3冠レースとローズSでジェンティルドンナに4連敗。ジェンティルドンナ不在のエリザベス女王杯は雨に脚元をすくわれて、また2着。直前の産経大阪杯では、初めて掲示板を逃す敗戦を喫し、このヴィクトリアマイルでも1番人気ながら、その評価は◎から無印まで様々だった。

レースは好スタートから2番手を追走し、直線半ばで先頭に立ったが、外からホエールキャプチャが詰め寄ってくる。相手は天皇賞と京王杯を勝った蛯名正義騎手。このとき内田騎手は「またやられちゃうのかな」と思ったという。実際、いったんはホエールキャプチャが前に出た。だが、ゴールのその瞬間だけヴィルシーナの鼻が突き出たのは、不思議というほかはない。ゴールを過ぎたら、やはりホエールキャプチャが前に出ているのである。「もう2着はごめんだ」というヴィルシーナの魂の発露だろうか。

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昨日はあんなことを書いた私も、正直ヴィルシーナが勝つことは難しいと思っていた。彼女はバテない心臓を持つ代わりに、東京のマイルGⅠを勝つのに必要な強烈な爆発力は備えていない。前半スローで流れ、33秒前半の上がり勝負に持ち込まれては厳しい。よくてまた2着か。そんな諦観を持って見ていた私は、自身の不明を恥じるほかはない。

それは鞍上の技術によってもたされた勝利でもあった。前半は戸崎騎手の2番手を追走。スローで流れれば苦手な瞬発力勝負になってしまうし、かといってペースを速めれば、自らもバテて末を無くす恐れがある。前後半を46秒3−46秒1という平坦なラップを先頭2番手から巧みに誘導し、ここしかないという絶妙の瞬間で一気にスパートした。騎手の判断が凝縮された結果が、あのハナ差であろう。

1000mの通過58秒2、勝ち時計1分32秒4。昨年のこのレースとまったく同じタイムに、不振を極めていたホエールキャプチャも調子を取り戻した。これで彼女もスランプ脱出。素晴らしいレースになった。

 

 

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2013年5月11日 (土)

ヴィルシーナの雪辱

明日のヴィクトリアマイルで前売り1番人気に推されているヴィルシーナは、現在GⅠレース出走機会4連続2着中。ここでもし2着に敗れることがあれば、メイショウドトウが持つ「GⅠ5連続2着」の最多記録に並ぶこととなる。

Vil  

GⅠ級レースにおける2着回数ではフリオーソの「10回」という記録があるから、ヴィルシーナの「4回」などまだまだという見方もあるかもしれない。むしろ、ヴィルシーナの場合、GⅠレースで2着しか記録していないという点が異質なのである。前出のメイショウドトウもフリオーソも2着回数が多いだけで、ちゃんとGⅠレースを勝ってもいる。

ヴィルシーナのオーナーは、横浜ベイスターズやマリナーズで活躍した元プロ野球選手の佐々木主浩氏。日米を通じて愛し続けた背番号「22」は、佐々木氏自身が2月22日午後2時22分生まれであることに由来するといわれる。自主トレの開始日や渡米するにも22日を選ぶなど、「2」という数字に徹底的にこだわることで、彼は数々の栄光を手にしてきた。

「それが、愛馬ヴィルシーナの着順にまで影響を及ぼしている」と揶揄する声があるのはさておき、「ヴィルシーナ(Verxina)」とは、ロシア語で「頂点」の意。佐々木氏本人が愛馬の2着を望んでいることなど、あろうはずがない。

秋華賞はクラシックレースではないが、ヴィルシーナのように3歳3冠レースですべて2着に敗れた馬は、過去に2頭いる。一頭は牝馬のタカハタ。1952年の皐月賞、ダービー、そして当時は秋に行われていたオークスで、いずれも2着に敗れた。

そして、もう一頭はよく知られているようにカツラシユウホウ。1958年の牡馬クラシックでは、タイセイホープ、ダイゴホマレ、コマヒカリの順に敗れて無冠に終わった。その着差は、それぞれクビ、ハナ、半馬身でしかない。特にダービーでは、直線でダイゴホマレと壮絶な競り合いを演じ、いったんはクビほど前に出ながら、最後の最後に差し返されれるという歴史に残る惜敗だった。

だが、負けた相手には次のレースで必ず雪辱したことはカツラシユウホウの名誉のために特記しておきたい。それでも、いつも別な馬が前にいた。菊花賞のコマヒカリにも、翌年春の天皇賞で先着してみせたのに、勝ちはクビ差でトサオーに譲っている。

負けた相手への雪辱の気持ちなら、ヴィルシーナ陣営とて負けてはいまい。まずはレインボーダリアへの雪辱を果たし、来るべきジェンティルドンナとの再戦には「GⅠ馬」として臨みたいはず。明日のレースに注目したい。

 

 

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2013年5月10日 (金)

炭水化物上等!

牛丼チェーン『すき家』が投入した「やきそば牛丼」が、まもなく発売開始から1か月を迎える。

Sukiya  

『すき家』といえば、船橋競馬場の正門向かいに店を構えるだけでなく、大井競馬場に隣接する「ウィラ大井」内、さらに川崎駅から川崎競馬場に向かう途中や、南浦和駅前にもあることから、南関東を根城とする競馬ファン・関係者にしてみれば、なかなか無縁ではいられない存在であろう。

それにしても牛丼に焼きそばである。

世間では「なぜ一緒にした?」という声が大多数を占めていると聞く。同じ焼きそばコラボ系の「焼きそばパン」にも批判的な声は多い。「炭水化物に炭水化物という組み合わせは許せない」なんてフレーズは、さすがに聞き飽きた感もある。だが、「焼きそば+白飯」のそばめしや、「焼きそば+小麦粉」のお好み焼きに罵声が浴びせられることはあまりないように思う。行き着くところは味の良し悪しということなのであろう。

そもそも、焼きそばパンを「炭水化物同士の組み合わせ」と批判しておきながら、コロッケパンを喜んでほお張っている姿は理解に苦しむ。ジャガイモは炭水化物の塊。ヨーロッパでは依然として主食の地位にある。

さて、本題のやきそば牛丼であるが、良くも悪くも想像の埒内に収まる味としか言いようがない。味の評価は百人百通りで、美味いと思う人もいれば、不味いと感じた人もいるはず。だがミラクルは起きなかった。『すき家』を展開するゼンショーホールディングスにしてみれば、これだけ話題になったこと自体がひとつの成功と言えるかもしれない。

とはいえ、実際食べてみて「ご飯が余る」と感じた人は少なくないのではあるまいか?

“やきそば牛丼素人”たる私は「牛肉が入った焼きそば」という感覚で食べ始めてしまい、気づいた時には、焼きそばはもちろん、肉もほとんど消えかけた状態で、白飯だけが露出する惨状を招いてしまったのである。「生卵をかけた方が食べやすいよ」と聞いていたのだが、焼きそば用の濃いソースをかけてしまった白飯に生卵を流しかけるのはちょっと気が引ける。これは困った。「ソース焼きそばではなく、焼きうどん風のしょうゆ味の焼きそばにしてくれれば良かったのに……」と正直思ったが、それでは「クレヨンしんちゃん」の映画とのコラボが成立しない。いろいろと難しいのである。

まあ、焼きそばパンにも根強いファンがいるのだから、やきそば牛丼の素晴らしさに魅了されたという人もいるに違いない。なにせ腹持ちの良さは群を抜く。少なくとも「主食と主食で何が悪いか」と感じられた一杯ではある。

 

 

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2013年5月 9日 (木)

実況を聞き分けろ

ゴール前でハナやアタマの接戦になった時、勝ち馬の撮り逃しのリスクをいかにして減らすかという話の続き。

Boku  

たいていは、ターフビジョンで各馬の脚色を見極めた上で、1着になるであろう馬を撮るのだが、ターフビジョンで横一線だったり、そもそもターフビジョンにすら映らないような最後方から飛び込んでくる馬がいると、現場は大混乱となる。特に人気薄馬に飛び込んで来られてしまうと、撮る方もマークが薄いからタチが悪い。だから、カメラを構えつつ、目はファイダーの中で繰り広げられる攻防を注視し、耳は場内実況に神経を研ぎ澄ませることになる。

1番人気のビリーヴが中山の急坂を駆け上がって先頭に立ち、「よし、ビリーヴだ!」とビリーヴにフォーカスを合わせたその時に、「お~ぉそとから、デュランダル!!」という場内実況が耳に飛び込んできたら、瞬時にレンズを外に振ってデュランダルの勝負服を探すことになる。だから、アナウンサーと同じように、我々もレースに出走する馬の勝負服を覚えておかなければならない。

ただし、実況アナウンサーの中には、どう転んでも届くはずがないのに、「大外からイナズマクロスがやって来た!」(1991年エリザベス女王杯)みたいなセリフを織り交ぜる人がいるので、そういった意味での注意は必要。レースが始まったら、「あ、このアナのゴール前実況は2割引で聞かなきゃダメだな」という具合に、自分なりのサジ加減が求められる。それでも、「これは差し切る勢いだ!」というフレーズには弱いですね。これ聞くと、ついそっちを撮っちゃうんだけど、あとで結果見たら半馬身も届いてないなんてことは結構ザラにある。

そもそも、場内実況アナウンサーは我々のために勝ち馬を教えてくれているワケではない。場内のファンにレースの熱気を伝えるため、多少無理があったとしても、大外から豪快に追い込んで来る馬を探し出して、聞く人にそれを伝える必要があるのだろう。

逆に、勝ち負けになりそうな脚色で追い込んで来ているにも関わらず、実況がいっさい触れてくれないケースもごく稀にある。

2003年の目黒記念は直線で最内から抜け出したメジロランバートを、大外からレディパステルが追い込む展開。

場内実況もレディパステルとメジロランバートの名前を連呼し続けたが、ゴール直前はほとんど「メジロランバート!メジロランバート!!」の繰り返し。こりゃメジロ優性だろうと、メジロランバートを厚めに撮り、念のためレディパステルも数コマ抑えた。

Lady  

だが、実際に勝ったのは、実況が一度たりとも名前を呼ばなかったトシザブイだったのである。

しかも、メジロランバートはレディパステルにすらアタマ差及ばず3着なんですよ。

まあねぇ、単勝万馬券のメジロランバートが勝ち負けになりそうだっていうのは興奮に値するとは思う。しかし、ハナやアタマならまだしも、レディパステルをクビも差し切っていたのだから、「トシザブイ」という声を一回くらい聞きたかった。

とはいえ、昨日紹介したローブデコルテとベッラレイアのオークスでは、かなり際どい接戦だったにもかかわらず、実況アナがローブデコルテの勝利を断定的に伝えていたことも、ここでは強調しておきたい。かなり勇気のいる実況であろう。さすがプロだなぁと思う。実況に惑わされることより、助けられるケースの方が多いことは間違いない。

 

 

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2013年5月 8日 (水)

勝ち馬を見極めろ

ゴール前でレンズを構えるカメラマンたちは、ターフビジョンで直線の攻防を確認しながら勝ち馬を見極めて、間違いなくゴールを1着で駆け抜けるであろう1頭を撮ることが求められる。

Moon  

もちろんゴール直前で矢の如く追い込んでくるような馬もいるので、ターフビジョンがあるからといって油断は禁物。シャッターを切り続けながら場内実況にも耳を澄ませなければならないし、長年の経験が「外に振れ!」と教えてくれることもある。

1着がアタマやハナの接戦であっても、その2頭が馬体を接しているような場合なら、両方をフレームに収めて撮れば良い。昨年のジャパンカップや2000年の日本ダービーがそれに該当する。こういうケースでは、さほどの苦労はない。しかし、それでもどちらが勝っているかを意識して撮っているのと、それが分からずに撮っているのとでは、自ずと写真の仕上がりに差が現れる。だから下の写真は失敗例かもしれない。私は武豊が勝ったと思って撮っていた。

Derby2000  

やっかいなのが、内外大きく離れて、しかもハナの勝ち負けになるような展開。

内外離れていても、2頭が完全に抜け出していて、こちらが「これは内外離れてもつれそうだぞ」と、心の準備ができるような展開ならまだどうにかなる。外の1頭を撮り、しかるのちに内の1頭を撮ればいい。古くなってしまうが1995年の春の天皇賞。ライスシャワーとステージチャンプがハナ差の接戦を演じたあのレースなどがまさにそう。撮影コマ数は半減するが、撮り逃しだけは避けなければならないので、これはやむを得ない。

いちばん困るのが、人気馬がいったん抜け出して、いったんは「大勢決した」と思わせておきながら、想像のラチ外から異次元の脚で大外強襲されるようなケース。

2007年のオークス。坂を上ってベッラレイアが抜け出したところで、大半のファンは勝負あったと思ったに違いない。クラシックの大舞台。しかも1番人気である。カメラマンの多くもそちらに目を奪われた。だが、ひと呼吸おいて大外からローブデコルテが猛然と追い込んできた。並んだところがゴール。写真判定の末に後者に軍配が上がるわけだが、その差はわずか9センチであった。

Oaks2007  

このオークスでは、多くのカメラマンが2着のベッラレイアを撮ってしまった。クラシックレースともなると、スポーツ新聞や大手プロダクションは、3~4名のチームでゴール前撮影を行い、ゴール前でもつれそうになったら、「内を撮る係」「外を撮る係」とカメラマン同士で役割分担することにより撮り逃しを防いでいる。だがしかし、それでもこのレースでは撮り逃しが多発したという。大外強襲に屈する人気馬は、つくづくカメラマン泣かせだ。

撮るべき馬を間違えて、負けた馬を撮ってしまうことを、カメラマンたちは「ハズした」と言う。レースが終わった直後に、カメラマンが「あ~、ハズしちゃったよぉ」などとこぼしていたら、それは馬券が外れたのではなく、勝ち馬を取り損ねたのだと思っていい。もちろん、ホントに馬券をハズして落ち込んでいる場合もあるだろうけど。

 

 

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2013年5月 7日 (火)

枠色

先週土曜の東京10レースは緑風S。昭和天皇の崩御に伴い「みどりの日」が制定されて以来、緑風Sがみどりの日に実施されるのはこれが初めてのこととなる。これを勝手に記念して、緑帽6枠流しの馬券を買ってみた。

20130504150359  

最近はすっかりマイナーな存在になった枠連だが、競馬初心者が買いやすい馬券として、今も独特の存在感を漂わせている。レース観戦において、初心者が真っ先に戸惑うのが、自分の買った馬を見失ってしまうこと。勝負服で判断ができるようになるまでは時間がかかるだろうし、密集した馬群の中で、ゼッケン番号を視認するのは実況アナウンサーでも難しい。

だから枠連。自分が買った馬は、騎手の帽子の色で判別がつくから、レースが追いやすい。しかも、代用的中というオマケも期待できる。

「枠番」というシステムのない欧米では、勝負服と同じように、馬主に帽子の色を決める権利がある。我が国でも、かつては枠とは無関係に馬主独自の色を用いていた。

帽色が採用されたのは、戦後の4枠制から5枠制を経て6枠制に移行した1957年のこと。この時の色は、1枠から白、赤、青、緑、黄、水だった。配色の根拠となったのは、「一白・二黒・三碧・四緑・五黄・六白・七赤・八白・九紫」の「九星」とされる。さらに1963年の8枠制移行に伴い、7枠の茶、8枠の黒が追加されたが、「茶色は見にくい」という大井のファンの声がきっかけとなり、色相学の専門家などの意見を基に現行の配色に落ち着いたという。オレンジとピンクという蛍光色は確かに見やすく、結果それを中央競馬がマネる形となった。

10r  

さて、記念すべき「みどりの日の緑風S」を勝ったのは、なんとなんと14番人気のコスモロビン。休み明けではあったが、昨年の目黒記念3着はやはりダテではなかった。気になる帽子の色は4枠青帽。うーむ。ハズレですね。残念。かつてなら4枠は緑帽だったから当たっていたのに……、なんてアホなコトで真剣に嘆いているようだから、馬券が当たらないんだよなぁ。

 

 

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2013年5月 6日 (月)

ふなっしー記念

「今日はお客さん入ってるわねぇ」

船橋競馬場の馬主席へと上がるエレベーターで、フロアスタッフのおばちゃんに声をかけられた。スタンド内でも「こんな混んでるこたぁねぇよな……」と、おじさんがひとりでぶつぶつ文句を言っている。聞けば開門待ちの行列が200mにも及んだそうだ。たしかに凄い。

Funacy 

1万8430人もの大観客のお目当ては、競馬ではなく、この名物キャラクターだったのだろうか。入場者数は昨年の2.5倍を数えたにもかかわらず、馬券売上は32%増の17億4935万円にとどまった。今年はIPAT発売のアシストがあったことを思えば、本場の売上の伸びがイマイチだったことは否定できまい。とはいえ、まずは競馬場に来てもらうことが第一歩という見方もある。

むろん眼目は船橋競馬場の大一番かしわ記念。ふなっしーの登場を今や遅しと待ち受ける観客を横目に先頭でゴール板を駆け抜けたのは、重賞連勝中ながらマイル適性への不安から2番人気に甘んじていたホッコータルマエであった。

Kashiwa 

4歳馬の勝利は2009年以来となる。その時の勝ち馬エスポワールシチーは、8歳になった今年も出走して2着。これをしてダートマイル路線の世代交代と見るかどうか。ジャッジを下すには、まだちょっと材料に乏しい。フェブラリーSで直接対決が実現していれば、また違ったのだろう。だが、東海Sで3着に敗れたホッコータルマエは、賞金的にフェブラリーSへの出走がおぼつかず、佐賀記念から名古屋大賞典というローテを強いられていた。

ホッコータルマエは3歳6月のユニコーンSでも賞金除外の憂き目を見たことがある。やむを得ず同じダート1600mの青梅特別に出走し、古馬を相手に完勝していた。そのレースで繰り出した末脚は、芝に匹敵する上がり3ハロン35秒3。ユニコーンSを勝ったストローハットの上がりを1秒も上回っていたことを思えば、むしろマイル適性は高かったのかもしれない。フェブラリーSへの出走が叶っていれば、いったいどういう結果になっていたのか。想像が膨らむ結果になった。

Ohme 

ともあれ、これで当分賞金の心配は必要あるまい。そういう意味でもホッコータルマエには大きな勝利であった。「帝王賞から、秋はJCダートを目標に」という調教師のコメントも、展望の広がりを示すものであろう。帝王賞にはハタノヴァンクールやニホンピロアワーズも出てくる。ローマンレジェンドにしても、次はもう少し動けるだろう。2006年のアジュディミツオー以来となる「かしわ記念→帝王賞」の連勝が、果たしてなるか。注目したい。

 

 

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2013年5月 5日 (日)

プラチナチケット

たとえオープン勝ちの実績があったとしても、ダービー出走が叶わぬ時代である。数年前から青葉賞やプリンシパルSからの優先出走枠もそれぞれ1頭ずつ減らされた。昨日のプリンシパルSを勝ったサムソンズプライドが手中に収めた優先出走権は、まさにプラチナチケットと呼ぶにふさわしい。

11r_2_2  

ところでプラチナチケットといえば、これ。

Ticket  

んで、いま私がいるのは、ここ。

Dome  

東京のGⅠレース当日に何やってんじゃ!とお叱りを受けるかもしれないが、今日だけは勘弁していただきたい。いや、長嶋茂雄氏や松井秀喜氏のセレモニー云々とは関係なく、もともと今日は子供を野球に連れてくる約束だった。日頃からまるで家族を顧みることなく、府中だ船橋だ千歳だと飛び回っているせめてもの罪滅ぼしのつもりだったのである。

ところが、このチケット入手は困難を極めた。巨人戦がいつも満員御礼になったのは、もはや遠い前世紀の話。ここ数年は、読売の関係者から毎試合のように「チケットいらないか?」と言われる始末だった。「タダでも良いから」と渡されても、私にはトゥインクルもあればスパーキングもある。だから知人にあげようとするのだが、誰ももらってくれない。昨年までのそんな状況を知っていたから、広島戦の外野席くらい楽勝だろ、とタカをくくっていた。結果、手に入れてから国民栄誉賞の話が降ってわくことになるわけだが、ここまで騒ぎが大きくなると、果たして運が良いのか悪いのかよくわからない。

一方でプラチナチケットといえばダービーの指定席もそう。すでにはがきによる抽選は結果が出ており、あとはJRAカードの抽選に勝負をかけるという向きもあろう。ダービーの入場者数自体は減少傾向にあるのに、指定席当選の困難さは今も昔も変わりはない。

「ダービーまでの1年間の馬券購入額が100万円を超える人は、指定席当選確率が10倍になる」みたいな特典があっても良さそうですよね。

ああ、でも、それだとIPAT利用が前提になってしまいそうだな。それなら、競馬場に来場するたびにスタンプを押してもらって、それが満タンになったら当選確率10倍特典を貰えるというのはどうだろうか。スタンプの台紙がそのまま応募はがきになっているとなお良い。先日の、福島単独開催でIPAT派の存在感が浮彫になったばかりだが、やはりそこは競馬場で行われている競馬である。足しげく競馬場に通うライブ派の存在は欠かせない。

Oneseg  

   なんて、NHKマイルに行かずに東京ドームに来ている奴が言っても、説得力ありませんね。レースはワンセグでちゃんと見ました。coldsweats01

 

 

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2013年5月 4日 (土)

社台と日高の融合

ダービートライアルのプリンシパルステークスを勝ったのは、メイショウサムソン産駒のサムソンズプライド。人気馬ミエノワンダーの追い出しを待って、そこからさらにもうひと伸びする味のある競馬を見せた。その着差はわずかクビほど。だが、ダービーへの優先出走権が与えられるのは1着馬のみだと思えば、これ以上大きなクビ差はあるまい。

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直前に京都で行われた京都新聞杯を勝ったキズナはディープインパクトの産駒。皐月賞3着のコディーノの父はキングカメハメハ。弥生賞2着ミヤジタイガの父ネオユニヴァースは2003年のダービー馬である。ダービー馬が種牡馬としてその産駒をダービーに送り込むのは、特別な意味を持つ。メイショウサムソンもダービー馬としての意地があろう。その名の通り、「サムソンのプライド」が乗り移ったかのような最後の伸びであった。

ともあれ、これで2003〜06年のダービー馬の産駒が今年のダービーに駒を進める見通しとなった。今年のダービーは、ダービースタリオンズステークスにも匹敵するような、ダービー馬同士の戦いも見どころになりそうだ。

メイショウサムソンの引退が決まったあの時、社台スタリオンステーションで種牡馬入りすると聞いて、「おや?」と思われた方もいたのではないか。吉田善哉氏の当時より、JRAの種馬場事業に一貫して反対姿勢していた社台グループが、日本軽種馬協会系列の種牡馬を迎え入れるというのである。昔を知る人間からすれば考えられない話。吉田善哉の時代も遠くになった。

いや、逆に言えば、生産地の融合が進む時代が近づきつつあるのかもしれない。

先ほども触れたように、メイショウサムソンの父・オペラハウスも、母の父・ダンシングブレーヴも、ともに日本軽種馬協会の種牡馬。母系はフローリスカップに遡る名牝系で、4代母には天皇賞・秋と有馬記念を勝ったガーネットの名も見える。メイショウサムソンには、我が国が一世紀に渡り育ててきた日高の底力とも言うべき血が流れている。

Meisho

それが、社台スタリオンに迎え入れられ、社台グループの誇るダイナカール系の牝馬フェザーレイに配合され、ノーザンファームで生産されたのがサムソンズプライドだ。フェザーレイのボトムラインには、エルコンドルパサー、サンデーサイレンス、ノーザンテースト、ガーサントと、社台の歴代エース級種牡馬が配合されている。サムソンズプライドは、まさしく社台と日高の融合を象徴する一頭と言っても差し支えあるまい。

ともあれ、ダービーに向けてキズナの末脚が強い印象を残した一日であったわけだが、サムソンズプライドの地味な強さも不気味な存在感を漂わせる。父メイショウサムソンがまさにそんなタイプだった。大きな腹袋といい、骨太の四肢といい、その大きめの顔だちといい、父にソックリなサムソンズプライドだから余計に怖い。

 

 

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2013年5月 3日 (金)

一日一冊

この連休を読書に充てようとされている方もいらっしゃることだろう。まとまった読書時間を取るのは簡単なことではない。世間の喧騒とは無縁のゴールデンウィークを過ごすというのは、ちょっとした贅沢でもある。

かくいう私も「一日一冊」を目標に掲げていながら、思うように時間が取れずに「三日一冊」程度のペースに甘んじている。一方で、読むべき本たちは「一日一冊」を前提にかき集めてしまっているから、部屋の片隅には未読の本たちが雨後の筍のごとく屹立することになる。このGWに少しでも取り戻さねば、未読の本で部屋が埋め尽くされかねない。それで、府中や浦和に行っても競馬新聞ではなく本ばかり読む羽目になった。今更、村上春樹の新作を広げるのも気が引けるけど、部屋のスペース確保ために背に腹は代えられない。

Book 

そんな読書繁忙期に限って、セールのカタログが届けられたりする。私にとって、セールカタログは立派な“読み物”であるから、全ページ余すとこなくちゃんと読む。読んだところで何の役に立つのかは分からないけど、一頭一頭のプロフィールにきちんと目を通さねば、売られる馬たちに失礼な気がするのである。

そもそも、まともな本を一日一冊のペースで読み倒したとしても、その本に書かれた内容がすべて役に立つとは思っていない。

本はたくさん読んでいる。他人よりものは知っている。でも、それだけ   

そんな人間が巷にどれだけ溢れていることか。何事においても対価をめる風潮の為せる業であろう。「読書」を労力と捉え、それに対する「対価」としての知識を求めているようにも見える。

片っ端から本を手にとって読み漁ること自体は、決して悪いことではない。だが、知識は在庫をただ積み増すのではなく、入れ替えることが肝要。使わぬ知識に価値はない。在庫の入れ替えは思考力の鍛錬にも繋がり、不易な知識のみを残すことができる。

これを具体的に示す行為が、読み終えた本の処分であろう。古本屋に持ち込む本の選択がいかに難しいか。体験のある人でなければ分かるまい。思い入れもあるし、ひょっとしたらまた必要になるかもしれない。それは馬券検討における重大決断「切り」にも通ずる。馬券上手は切り上手。本も知識もヒモ候補も、切るべきものはスマートに切りたい。

 

 

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2013年5月 2日 (木)

昔の名前で出ています

昨日の浦和競馬5レースに、こんな名前の馬が出走していた。

Baken  

なんと! 1980年の浦和記念の勝ち馬で、記念すべき第1回ジャパンカップでは、ホウヨウボーイやモンテプリンスを差し置いて日本馬最先着を果たした、あのゴールドスペンサーではないか! 最近見かけないと思ったら、いつの間にか浦和に帰ってきてたのか。これは単勝一本勝負だ!!

Room  

馬主席があいにくの満席。ガランとした「馬主室」という部屋にひとり通されて、じいっとモニタばかり見つめていたから、頭がおかしくなったのかもしれない。もちろん、あのファラモンド産駒のゴールドスペンサーであるはずはなく、2006年生まれ、ニューイングランド産駒のゴールドスペンサーであった。

GⅠ馬など一部の名馬を除き、一度使われた馬名を再使用することはルール上認められている。ただし、先代が死んでから5年以後という条件がつく(重賞勝ち馬は10年以後)。今でも「昔の名前で」走っている馬を見かけるのはそのせいだ。3冠馬ミスターシービーや皐月賞馬ロゴタイプの父ローエングリン。阪神JFの勝ち馬で来週のヴィクトリアマイルに出走するジョワドヴィーヴルも、実は“2代目”だったりする。

初代ローエングリンは1968年の金鯱賞を勝っているが、追い込みを得意としたというから興味深い。この金鯱賞も4番手からの差し切り勝ちだった。また、先代のジョワドヴィーヴルは、今年のフェブラリーSを勝ったグレープブランデーの“兄”である。こうしてみると   当たり前の話だが   初代と2代目とでは、馬のイメージはまるで異なる。

先月17日の園田競馬でドンクールという馬が勝利を収めたとのニュースが伝えられた。

「あぁ、“ドンクール”という馬名も、むかし聞いた覚えがあるなぁ。もう2代目が出てきたのか。早いもんだなぁ……」

   と遠い目をしながらレース結果をよくよく見たら、そのむかし昔のドンクール本人ではないか。思わずひっくり返った。

聞けば、2006年の名古屋大賞典以来7年ぶりの勝利だという。てっきり引退したものと思い込んでいた己の不明を恥じねばなるまい。ディープインパクトと同期の11歳。レース出走自体が2年7ヶ月ぶりだった。それでも闘志は衰えていなかったという。たいしたものですね。

Don  

同期の現役馬には8年連続の春天出走という大記録を樹立したトウカイトリックや、大井の東京スプリング盃4連覇の偉業を達成したフジノウェーブがいる。ちなみにフジノウェーブという名前も、実は“2代目”。ともあれこの世代はレジェンドが多い。

 

 

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2013年5月 1日 (水)

出てくる以上は

連休の谷間の浦和競馬場は重賞しらさぎ賞。南関東限定の3歳上牝馬による1400m戦という条件になって今年が7年目だが、過去6回のうち4度までが社台グループの優勝に終わっている。今年も、ダービー馬クラーベセクレタを筆頭に、東京プリンセス賞馬マニエリスム、重賞3勝ナターレと、社台の強力牝馬陣が顔を揃えた。

 

Konno 

1番人気はこのレース連覇がかかるクラーベセクレタ。重賞11勝、うちSⅠ4勝、交流重賞1勝の実績がありながら57キロで乗れる有利さは計り知れない。昨年は単勝オッズ元返しで7馬身差独走。ところが今年は去年と同じ斤量にもかかわらず、単勝オッズ1.2倍とある。これを「つける!」と前向きに捉えるか、あるいは「何か不安材料があるのか…?」と勘ぐるか。どちらにせよ、馬券検討の入り口はここからであろう。

 

Mato1 

2番人気は「白い逃亡者」ナターレ。戸崎圭太騎手の南関東所属ラスト騎乗となった2月28日の川崎・ブラッドストーン特別で、圧倒的1番人気の戸崎圭太を尻目にまんまと逃げきり勝ちを収めて、競馬場を微妙な空気にさせてしまったあの馬である。

 

Mika 

リーディングジョッキーが手綱を握るマニエリスムは、一週前の追い切りで、併せたクラーベセクレタをアオるほどの好調ぶり。厩舎スタッフが「今週が競馬ならクラーベにも勝てる」と驚いたという。先週の大井では羽田盃と東京プリンセス賞を制し、波に乗る川島正行厩舎のこと。クラーベセクレタとの“親子どんぶり”もあるかもしれない。

ところが、実際のレースは3角先頭からそのまま押し切ったナターレが快勝。2着センゲンコスモで、終わってみれば内田勝義厩舎の“親子どんぶり”であった。

Matoba 

まずはナターレを褒めるべきなのだが、やはり誰もが気になるのはクラーベセクレタの敗因であろう。JRA所属馬不在のレースでは11戦して無敗を誇った彼女が、南関東限定戦であろうことか9着に敗れたのである。ただごとではあるまい。いつもは丁寧に取材に応じる川島正行調教師も、珍しくコメントを残さなかった。

思えば、マリーンカップを「仕上がり途上」という理由で回避したあたりから、おかしかったように思う。追い切りでマニエリスムにあしらわれたのも、同じ理由と考えて差し支えあるまい。「まだ緩い」、「闘志が戻らない」、陣営は何度も不安を口にしていた。

そうはいっても、南関東の現役最強馬の登場である。「出てくる以上は……」と考えるのが普通であろう。だが一方で、「このデキでは……」という思ったファンも少なからずいたに違いない。双方の思いがぶつかり合った答えが、単勝オッズ1.2倍という微妙な数値だったということか。

無敗のダービー馬トキノミノルは、ダービーの前日に脚部不安説が流れた。事実、レース後には、蹄の部分に血が滲んでいたという。それでも1番人気に推され、堂々のレコード勝ち。「出てくる以上は……」という見立てをされるのは、大本命馬が抱える宿命だ。勝ったナターレには気の毒だが、勝ち馬より敗れた馬の印象の方が強く残るレースになってしまった。

 

 

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