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2013年4月30日 (火)

健全なレジャー

28(日)の東京競馬場は、重賞レースが組まれていないにも関わらず、56,875人もの観客でごった返した。

Stand  

GW真っ只中。しかも強風が吹き荒れた土曜から一変し、穏やかな陽気に恵まれたことが、さらに客足を伸ばしたのであろう。昨年のGⅠ・ヴィクトリアマイル当日の入場者数が50,007人だから、まさしく“GⅠ級の入り”ということになる。

注目すべきは子連れ客の多さ。「アイスもゼリーも売り切れ。こんなこと初めて」と驚いていた売店のオバちゃんの言葉が、その事実を裏付けている。とにかく、右を見ても左を見ても子連ればかり。創設以来、JRAは「競馬はバクチではなく健全なレジャー」と一貫して訴え続けきた。内馬場が家族連れのレジャーシートで埋め尽くされ、子供たちがスタンド内を所狭しと駆けまわる光景に、関係者は涙が止まらなかったに違いない。

だが、売店のアイスが記録的売上を記録する一方で、馬券売上は82億7652万円に留まった。ところが、降雪中止の代替開催として行われた昨日の福島競馬は、競馬場入場人員こそ9,054人に留まったにも関わらず、84億2445万円の売上である。重賞もなく、入場者1万人に届かぬ福島の売上に、5万6千人の東京が負けた。むろん、売上の大半はIPAT投票によるものだが、IPATの世話にはならぬ“ライブ派”の我が身としては、複雑な思いを禁じ得ない。日曜の東京で片隅に追いやられたベテランの気持ちが、なんとなく分かるような気がする。

そもそも競馬場で購入する「馬券」と、IPATで購入する「馬券」とは、果たして同じものであろうか。

穴場を前に財布から札を取り出す瞬間のあの葛藤を、パソコンやスマホで感じることはおそらくできまい。私は千円札を実際に手に取るたび、千円を稼ぎ出すことの難しさに思いを巡らす。この千円があれば、女房子供に美味いものを買って帰ることもできる。この千円を絶対に失ってはいけない。その決意なくして、バクチなど打てるものか。お金を出す瞬間に、人はその重みを考える。競馬は健全なレジャーかもしれないが、バクチであることも間違いないのである。

Tokyo

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2013年4月29日 (月)

ドレスコード

「サポーターズクラブ写真撮影【ごく軽度のドレスコード】ご協力お願いします」

こんなタイトルのメールが届いたのは先週のこと。差出人は、道営競馬のサポーターズクラブを運営する「ホッカイドウ競馬ひだか応援隊」である。なんでも、サポーター特典のひとつである口取り撮影への参加時に、サンダル履きやTシャツ一枚といったラフな格好で現れるサポーターが現れて、クラブに協力している馬主サイドから苦言が入ったというのだ。

それにしても、「ごく軽度のドレスコード」という表現は絶妙だ。「無理を強いているわけではありません。常識で考えればわかるでしょ」というニュアンスが言外に漂っていて、ついつい笑ってしまう。それにしても、サンダル履きで口取りに入ろうという人がいるんですね。

Kuchitori 

そういえば社台系のクラブでも、地方競馬場で優勝した際、口取り撮影に臨む出資会員にジャケットの着用をお願いする文書を出している。地方競馬では馬主に対する厳格なドレスコードはないものの、やはりTシャツにジーンズという格好で口取りの綱を握る会員が出たとかで、異例の通達となったようだ。

「地方なら気軽に馬を持てる」という思いで出資した会員の中には、気分を害する向きもあろう。だが、私個人はこうした指針に異を唱えるつもりはない。中央であれ地方であれ口取り式とはセレモニーであり、そうした場にはそれにふさわしい服装というものがある。いやそれ以前の問題として、愛馬の出走に際しぞんざいな服装でいることは、命を賭して走る馬に対し礼を失する行為に思えてならない。

ファンについても同じことが言える。命の次に大事な金を賭ける場に臨むにあたって、軽々しい服装では大勝利など夢のまた夢であろう。Tシャツにジーンズという格好では、首尾よく帯封をせしめても、それをしまう場所がないではないか。

戦前の競馬ファンは、中折れ帽子をかぶって競馬場に足を運ぶのが常であった。身なりを整える仕上げとして、帽子を日常的にかぶっていた時代のことである。今では日本ダービー当日の馬主席くらいでしか見ることのできぬ光景だ。

当時の競馬場では、馬主エリアでなくとも、ネクタイもしくは袴の着用が義務づけられていた。それで競馬場周辺には、貸しネクタイや貸し袴の店が繁盛していたとも聞く。今も各競馬場の馬主受付には貸しネクタイコーナーがあり、貸し出し簿をチラ見する限り思いのほか利用頻度は高い。

Tie  

最高の格式を誇った天皇賞ともなれば、新品の紋付袴を用意する馬主もいた。むろん、表彰式に対する配慮である。すると「あの馬主は式服を用意しているから勝負気配だ!」などという裏情報が場内を駆け巡ったりもしたという。

昨秋、社台グループのパーティーで挨拶に立った元衆院議長・河野洋平氏が、むかし天皇賞に地方出身馬が勝った時、長靴履きで表彰台に上がった関係者がいたエピソードを紹介した。その上で、「最近は中央はもちろん地方競馬でも関係者の身なりがきちんとしてきた。こういうことの積み重ねで、競馬が良くなり、ひいては天皇陛下の競馬場御行幸が実現することにもつながった」との祝辞を述べられた。乾杯直前ということもあり、若干聴衆は飽きていた感も否めなかったが(笑)、私は氏の見解に大きく頷く。ファンや関係者の外見がその競技のイメージに与える影響は、決して小さくはない。

「長靴」と言えば、築地で働く人たちは長靴に手カギやら懐中電灯やらを入れて歩いているものだが、土曜になると折り畳んだ競馬新聞を突っ込んでいる姿をやたら目にする。これはこれでなかなか格好が良いですね。市場内において長靴はソシアル。むろんドレスコードに問題はない。

Chukiji

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2013年4月28日 (日)

牛タンリベンジ

11時20分発走の東京4レースは障害のオープン。ただ一頭62キロを背負わされたスナークスペインが、後続を5馬身突き放す強さを見せた。東京3100mを3分25秒1は速い。

4r 

京都でGⅠがある影響で、ここで東京は昼休みに入る。

「11時半前にメシを食えと言われてもなぁ……」などと文句を言いつつ、言われたら腹が減ってきた気がするので、イソイソとフジビュースタンド西側のフードコートへ。実は、永く名物として愛された「きねうち麺」の店が潰れて、そこに牛タン専門店『牛たん仙台なとり』が新規オープンしたのである。思えば、先週の大井で食べた仙台牛タンがガッカリの連続だった。大井の仇を府中で取るのも悪くあるまい。

Natori  

牛たん、とろろ、麦飯、お新香がセットになった「牛たんとろろ定食」は牛タンの枚数によって値段が異なる。2枚で900円、3枚は1200円、4枚だと1500円。高いと感じるでしょ。でも、一昨日も書いたように、ホンモノの仙台牛タンなら高いのは仕方ない。ただ、定食はお盆に乗せられて渡されるので、自席に持ち帰るのには適さない。

Tan 

だが、そういう向きには、写真の「牛タン重」がある。タレの浸み込んだ麦飯に、牛タン3枚と白菜の浅漬け、そしてなぜかコーンが乗っている。これで1000円。「とりかつ3連単(500円)」を絶賛した翌日に食べるから値段に抵抗を感じるのかもしれないけど、その味は文句なし。牛タンの厚さ、歯ごたえ、溢れ出る肉汁、そしてタレの麦飯への浸み具合、どれも悪くない。これぞ仙台牛タン!と膝を叩きたくなる。先ほど「なぜか」と書いたコーンも、“なぜか”美味いのである。次回は定食を食べぬわけにはいくまい。大井のリベンジは、今ここに果たされた。

経営元はフジビュースタンド3Fにも出店している「ペッパーランチ」らしい。タレに漬け込んだ牛タンを、溶岩を使って焼くので柔らかく仕上がるという。ふーむ。奥の厨房部分に、シューシューと湯気を立てる溶岩が隠されているのだろうか。残念ながらそこまでは確認できなかったが、溶岩があろうがなかろうが、焼き上がりが柔らかければ文句はない。

ひとしきり満足したところで迎えた5レースは、芝1800mの未勝利戦。2番人気のロンギングゴールドが、馬場の真ん中を力強く伸びて嬉しい初勝利を挙げた。

5r 

ジャパンカップ当日のデビュー戦は、のちの弥生賞を勝つカミノタサハラの2着。2戦目で敗れた相手フェイムゲームは、のちの京成杯勝ち馬。つくづく相手が悪かった。今年は6月に入ってもずっと東京開催が続く。この勝ちっぷりは覚えておこう。

 

 

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2013年4月27日 (土)

とりかつ三連単

昨秋の「東京競馬場グルメグランプリ」で得票率部門第3位だったのが、『馬そば深大寺』の「とりかつ三連単」。

Torikatsu  

もともと「とりそば」が名物の店である。ゆえに、グルメグランプリ開催中でも、私はマイペースに「とりそば」ばかり食べていた。「とりそば」でじゅうぶん美味いのだし、そのテのイベント用に考案されたメニューには、ガッカリさせられることも多い。

だが、年が明けたフェブラリーSの日だったか。知り合いのエージェントが、「とりかつ三連単は食べたましたか?」「えっ? まだ?」「いやあ、あれはヒットですよ」と地下馬道でまくし立ててくるのである。

このエージェント氏は卓越した味覚の持ち主でもあり、カレーうどんに対する造詣も深い。それならばと食べて見ると、なるほど美味いではないか。しまった。これを食わずに東京競馬場での数週間を過ごしたと思うと、ちょっともったいない気さえする。吉野家の牛丼で済ませた、あの日の俺の昼飯を返してくれ!   そう叫びたくなってきた。

美味い上に、安い。カレーうどんにチキンカツが3枚乗って500円である。チキンカツが競馬場では縁起食であることに今更多言は要すまい。『鳥千』のフライドチキンも、浦和のジャンボチキンカツもしかり。すなわち「とり(取り)カツ(勝つ)」である。競馬場で食べるならトンカツカレーうどんよりも、チキンカツカレーうどんであろう。

むろん、トンカツカレーうどんの美味さも私は知っている。銀座5丁目『海ごはん』のカツカレーうどんは、厚さ3センチはあろうかという巨大なロースかつが、これまた巨大な丼に盛られたカレーうどんに、どどーんと鎮座している壮大な一杯。目の前に出されると、何やら神々しささえ覚える。

「カレーうどん」という珠玉のコラボがあり、さらに「カツカレー」という奇跡の組み合わせがあるのならば、それらを統合した「カツカレーうどん」が美味くないはずながい。カリッと心地よい食感の衣と、いくぶんふやけながらも、カレーの旨味を吸った衣の微妙なバランスを楽しみつつ、ずずーっとうどんを啜る。これに勝る幸福感は、果たしてほかにあるだろうか。ちょっと考え込んでしまう。

Umigohan

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2013年4月26日 (金)

馬単と牛タン

「ウマタンってのは、馬のタン(舌)のことか?」

Ooi  

大井のパドックでそう聞いてきたのは、初めて競馬場にやってきた知人。「ここはウマタンにするか……」。隣に立つベテランたちの、そんな会話が聞こえてきたのであろう。もちろん、競馬場で「ウマタン」と言えば、馬の舌ではなく「馬番連勝単式」の略称。でも、そんなことを考えてたら、なにやら牛タンが食べたくなってきた。

Don  

この開催では仙台牛タンのお店が臨時出店している。実は一昨日「牛タン丼(\900)」を試してみたのだが、仙台牛タンとはまるで異なる薄切りの牛タン3切れがご飯に乗った代物が出てきて、たいそうがっかりした。ご飯にタレもかかっていない。仙台牛タンは、やはり厚切りされた牛タンの柔らかさと、その厚みの割にサクッと心地よくかみ切れる歯触りを楽しむものであろう。大量の肉汁が口の中にあふれ出る愉悦を楽しめるのも、肉厚だからこそである。

なので今宵は「塩タン串(\500)」にした。松屋の牛めし(\380)と組み合わせても、牛タン丼より安い。

Kushi  

ところが、このタン串がたいそう硬いのである。5日前に焼いたまま放置しておいたのかと思うほど。まるで歯が立たない。本場馬入場を横目に見ながら食べ始めたのに、レース発走までに食べ終えることができないのだから推して知るべし。顎の鍛錬にはもってこいだが、知らぬ人がこれを「仙台牛タン」だと信じて食べているかもしれないと思うと、ちょっと心が痛む。

Mise  

ただし、仙台牛タンが比較的高価なメニューであることは理解して欲しい。なにせ牛一頭から舌は一本しか取れない。しかも、実際に焼きタンとして調理されるのはタン内部の柔らかい部分だけで、硬い先端部分などはテールスープや煮込みに使われる。さらに下味を付けてから数日間寝かせる必要があるなど、手間もかかる。むろん、そのぶん美味い。本物は……ということだが。

馬タンというのは食べたことがないが、巷では広く食べられているようだ。だけど、普段からハミを越してベロベロ遊んでいる馬の舌を見慣れているせいか、あれを食べようという気はおきませんね。食べるよりは、ぐぐっと縛り付けてやりたい衝動に駆られる。そういえば、あさっての天皇賞に出走するトーセンラーは舌を縛って出走するそうだ。こうすることによって、ハミ受けが良くなり、自在性が増す。これは勝負気配であろうか?

大井の牛タンに話を戻す。そもそも、横浜ナンバーの車が「仙台名物」と銘打って販売している姿は興醒めも甚だしい。 先日の「浪江焼きそば」は練馬ナンバーだった。どうせやるなら、本物を呼んで欲しい。

Number  

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2013年4月25日 (木)

【訃報】エアグルーヴ

稀代の名牝エアグルーヴの死が伝えられてからまる1日が経った。大井競馬場でのちょっとした世間話でも、彼女の話題になると尽きることがない。

Air00  

かつて関西に住んでいたとある競馬記者は、「凄く強かったはずなのに、なぜか負けた印象ばかり残ってるんだよな」と呟いた。

Air01  

なるほど。私はその言葉に頷く。彼女はGⅠレースを10戦しているが、勝ったのはオークスと天皇賞のふたつしかない。彼女にとって地元であるはずの関西地区では4戦全敗。しかも、「まず負けない」と言われた秋華賞の大敗は、単なる1敗分を上回るインパクトを持つ。

Air05  

私とて彼と同じ思いがするのである。オークスでの勝ちっぷりから「歴史に名を残す最強牝馬」であることを確信し、私自身、京都、阪神への遠征を繰り返した。秋華賞の敗戦で受けたダメージは、いまも心の奥底に傷跡を残している。期待が大きかったせいもあるが、何より私自身まだ若かった。「強い馬が負けるはずがない」などというおとぎ話を信じることができる最後の年だったのかも知れない。

Air03  

だが、1997年の秋の天皇賞は、そんなダメージを忘れさせてくれるレースだった。検量室前に戻ってきた武豊騎手の紅潮した表情は今も忘れぬ。

「すごい高い能力!」

「すごい闘志!!」

「いや、ほんっとに凄い!!!」 

数々の名馬に騎乗した名手をこれだけ興奮させたエアグルーヴは、もはや「歴史に名を残す最強牝馬」ではなく「歴史に名を残す最強馬」であろう。エアグルーヴのすべてが凝縮されたレースと言っても過言ではあるまい。秋華賞とは逆の意味で、単なるGⅠ1勝の価値にとどまらぬものがる。

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当時、天皇賞(秋)→ジャパンC→有馬記念というローテーションをこなすことは、古馬一線級でも「過酷」とされていた。前年には、サクラローレル、マヤノトップガン、マーベラスサンデーのいわゆる「古馬3強」が、揃いも揃ってジャパンCを逃げるという醜態をさらしたばかりである。だがエアグルーヴは、敢然と王道路線に挑み、1着→日本馬最先着の2着→コンマ1秒差の3着と主役を張り続けた。彼女がひたすらファンに愛されたのは、この活躍があったからであろう。そういう意味で、彼女は「最強牝馬」ではなく「最強馬」と呼ばれるに相応しい。

Air04  

エアグルーヴが天皇賞を勝った1997年の桜花賞馬キョウエイマーチも、やはり出産直後のアクシデントで2007年にこの世を去っている。その時誕生したネオユニヴァースの牡馬が日曜のオアシスSに出走予定のインペリアルマーチだ。エアグルーヴの最後の産駒が、果たしてどんな優駿に育っていくのか。かつて母の“追っかけ”をしていた身として、見守り続けて行きたい。

 

 

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2013年4月24日 (水)

ジェネラルコンビvsタイパラトリオ

南関東はいよいよ牡馬クラシックの開幕。突如東京を襲った春の嵐であいにくの道悪競馬だが、それでも11頭の精鋭3歳馬が顔をそろえた。

Rain_2  

この羽田盃は、ごく大まかに言えば

  ジェネラルコンビ

    vs

     タイパラトリオ(タイムパラドックス産駒トリオ)

という構図。「ジェネラル丼」で決着した京浜盃で、3、4、5着と枕を並べて討ち死にしたタイパラトリオが、ノーザンファームが誇る2強の一画を崩せるか。これがレースの焦点と言っても差し支えあるまい。

2010年生まれのタイムパラドックス産駒で馬名登録されているのは、中央地方を含めておよそ50頭。その獲得賞金ランキング上位3頭は、実は羽田盃に出走のタイパラトリオなのである。JRAサイアーランキングでは78位に低迷するタイムパラドックスが、地方では11位と躍進するゆえんがここにある。こうなったら羽田盃も勝って、さらに上位を狙いたい。

トリオの筆頭格ソルテは、重賞2勝の実績馬。今日と同じ道悪だったニューイヤーCでは、先週のクラウンCの覇者アメイジアを9馬身も千切り捨てている。

Solte  

同じく重賞2勝のインサイドザパークは、京浜盃ではトリオ最先着の3着。道悪(3,2,0,0)の数字はなんとも不気味だ。

Inside  

盛岡・南部駒賞の勝ち馬オグリタイムは、3代母にあのホワイトナルビーが登場する血統の持ち主。吉原寛人騎手は先週のクラウンCに続く重賞なるか。

Oguri  

しかし、そんなトリオを嘲笑うかのごとく、余裕の4馬身差勝利を収めたのは、ジェネラルコンビの片翼・アウトジェネラル。京浜盃2着からの逆転で見事1冠目を奪取した。

Out  

諸事情あって京浜盃は佐藤裕太騎手が手綱を取った。結果、3馬身も離された2着。御神本訓史騎手に乗り替わった今回は、京浜盃と同じ力関係と見るわけにはいかない。なにせ今年未勝利騎手からリーディング首位騎手への乗り替わりである。それは分かっていた。分かってはいたが、まさか逆に4馬身もの差をつけて勝ってしまうとまでは思わなかった。そこはかとない切なさまで覚える。

普段は調教を任されている佐藤裕太騎手にすれば、京浜盃で実戦の手綱を通じて得るところは大きかったに違いない。馬体の張り。力強い踏み込み。そして古馬のような落ち着き。今思えば、レース前の調整の段階で既に勝負は決していた。川島正行調教師は、通算5度目のダービー制覇に王手。一画崩しには成功したタイパラトリオも、次は1着が欲しい。

 

 

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2013年4月23日 (火)

新馬が始まる

日本ダービーまであと1か月以上もあるこの時期とはいえ、生産者やPOGファンの中には、既に2歳戦のことで頭がいっぱいという方もいらっしゃるのではないだろうか。

Campany  

実は私もその一人。そもそも今年はJRAはもちろん、地方にも所有3歳馬はいない。愛馬クラブに出資している一頭にJRA所属の3歳牡馬がいるにはいるが、今日この時点で未勝利に喘いでいる。今週末にも未勝利戦を勝ち上がり、連闘でプリンシパルSを勝てる可能性があるのならまだしも、ダービーへの興味はいち競馬ファンのそれに留まらざるを得ない。

共同で所有する2歳馬が道営の厩舎に入厩したとの連絡が届いた。調教師によれば、環境の変化に動じることもなく、すぐに早いところを始められそうとのこと。何よりではないか。新種牡馬カンパニーのオトコ馬。普通に考えればダートよりは芝向きであろう。なんとか認定を勝ち上がって、函館でJRAにチャレンジしたい。

   という具合に、がぜん気持ちは2歳戦へと、ひいては来年のクラシックへと向かってしまう。青葉賞どころではない。

折しも、明日開幕の道営競馬で今年最初の2歳戦がスタートする。注目はやはり初日に組まれたスーパーフレッシュチャレンジ競走。当面のライバルの走りが気にならぬはずがない。私のカンパニーは5月中旬のデビューを目指すようだ。入厩からデビューまで、これ以上の楽しみが続く日々を、私はほかに知らない。

楽しみと言えば、浦河の牧場に預託している繁殖に初子が生まれました。おかげさまで牡です。

お父さんは今年2歳産駒が競走デビューするスウィフトカレント。となれば、やはり2歳戦でのスウィフトカレント産駒の評価が気になる。なるべくたくさん勝って欲しい。でもウチのカンパニーが一緒に走るときは、勝たないで欲しい。自分勝手で申し訳ないけど、馬主なんてそんなもんです。

Monbetsu

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2013年4月22日 (月)

金欠めし

4月としては記録的な寒さを記録した日曜日から一夜が明け、開催の初日を迎えた大井競馬場。昨日ほどの寒さではないものの、やはり日が落ちると冷えてくる。寒気の中でも長っ尻のヤツが、まだ居座っているのかもしれない。

Gate  

なので、今宵はおでん。注文したのはジャガイモと厚揚げ。どちらもひとつ100円。昆布はオマケについてきた。だからこれで200円ということになる。安い。

Oden1  

関東では、おでんダネとしての厚揚げの人気はいまひとつのようだが、私には欠かすことができぬ一品。大豆成分が濃いにがり豆腐で作った厚揚げは食感がしっかりしている上、ダシが浸み込むと一段と風味が増す。ダシにうるさい関西ではかなりメジャーなおでんタネだというのも、厚揚げ好きとしては心強い。

おでんの厚揚げは大きく二つのタイプに分かれる。硬めに揚げて厚揚げそのものの香ばしさや歯応えで勝負するタイプと、柔らかめに揚げてダシをたっぷり吸わせるタイプ。ここ大井『 びっぐうぃんど』は前者だが、実は私は柔らかいのが好き。まあ、そこは好みだから文句は言えない。

Oden2 

さて、そうこうするうちに、厚揚げもジャガイモも昆布もすっかり食べ終わり、事前に購入しておいたセブンイレブンの「塩むすび」のスタンバイも完了した。

Oden3 

これをどうするか。ダシの残された器に投入するのである。するとたちまち即席の雑炊の完成。以前、モツの煮込みに投入して「モツ丼」にしてみたことはあるが、今日はあまりに寒いのでおでんでやってみた。

Oden4_2  

雑炊まで楽しんで都合300円の夕食。ちょっとした事情があって近年稀に見るほどの金欠に陥った我が身には、これくらいがちょうどいい。それにしても……、どっかに15万円落ちてないかなぁ……。

 

 

 

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2013年4月21日 (日)

頑張れチチカステナンゴ

昨日東京の新緑賞で1番人気に推されたのは桜花賞馬ダンスインザムードの息子・マンインザムーン。

Man  

直線では馬場の良い内ラチ沿いをぐいぐい伸び、2勝目が目の前に迫ったその瞬間、外から飛んできた2頭に交わされ3着に敗れた。

9r_2  

チチカステナンゴの産駒が当初の評価ほど勝てない。今日までにJRAで勝ち上がった産駒は、このマンインザムーンを含めて10頭。うち2勝を挙げたのはダイワブレイディのみで、重賞勝ちはおろか、特別戦すら勝てていない。記念すべき初特別勝利を期待されたマンインザムーンであったが、何の不利もないレースぶりで敗れ去った。騎手も力負けを認めている。

この世代のチチカステナンゴの種付け頭数は152頭。しかもその相手には、冒頭のダンスインザムードを始め、女傑ダイワスカーレット、桜花賞馬キストゥヘヴンといった、社台グループの錚々たる面々が居並ぶ。種牡馬のPRのため、初年度産駒にはとにかく活躍してもらわなければならないから、良血牝馬が集まったこと自体は不思議ではない。それが結果として期待外れに終わることも間々ある。「種牡馬導入は失敗の連続」などと、訳知り風のコメントを聞くこともあろう。

それでも、これほどの惨状になるとは関係者も想像していなかったのではありまいか。社台の失敗例として挙げられるカーネギーやエリシオだって、少なくとも初年度の産駒はJRA重賞を勝っている。「種牡馬導入は失敗の連続」でも、初年度産駒はある程度の成績を残すものだ。

チチカステナンゴが社台スタリオンでデビューした年の同期種牡馬は、決して「大物」とは言えぬ内国産のメイショウサムソンに、アドマイヤジュピタ、アドマイヤメインの3頭。しかも、翌年も海外からの導入はなし。次代のエース候補であるとの自信の表れにほかならない。

そもそもチチカステナンゴがフランスで種牡馬入りした当初は目立った存在ではなく、交配牝馬にも恵まれなかった。なのに2頭のフランスダービー馬を出してみせたから、周囲は色めいた。

「それをサンデー系優良牝馬に交配すれば、もっと成功を収めるに違いない」

私だってそう考える。だから「種牡馬導入は失敗の連続だから」などと知った顔をするつもりはないし、マンインザムーンの募集価格が1億円だったことを思い出して「ザマミロ」などという資格もない。

ただ、困惑くらいはさせてほしい。チチカスでもダメなのかもしれない……。じゃあ、この先日本の種牡馬事情はどうなるのか。不安は募る。

サンデー系繁殖牝馬があふれる我が国の種牡馬事情の将来を憂う思いは、この10年以上なんら変わらない。間もなくデビューを迎える2世代目の2歳産駒には、キストゥヘヴンやスティンガーのような重賞ウイナーや、クルーピアスターやマストビーラウドといった重賞ウイナーの母が勢ぞろいしている。この中に私の不安を払拭してくれる一頭がいると信じたい。昨年14歳の若さで急死したチチカステナンゴ本人も、きっと同じ思いであろう。

Chichi

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2013年4月20日 (土)

戸崎騎手ワンデーファイブ達成

待ちに待った春の東京開催は、戸崎圭太騎手のワンデーファイブで鮮烈に幕を開けた。

8r 

JRAへの移籍を果たしてから間もなく2か月。「1日4勝」なら、3月16日の中山、3月24日の中京、そして4月6日の中山と3度に渡り達成している。それだけでもじゅうぶん凄い。それが、東京に舞台が移った途端、いきなり壁を破ってみせたのだから、なおのこと凄い。

これで今年32勝。関東では内田博幸騎手と蛯名正義騎手に次ぐリーディング3位につけている。注目すべきはジャスト2割を誇る勝利であろう。1割でも優秀と評されるこの世界。2割超えなら絶頂時の武豊レベルにも匹敵する。人気馬が揃っているのは事実だが、1番人気が必ず勝つのが競馬というわけでもない。

32勝の内訳をみると。ダート22勝に対して芝が10勝。もとより地方のダートで鍛えられた技術。これは頷けるものがあろう。

一方で距離別では、1600m以下10勝に対して、1800m以上が22勝。今日の5勝の中にも芝2400mとダート2100m戦の3鞍が含まれている。どちらも地方競馬にはほとんど組まれない長距離レース。なのにペース判断に苦労するようなそぶりは微塵も見せない。長距離の重要レース目白押しのこのシーズン、たとえ人気薄であっても目が離せぬ存在になりつつある。

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調教VTRなどに映るトレセンでの戸崎騎手は、赤いぼんぼりが付いた青帽をかぶっていることが多い。これはもちろん地方在籍時の彼の騎手服「青、赤星散らし」から取ったデザイン。いや、今も変わらず南関東で騎乗する彼の姿を見れば、「地方在籍当時の」という断りなど不要か。この服色は「騎手としての大目標である的場文男騎手の赤と、内田博幸騎手の青を組み合わせた」のだという。

高い勝率で勝ち星を量産する戸崎騎手だが、重賞となると、移籍後12戦も乗っていながら、未だ未勝利。いま思えばフラワーカップのハナ負けはつくづく惜しかった。そういえば内田博幸騎手がJRA移籍後に初めて勝った重賞レースは、明日行われるフローラS。果たして戸崎騎手は、目標とする大先輩に続くことができるか。フラワーカップでハナ差惜敗のエバーブロッサムとのコンビで、東京の2000mに挑む。

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2013年4月19日 (金)

博多のうろん

先日博多を訪れた時の話を続ける。

博多はイカも美味いけど、うどんも美味い。普段は讃岐の喉越しを好む私だが、せっかく博多に来たのだからと『かろのうろん』の柔らかいうどんを味わってみた。

Uron1  

「バリカタ」や「ハリガネ」という茹で加減の言葉が象徴するように、博多のラーメンは固めの麺を注文するのが通とも言われる。その理由は、せっかちな博多っ子は長い茹で時間を待てぬからだとも聞くが、ではなぜ博多のうどんはこんなに柔らかいのだろうか。

そんなことを家族としゃべっていたら、博多っ子とおぼしき隣の客が教えてくれた。注文してから客を待たせることのないように、あらかじめ茹でた麺を温め直して出すのが博多流なのだという。つまり、ラーメンが固いのもうどんが柔らかいのも、結局はせっかちな博多っ子気質が生んだ文化。源流が同じなのに、まったく違う方向にベクトルが向くのは、なかなか興味深い。

小麦粉に塩水を混ぜて11時間寝かしたものを、足で踏むこと30分。それをさらに1日半ほど寝かす。麺切りしたら、もう茹でてしまう。茹で時間は24分。これは長い。讃岐の倍はあるのではないか。茹でた麺は冷蔵庫に保管され、お客の注文が入るごとに温めて出される。

だが、冷蔵庫に保管するといっても、30分が限度だそうだ。それ以上経つと酸化してしまって客に出せない。

「じゃあ、30分を過ぎた麺はどうするのですか?」

「捨てるしかなかとね」

そう聞けば、軽々しく「茹で置き」などと蔑むことなどできない。

これだけの手間をかけ、なおかつ地場の麦を地場の製粉会社で製粉した粉にこだわり続けながら、一杯370円は安い。客に喜んでもらいたいと思う努力が、固かったり柔らかかったりする独特の麺の文化を育むのであろう。“うろん”一杯に博多の底力を見たような気がした。

Uron2

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2013年4月18日 (木)

ショウガとワサビの狭間で

先日博多を訪れた夜のこと、友人と食事を共にした席にイカの姿造りが運ばれてきた。いわゆる「呼子のイカ」である。

Ika 

くねくねとゲソをくねらすその姿に大騒ぎする娘たちをよそに、現金な私はとにかく新鮮な今のうちにとばかりに箸を伸ばす。透き通ったその身はほどよく甘く、コリコリとした歯応えは痛快そのもの。美味い。

生イカの味わい方は2種類に分かれる。寿司ネタに使うような場合は、もう少し寝かせてイカの甘味を最大限に引き出すのだろうけど、活き造りは歯応えを楽しむもの。せっかく遠出してきたのだから、ここでしか味わえない歯応えを味わいたい。

ところが、周りの連中が何かを気にし始めた。何かと訊けば、「なんでワサビじゃなくてショウガが添えられているんだ?」という。

なるほど、生イカの味わい方には「甘味派」と「歯応え派」のみならず、「ワサビ派」と「ショウガ派」もあった。これだけ派閥が乱立するのも、それだけ日本人の食卓に馴染み深い食材であることの裏返しでもあろう。

私は日本全国でイカを食べ歩いているわけではないのだが、函館で食べるイカ刺しにはショウガが添えられていることが多いような気がする。だけど、馴染みの札幌の寿司屋で食べるイカ刺しには、いわゆる山ワサビが添えられたいたはず。そういえば、むかし岩内で大根おろしと一緒に食べたこともあったか。とにかく、北海道ではイカ刺しにワサビという組み合わせはあまり見かけない。

一方で、東京近辺ではワサビが多いような気もする。築地の寿司屋に聞いてみると、やはりイカの鮮度に関係があった。ワサビ醤油よりもショウガ醤油の方が素材の甘味を際立たせる特徴がある。歯応えは良いが甘味にやや欠ける新鮮なイカを食べるならショウガ。逆に鮮度は劣るが熟成が進んで甘味が引き出されたイカを食べるならワサビ。北海道や福岡でワサビが使われないのはそのためではないか?   というのが、その店の大将の仮説である。

ふむふむと頷きながら、長崎産アオリイカの握りを食べると、なんとなく普段とは味わいが違った。なんであれイカは美味いですね。ところで、イカと言えば大井に在籍していたイカタロウ。ところがなんと、最近になって登録抹消されてしまったらしい。残念。

Gesso

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2013年4月17日 (水)

吉原寛人騎手が南関重賞初制覇

SⅢクラウンカップを制したのは5番人気のアメイジア。平和賞、ニューイヤーカップ、ともに2着に惜敗したその憂さを、一気に晴らす4馬身差だった。

Ame 

川崎1600mといえば、1位入線した暮れの全日本2歳優駿と同じ舞台である。だが、あの時は、残念ながら騎手が乗っていなかった。今回はちゃんと騎手を背に乗せたまま1着ゴール。カラ馬での1位入線をただ笑うだけはいけない。それ以来、突然強くなったギャロップダイナの例もある。

Ame2  

吉原寛人騎手は金沢所属の29歳。地元では百万石賞や北國王冠など数々の重賞を制した名手だが、南関東の重賞を勝つのは初めて。派手なガッツポーズも、その気持ちはよく分かる。優先出走権を得た東京ダービーに乗ることもルール上は可能だ。事実2年前にはナターレとのコンビで東京ダービーに出走。単勝万馬券だったにもかかわらず、4角先頭の積極的な競馬で6着と健闘している。

そんなことを考えていたら、このレースが「東京ダービートライアル」であることに、あらためて気づかされた。3歳クラシック第1弾の羽田盃はまだ行われていない。JRAで皐月賞の前の週に青葉賞が行われるようなものか。違和感……、と呼ぶにはいささかためらいもあるが、羽田盃の色彩が微妙に失われたような気もしなくもない。

1番人気の牝馬スマートパンドラは11着に大敗。意外にも思えた1番人気は、京浜盃敗退組よりも、JRA新馬勝ちの能力と、アジュディミツオーの妹という血統背景に賭けたいと思う人が多かったのであろう。これひとつとっても、羽田盃1週前の東京ダービートライアルらしさが見て取れる。

3か月ぶりの実戦で15キロ増。ただ、太目感よりは、パドックからかえし馬まで落ち着きの無さが目立った。やはりそこは、3歳の牝馬。難しいところが、顔を出してしまったのかもしれない。

Smart

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2013年4月16日 (火)

テラザホープ9連勝

ついにこの2頭の直接対決が実現した。

Vision  

……といっても、オルフェーヴルとゴールドシップの話ではない。デビュー2戦目から8連勝中のテラザホープと高素質馬ロンドンアイがついに激突。川崎10レース・エイプリルスター賞は、B2クラスの条件戦とはいえ、間違いなく今日一番の注目レースであろう。

テラザホープはクロフネ産駒の4歳牡馬で、通算成績は(8,1,0,0)。唯一の敗戦はデビュー戦の2着だけで、一貫して今野忠成騎手がその手綱を任されてきた。

Teraza1

ロンドンアイも同じ4歳の牡馬で、通算成績は(6,1,0,2)。数字だけならテラザホープに劣るように見えるが、クラシックに足を踏み入れての成績だと思えば、恥ずべきところは何もない。現に1番人気。一度だけ、吉原寛人騎手が代打を務めたことがあるにせよ、残る8戦はすべて戸崎圭太騎手の手綱。そして今回も、しっかり“JRAの”戸崎騎手を確保してきた。

London  

8枠に両馬が並んだスタートから、いきなり馬体をぶつけ合わんばかりの激しいポジション争い。前につけたロンドンアイは3番手の外。それを前に見る形で4~5番手にテラザホープ。一貫して先行してきたテラザホープには意外な展開にも思える。あるいは、このクラスのペースについていけないのだろうか?

London2 

3コーナーから捲って出たロンドンアイが直線入口で先頭に立ち、後続を引き離しにかかる。テラザホープはまだ4番手。勝負あったか……と思われたその瞬間、思い直したようにギアを入れ替えたテラザホープがグングン伸びて、余裕たっぷりにロンドンアイを差し切ってしまった。あっさりと9連勝達成である。

Teraza  

前走が辛勝だっただけに、私も半信半疑だったところがある。過去9戦の平均が187円だった単勝オッズが400円もついたのだから、大方のファンも同じ思いであろう。

だが乗っていた今野騎手の見立ては違った。行きっぷりの悪かった前走とはまるで違う手応えで、ちょっと促せばハナにも立てそうだったという。「これでも目一杯の競馬ではない」とは今野騎手。10連勝の可能性は高いと見てよさそうだ。

Teraza3  

 

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2013年4月15日 (月)

ミヤサンキューティの母

先週号の「週刊競馬ブック」に、大井所属のミヤサンキューティの特集記事が掲載されていた。読まれた方も多いと思う。

Cuty1  

ミヤサンキューティはクロフネ産駒の5歳牝馬。優駿スプリントと東京シンデレラマイルの2つの南関東重賞タイトルを持つ。前走の東京スプリントでは、果敢にJRAの牡馬一線級に挑み6着。掲示板に載ることは叶わなかったが、大外枠を克服しての南関東勢最先着という結果は高く評価されてしかるべきであろう。

そんなミヤサンキューティだが、冒頭の「競馬ブック」の記事では「父クロフネ譲りの芦毛の馬体に、母とよく似た俊脚」と紹介されていた。父クロフネは誰もが知るところだが、「母」が誰なのか、どんな成績だったのかについての言及が無かったのがちと残念。おそらくは文字数の都合だろうが、僭越ながら補完の意味も含めて母イノセントニンフについて紹介しておきたい。

Ino  

熱心な大井のファンならば、イノセントニンフを覚えているだろう。荒尾5勝の戦績をひっさげて大井に移籍してきたのは2001年の正月のこと。そこから内田博幸を背に破竹の4連勝。しかも、4馬身、2馬身半、5馬身、3馬身とすべて圧勝である。当然ながら一躍注目の的となった。

一方で、間隔を開けないとレースに使えないという一面もあり、その後は勝ったり負けたりのレースが続く。結果、大井では9勝を挙げたものの、重賞タイトルに手が届くことはなかった。が、その勝利の中には、のちに重賞で活躍するオーミヤボレロやストロングゲットを破ったものが含まれていたことについては、特筆しておきたい。

そんなイノセントニンフとクロフネの間に生まれたのが、芦毛の牝馬ミヤサンキューティ。クロフネの産駒は芝、ダートを問わず堅実に走ることで知られるが、なぜか大活躍するのは牝馬に限られる。カレンチャン、スリープレスナイト、ホエールキャプチャのG1馬はもとより、12頭いるJRA重賞ウイナーのうち10頭までが牝馬で占められているのである。地方所属とはいえ、ミヤサンキューティもクロフネの代表牝馬になる可能性を秘めていると思いたい。

オーナーによれば、このあとはしばらく放牧に出して、7月のスパーキングレディーカップを見据えているとのこと。ミヤサンキューティは昨年もこのレースに出走して5着だが、地方馬では最先着だった。

南関東限定重賞を使おうと思えば使えるのに、それでも敢えて強いJRA勢に挑まんとするその姿勢には、実に清々しいものを覚える。むしろ真逆の姿勢が目に余る昨今はなおのこと。「競馬ブック」の記事には「南関東のラブミーチャンを目指す」ともあった。そうでなくちゃいけない。

Cuty2

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2013年4月14日 (日)

ローエングリンのダービー

混戦が伝えられていた皐月賞は、昨年の2歳チャンプ・ロゴタイプが1番人気に応えて完勝。父・ローエングリンが除外の憂き目にあった皐月賞のその憂さを、父に成り代わって子が晴らしてみせた。

Roen 
 
ミルコ・デムーロ騎手は、渡辺正人、岡部幸雄、武豊に並ぶ皐月賞3勝目。短期免許の期間が過ぎる日本ダービーでは、弟のクリスチャン・デムーロがロゴタイプの手綱を取ることがすでに決まっている。気になるのは400mの距離延長。ミルコは「折り合いがつくので大丈夫」と太鼓判を押した。あとはやはり「運」ということになるのだろうか。

「運」ということで言えば、父のローエングリンは実に運がなかった。皐月賞では2/7の抽選に外れて除外。その後賞金を追加して臨んだ日本ダービーでも、同賞金の4頭と3つの出走枠を争う抽選に、あろうことか敗れてしまう。「ダービーは運」。競馬の格言は重い。皐月賞とダービーの代わりに走った若草Sと駒草賞での勝ちっぷりを見て、抽選除外というシステムの理不尽さを思ったのは、ひとり私のみではあるまい。

ちなみにローエングリン除外のおかげで、この年のダービーでハナを切ったのは、田中剛騎手のサンヴァレー。言うまでもなくロゴタイプの調教師である。騎手時代の田中剛騎手は、2度のダービー騎乗経験を持つ。1986年のカツタイフウオーは、23頭立ての22番人気で20着。そして2002年のサンヴァレーは18頭立て18番人気の18着だった。

ローエングリンの不運も、田中剛調教師の騎手当時のホロ苦い思い出も、ロゴタイプの傑出したスピードとデムーロ兄弟の手綱さばきが掻き消してくれるのだろうか。オールドファンにとっても楽しみの広がるダービーになりそうだ。

Roen2

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2013年4月13日 (土)

重賞級の非重賞競走

先週日曜の中山メイン「春雷S」は、芝1200mのオープン特別だった。

Shunrai  

「オープン」とはいえ   いや「オープン」ならではか   メンバーは低調。出走メンバー16頭を見渡しても、重賞勝ちはヘニーハウンドのファルコンSひとつしかない。だが、これは毎年のことで、高松宮記念が終わった2週間後の実施では仕方のない部分もある。高松宮記念とは縁のなかったスプリンターたちにとっての、サマースプリントシリーズに向けた一里塚。その遥か彼方に、ぼんやりとスプリンターズSが霞んで見えるような、そんな位置付けのレースだ。

その2日後の大井メイン「ブリリアントカップ」は、ダート2000mの準重賞だった。出走16頭のうち半数にあたる8頭が重賞ウイナーという豪華メンバーで、重賞5勝のマズルブラストを筆頭に東京ダービー馬や羽田盃馬の姿もある。出走全馬が獲得した重賞タイトル数の合計はなんと19。「重賞級の豪華メンバー」という声があちこちから聞こえてきたのも、この数字を見ればなるほど頷ける。

しかし、最近の南関東では、この「重賞級の豪華メンバー」というフレーズを耳にすることが増えたように感じないか。たとえば1月の多摩川オープン。出走14頭のうち重賞勝ち馬が6頭を数えたこのオープン特別でも、「重賞級」のフレーズがあちこちで飛び交った。

メンバーが良いのは決して悪いことではない。だが、「重賞級の豪華メンバー」というフレーズが多用されることには若干の違和感を覚える。それはすなわち、重賞級の実力馬が重賞ではないレースに出ていることの裏返しではなかろうか。看板商品たる重賞ウイナーたちを、主催者が有効活用できていないことの現れのような気がしてならない。

「適当な重賞がない」と言うのならば、重賞体系の見直しが必要だろう。金盃から大井記念までの約3か月の間、南関東限定で古馬牡馬混合の中長距離重賞レースは組まれていない。マイルグランプリの秋移行は正しかったのか。短距離に、あるいは牝馬限定に、指向が傾いてはいないか。検証してみるといい。ブリリアントカップが毎年のように「重賞級」になるのは、当然の結果でもある。

逆に適当な重賞があるのにも関わらず、そこに実力馬が出ようとしないのなら、主催者にはある程度の指導力発揮が求められる。準重賞やオープン特別が「重賞級」になるのが決まって交流重賞の前後であることは、大いに気になるところでもある。

さて、「重賞級」のブリリアントカップを勝ったのはフォーティファイド。1馬身3/4差の2着はムサシキングオー。図らずも重賞未勝利馬同士の決着となった。えてして競馬はこんなもの。両馬には大井記念の優先出走権が与えられた。次は本物の重賞の舞台が待っている。大井に、もとい多いに盛り上げて欲しい。

Fourty_2

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2013年4月12日 (金)

日本人の幸せ

昨日の大井5レースにコメシャワーという名の馬が出走していた。

Baken 

タップダンスシチー産駒の4歳牝馬の名は、かの非業のステイヤー「ライスシャワー」をもじったネーミングであろうと思っていたら、「人名愛称+シャワー」と登録されていた。ふーむ。まあ、ひとつ上にコメネーチャンというお姉ちゃんがいるので、そう言われればそうですかと言うしかない。

Riceshower

ところで、「究極の料理」というものが仮にあるとすれば、それは炊きたてのコメ、すなわち「ご飯」を置いてほかにあるまい。

美味いモノを突き詰めればコメに行き着く。美味いからこそ毎日食べ続けていられないのである。ところが、この「ご飯」という料理を料理と思っていない店が意外にも多いことに驚く。大衆食堂では先発投手並の重責を担い、懐石料理においてもクローザー的存在のご飯がダメとなれば、すべてがぶち壊しになってしまうという事実を理解していないとしか思えない。

特に老舗と呼ばれるような料亭では、「飯炊き」というと料理人ではなく雑用人とか見習いの仕事という風習があった。さすがに現代においてはそのような習慣はあるまいが、それでも炊飯とその他の料理との間に一線を画す考えを持つ料理人はゼロではないと聞く。パンを美味く焼く料理人に対する評価の大きさと比較するに、ご飯を軽視しがちなのは料理人のみならず、日本国民全体の意識に問題があるのかもしれない。

日本のみならず人類全体を対象にしても、コメの美味さに対する嗜好は絶対的なものがある。欧米人であれその他の種族であれ、一度でもコメの味に接すると、それまでの主食をさしおいて米食に移ろうとする傾向があるのに、その逆というのは決してない。日本人のコメ離れが叫ばれて久しいが、それでもコンビニでのおにぎりの売り上げが増え続けていることひとつをとってみても、日本人がコメ好きであることに何ら変わりはないことを表している。

日本人はコメと共に二千年もの歴史を紡いできた。コメ作りに集中させるため、動物の肉を食べることをタブーにしたほどの固執ぶりで、こんな国は他にない。この歴史が私たちの体の中に根付いている。パンが増えたから食生活が変わったと、単純に言い切ることはできまい。

そんな日本人のひとりとして、八丁堀『鈴木米店』は有り難い存在だ。

お米屋さんが営む食堂となれば、そのご飯が美味くなかろうはずもない。むろん、その味はコメのブランドなどではなく炊き方によって引き出されたもの。つやつやと輝くコメの一粒一粒を味わうにつれ、日本人としての幸せをあらためて噛みしめるのである。

Suzu 

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2013年4月11日 (木)

星旗の一族

大井1レースは3歳馬による1200m戦。勝ったコットンリリーは、ゴールドシップの活躍ですっかり名が知れ渡った出口牧場の生産馬だ。

1r 

単勝2380円の伏兵である。笠松から大井に移籍して4戦は1400mと1600mばかりを使われて結果が出なかったのだが、1200mに舞台を移した途端、強烈な末脚を繰り出してみせた。ひょっとしたら、芝1200mで日本レコードを叩き出した祖母サクラミライの血が覚醒したのだろうか。

サクラミライからさらに母系を遡れば、1931年に輸入された星旗にたどり着く。日本で80年以上も育ってきた由緒あるファミリーのひとつ。クモハタ、ハクチカラといったダービー馬を筆頭に、数多くのクラシックホースや天皇賞馬を輩出してきた。

その星旗から、クレオパトラトマス(月城)→梅城→風玲→アイアンルビー→トクノエイティー→パストラリズム→ポイントフラッグと牝系を下れば、なんとゴールドシップの母の名前が登場する。大井1レースで穴を空けたコットンリリーは、春の天皇賞で本命が予想される昨年のクラシック2冠馬と遠い遠い親戚であった。同じ一族として、天皇賞の露払いを務めてみせたのかもしれない。

あちこちに枝分かれした星旗の牝系が、80年の歳月を経て、繁殖牝馬約10頭という小さな牧場で再会を果たし、同じ放牧地で青草を食んでいるのだと思うと、どことなく微笑ましくなってきやしないか。しかもその産駒たちが、それなりに活躍しているのだから凄い。そういえば、先週の春雷Sを勝ったポインズンブラックも出口牧場の生産馬。天皇賞に向けて、牧場の気運も上がっているように見える。

月旗の娘・クレオパトラトマスは、3歳の春にして天皇賞の前身である帝室御賞典を勝った女傑。クモハタは、カツフジ、ニューフォード、ヤシマドオター、ハタカゼ、ミツハタク、クインナルビー、メイジヒカリといった天皇賞馬の父となり、ハクチカラは自身が天皇賞を勝った。天皇賞と縁の深い一族の血の後押しを受け、ゴールドシップはいったいどんな競馬を見せてくれるのだろう。コットンリリーの快走で、早くも気持ちが2週間後に向いてしまった。

Goldship

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2013年4月10日 (水)

年度代表馬ラブミーチャン

「第24回」とか言っているけど本当は第5回目の交流重賞「東京スプリント」は、笠松のラブミーチャンが直線で楽な手応えのまま抜け出し完勝。重賞13勝目を飾った。

Loveme1 

激しい先行争いを横目に見ながら、いつもより後ろ目の5、6番手を追走。直線で先頭に立った時は、「ちょっと早くないか?」と思わず口をついたが、1番人気のセイクリムズンが置かれ加減になったところで勝負あった。大井1200mでは、昨秋の東京盃に続いて連勝。あまりに完璧なレースぶりは、この舞台のスペシャリストになりつつかることを予感させる。

単勝690円。その配当を聞いて「えっ? そんなにつくの?」とか「買っときゃよかったなぁ」というため息混じりの声が、あちこちから漏れてきた。前走でセイクリムズンに1秒以上も離された完敗だったのから、仕方ない部分もある。だが、思い返せば昨年のNAR年度代表馬。3番人気は馬に対して失礼だったかもしれない。

ラブミーチャンは2009年にも2歳馬として史上初の年度代表馬に選ばれているが、実はこの年度代表馬のタイトル、2007年から昨年まではフリオーソとラブミーチャンしか選出されていないことをご存知だろうか。この6年間、地方競馬の看板は実質的にこの2頭が背負ってきた。フリオーソが引退したいま、ラブミーチャンにかかる期待は大きい。

その期待に応えるかのように、ラブミーチャンは2013年のダートグレードレースを最初に勝った地方所属馬となった。サマースプリントシリーズ3連覇に向け、そして残すは金沢のみとなった地方全競馬場走破に向けて、さらに自身3度目となる年度代表馬のタイトルに向けて、充実した春シーズンとなったに違いない。

それにしてもラブミーチャンが勝つと、競馬場全体が盛り上がる。金沢競馬場の関係者も、JBCでの参戦を心待ちにしていることだろう。スプリント(1400m)とレディスクラシック(1500m)の、どちらを選ぶのかについても、今から気になるところだ。

Loveme2

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2013年4月 9日 (火)

あゆさん

桜花賞を勝った「アユサン」ってどんな意味?

Ayu 

……って話題が、もう少し盛り上がるかと思ったけど、思ったほどではなかった。思いのほか競馬ファンは鷹揚なんですな。ま、少なくとも浜崎あゆみさんのことではない。念のため。

JRAサイトの馬名由来によれば「人名より+呼称」となっている。ふーむ。こんな理由で馬名審査に通る時代になったのですねぇ。アユミチャン、カナエチャン、アカネチャン、ミーコチャン、キリンチャン、ミカンチャン、と「○○ちゃん」シリーズの馬名が珍しくない昨今の事情を鑑みれば、「アユサン」がダメということにはならないか。

大馬主は2歳馬のネーミングで頭を悩ます季節であろう。強そうで、品位があり、原則過去に使われていない名前を、9文字以内で捻り出さなければならない。「もはや、俳句川柳の世界」とため息を漏らす馬主もいる。

その一方で、馬名登録審査が“ザル”と化して久しい。ニュージーランドトロフィーで6着したモグモグパクパクの馬名由来は「よく食べている」とだけある。なんだこりゃ?

しかし、馬名に使える言葉はもはや限界に近いとの指摘もある。「オルフェーヴル」「ジェンティルドンナ」といったフランス語やイタリア語の馬名が増えてきたのは、英語のネーミングが底を尽きかけているからではなかろうか。一部ファンに評判の良くない冠名がいまだに消えないのは、冠名をつけないと馬名候補が重複してしまって、思うように審査に通らないという事情もある。9文字の字数制限の撤廃を求める声もあるが、審査する側の手間を考えると、事務方はあまり賛成したがらないのではなかろうか。

桜花賞を勝った珍名馬といえばスウヰイスーであろう。史上初めて桜花賞とオークスの牝馬二冠を達成し、牡馬相手の菊花賞でも半馬身差の2着と健闘。4歳牝馬ながら61キロを背負わされた安田賞(安田記念の前身)で古馬を圧倒し、翌年は62キロで連勝した女傑である。だが、それほどの名馬であるのに、その馬名に意味はない。

本来の命名は「スイートスー」だった。これなら「かわいいスーちゃん」といった意味がちゃんとある。それが妙な名前に化けたのは、馬名登録を頼まれた厩舎関係者が、受話器の向こうの音声を聞き違えたせい。それにしても“ヰ”の発音を聞き分けたその音感は、非凡と言うほかはない。

デビュー戦を万馬券で飾ったので、馬主はゲンをかついで馬名変更をしなかった。その馬主こそ、大女優にして大歌手の高峰三枝子さん。もっとも、さすがに「すうぃいすー」とは発音しにくいので、高峰さんは「スイスイ」と呼んでいたとか。もしこんな馬名が現代のGⅠに出走してきたら、柳瀬尚紀さんもさぞ苦労されることだろう。

Repuro

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2013年4月 8日 (月)

代打一発

桜花賞のトライアル重賞はチューリップ賞とフィリーズレビューの2つ。それを武豊騎手と武幸四郎騎手がそれぞれ勝って桜花賞に臨むのだから、メディアが「GⅠ初の兄弟ワンツーなるか?!」と煽り立てたのも当然だった。

C_dem 

だが、結果は4着と10着。競馬はそんなに単純なものではない   などと醒めた感傷を覚えたその瞬間、勝ったアユサンの手綱を握っているのは、いつもの丸山元気騎手ではなく、クリスチャン・デムーロ騎手であることを思い出した。2着に迫ったのは兄ミルコ・デムーロのレッドオーヴァル。つまり我が国のGⅠレースでは初めてとなる兄弟ジョッキーによるワンツーフィニッシュが、外国人によって達成されたのである。

 【兄弟騎手による重賞ワンツーフィニッシュ】

  1976年 セイユウ記念 嶋田功&嶋田潤
  1996年 札幌3歳S 横山賀一&横山典弘
  2000年 日経新春杯 武豊&武幸四郎
  2004年 小倉記念 武豊&武幸四郎
  2009年 福島記念 吉田隼人&吉田豊

ただ、兄弟によるワンツーというのが記録としてどれほど価値のあるものなのか、いささか首を捻りたくなる部分もある。野球やサッカーなどのプロスポーツに比較しても、兄弟や親子でプロになることの多い稼業であるし、兄弟だから何が凄いのかもよくわからない。「やっぱ武邦彦さんは凄いなぁ」と思うのが、ファンがとるべき姿勢なのだろうか?

むしろ私は、直前の落馬負傷により、予定していた騎手が乗り替わった馬がクラシックを勝ったことに衝撃を受ける。コンビ予定だった丸山元気騎手は、昨日の福島5Rで落馬。福島市内の病院で精密検査を行った結果、腰椎横突起骨折と診断され、アユサンへの騎乗をフイにしていたのである。

丸山騎手への騎乗依頼はオーナー直々のものだったという。その期待に応えるべく、2週続けて丸山騎手自ら栗東に足を運び、追い切りの手綱を取って状態を確認してきた。体調が整わずクイーンCを直前で回避。急遽立て直して挑んだチューリップ賞が体調今ひとつの状態で3着ならば、「本番では…」と心中期するところがあったであろう。

出馬投票後の乗り替わりで重賞を勝ったケースといえば、2007年北九州記念のキョウワロアリング(飯田→角田)や、2009年新潟記念のホッコーパドゥシャ(石橋脩→江田照)などいくつかある。だがGⅠレースとなると過去に例がない。

人気馬たちをなぎ倒すように、馬場の真ん中を堂々とアユサンが駆け抜けた桜花賞の直線。この時、丸山騎手は何を思ったのだろう。いや、丸山騎手に限らず、騎手という人たちは、こういうシチュエーションでどのような心理状態に置かれるのだろうか。手塩にかけた愛馬の晴れ姿に喝采を送るのだろうか。あるいは、悔しさに打ち震えるのだろうか。あるいは、その両方だろうか。普段のレースならまだしも、そこは騎手なら誰もが夢見るクラシックの舞台。その心境の複雑さは計り知れない。

「丸山君がこの馬のために尽くしてくれた。彼なくしてこの勝利はなかった」。手塚調教師はそう言って丸山騎手を讃えたが、次走オークスの鞍上は「未定」とされた。果たしてアユサンの手綱を握るのは、誰になるのだろうか。

Maru

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2013年4月 7日 (日)

春の雷

強風が吹き荒れた日曜日は競馬場に行き着くのも一苦労で、予定より30分以上も遅れて船橋法典に到着。中山11レース・春雷Sの出走馬たちは、すでに本馬場に姿を現している。

Es 

昨夜大雨を降らせた雲は消え去ったはずなのに、上空には不穏な色の雲も散見する。その時、1コーナーの向こうの空に閃光が走ったと思ったら、遠い雷鳴も聞こえてきた。華代子さんのツイッターによれば大井・小林分場でモノ凄い雷雨に見舞われたとのこと。きっとあの下にいらっしゃったのだろう。くわばらくわばら。

「春雷」とは文字通り春に発生する雷のこと。夏の雷ほど激しくなく、一つ二つで鳴りやむことが多いが、時ならぬ時に突然鳴り響くので、人々を驚かすものの喩えに使われることもある。

人が驚くのだから、人間より敏感な馬ならもっと驚く。雷が鳴っているとゲート入りも普段より時間がかかるし、スタートも揃わないことが多い。1967年の日本ダービー。皐月賞2着で穴人気になっていたホウゲツオーは、発走直前の大雷鳴にすっかり怯えてしまい、まともに走ろうとしなかったという逸話も残る。

とはいえ、今のところあの雷雲が中山競馬場を襲う気配はなさそうだ。のどかに馬券を楽しむならば、ここは春雷に引っ掛けてアースソニック(「地球の音」の意)でどうだろうか。16戦4勝。負けたレースでもすべて勝ち馬からコンマ6秒以内に踏みとどまっているのは、安定して高い能力を発揮できることの証だ。前走のシルクロードSは8着とはいえ、コンマ2秒しか負けてない。それで8番人気。

「へっへっへ、こりゃ美味しいぞ」と単勝にズドンと投入したら、アースソニックが内ラチ沿いを力強く駆け上がってくるではないか!

「よっしゃあ!!」

私は雷鳴をかき消すほどの大声で喝采を叫び、強風吹きすさぶ中山の空に拳を突き上げた。ところが、ゴール前のスローを見ると、アースソニックの鼻先はポイズンブラックにわずかに届いていないようにも見える。写真判定の結果、実際に届いていなかった。振り上げたこの拳を、いったいどうすりゃいいのか? カミナリ様、教えてください。

Black

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2013年4月 6日 (土)

ラストチャンスへ

今日の阪神メイン・阪神牝馬Sは2番人気のサウンドオブハートが鮮やかに抜け出し重賞初優勝。しかもこれがアグネスタキオン産駒にとって、JRA重賞50勝の節目の勝利となった。

だが、私の感慨はやはり松山康久調教師が久しぶりの重賞を勝ったことに尽きる。松山師の重賞勝ちはダイワレイダースが勝った2005年の七夕賞以来、実に8年ぶりのこと。私が松山厩舎と縁を持つようになった2000年以降、途端に重賞が勝てなくなったので、実は心の奥底で責任を感じていたのである。

Gen 

ミスターシービーでクラシック三冠の偉業を成し遂げ、89年のウィナーズサークルで2度目のダービー制覇を果たし、95年のダービーでは「うわっ! ダービー3勝目か?」というシーンがありながら2着惜敗。でもそのジェニュインで皐月賞とマイルチャンピオンシップを制し、94年にはリーディングトレーナーにも輝いた。すなわち名伯楽である。これほどの厩舎が、「今世紀2つ目の重賞タイトル」と聞くと、ウソだろ?と思ったりもしてしまうが、それが競馬の難しさ。重賞を勝つというのは並大抵の出来事ではない。

だが、厳密には2004年に大井で行われたジャパンダートダービーをカフェオリンポスで勝っているから、今世紀の重賞タイトル数は「3つ」だ。

実は私、このレースを見るためにわざわざスケジュールを空けておいたのに、当日になってなんとなく気が乗らずに「サボって」しまったという苦い過去を持つ。それで、お世話になっている松山厩舎のカフェオリンポスが勝ってしまったのだから、TVの前の私が氷りついたのは言うまでもない。

私の四十数年間の生涯において、一、二を争う不始末であろう。レースをする前から「どうせ負けるよな」と決めつけるのは馬に対する冒涜であり、「ひょっとしたら勝つかも」と思っていながら、それでも競馬をサボるようでは、もはや人格が問われてしかるべき。後日、調教師と共通の知人でもある小説家からは、「なぜ来なかった」とだけ書かれた手紙が届いた。つくづく返す言葉がない。ともかく、それ以来私は「仕事はサボっても競馬はサボらない」という信念を心に刻み、日々生活を送ることにしているが、それでもあのJDDで味わった苦い思いが私の脳裏から消えることはない。

それを払拭するには、私の目の前で松山師の管理馬がGⅠを勝つしかないような気がする。サウンドオブハートの次走はヴィクトリアマイルと発表された。過去にいくつもGⅠを勝った松山師なのに、なぜか牝馬のGⅠが勝てないというジンクスもこのさい払拭してしまおう。実は松山師は来年2月で調教師定年を迎える。残されたチャンスは、そう多くはない。

Cafe

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2013年4月 5日 (金)

締切は守ろう

桜花賞の前売りが始まった。いよいよ今年も3歳クラシックの幕が上がる。

Ohka  

レースの出走馬にとって、その勝敗を左右しかねない最後の関門といえば、それは競馬場への「輸送」に違いなかろう。特にこの桜花賞では、関東馬の関係者はことさら輸送に神経を遣う。キャリアが浅く、神経質な3歳牝馬にとって、輸送のミスはまさしく命取りだ。

一方で、この時期は地方公営競馬を扱う競馬専門紙各社においても「輸送」に神経質になる時期でもある。年度替わりは異動の季節。主催者もバタバタしていて、出馬表の確定が遅れることも珍しくない。この船橋開催では、午後3時を過ぎても発表がなされないという事態も起きている。イライラしながら、NARサイトの「再読み込み」を繰り返していた方もいらっしゃるのではないか。

「だけど2日も前に発表されているじゃないか」

そんな指摘もあろう。だが、遠隔地への輸送を共同輸送に頼る専門紙にとって、締切時刻は存外早い。共同輸送のトラックに間に合わないと、自前で輸送トラックを調達せねばならなくなったり、下手をすると場外発売所に新聞を置けないという事態まで覚悟しなければならない。大都市間の輸送ならいざ知らず、東北などには極端に道路事情が悪い場外発売所もある。そもそも、交通の便が悪くて馬券を買いに出られないという理由で選ばれた立地だ。2日前に枠順が確定しても、実は案外ギリギリだったりする。

むろん共同輸送のトラックの運ちゃんは、1社の都合で待ってはくれない。そのための締切である。だけど、肝心のネタ元が遅れては打つ手がない。勢い編集者たちのイライラも募る。

「締切」は英語で "Dead line" だが、この "Dead line" には、もうひとつの意味「死線(囚人がこの線を超えると射殺される)」も辞書に載っている。怖いですね。怖いけど、専門紙の編集担当者たちは、むしろこちらの意味の方を日々実感しながら新聞を制作しているに違いない。専門紙の有能な編集者が次々と射殺されてしまっては、競馬主催者としても困るだろう。だから、次開催からはもっと早く確定出馬表を発表してもらいたい。

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2013年4月 4日 (木)

タイムオーバーから重賞制覇

一日遅れとなってしまったが、昨日のマリーンカップの話。 

Marine1 

レッドクラウディア(クイーン賞)、メーデイア(TCK女王盃)、スティールパス(スパーキングレディーC)。

牝馬限定のダートグレードレースをそれぞれ1勝している3頭が顔を揃えた今回のマリーンカップは、まさにミラクルレジェンドの後継争いの様相。TCK女王盃を持ったまま5馬身ちぎったメーデイアが1番人気に推されているが、初めてのマイル戦、初めての左回り、そして前走から2キロの加増とクリアすべき課題も多い。

なんて具合に粗探しをしているうちにレースはスタート。メーデイアは好発から道中3番手。3コーナーで馬なりのまま前の馬に並びかけると、直線に向いて早くも先頭。しっかりした脚色のまま最後は後続に3馬身差をつけて余裕のゴールを果たした。マイル戦も、左回りも、56キロも、何も問題にしなかった根性には頭が下がる。ミラクルレジェンドとの対戦が実現しなかったことが、今更ながら残念にも思えてきた。

5歳の春になって重賞連勝を果たしたメーデイアだが、かつてはタイムオーバーの屈辱を味わった経験を持つ。3歳4月になって、ようやく辿り着いたデビュー戦でのこと。勝ったミヤビヘレネから4秒6差の最下位で、1か月間の出走停止処分が課されたのが、今となっては遠い昔のことのようだ。

デビュー戦でタイムオーバーを喫しながら、それでものちに重賞を勝った馬としては、ほかにもフサイチエアデールの名が挙がる。新馬戦はヒシバイタルから5秒離された最下位。だが、シンザン記念、4歳牝馬特別、ダービー卿CT、そしてマーメイドSの重賞4勝をマークした。こうしている今、タイムオーバーによる出走停止に甘んじている馬がいたとしても、決して諦めてはいけない。1991年の有馬記念を勝ったダイユウサクも、デビュー戦は勝ち馬から13秒も離される大惨敗。2戦目も、7秒以上離されたしんがり負けだった。

さて、重賞連勝を果たしたメーデイアだが、勝って賞金を加算したこともさることながら、マイルの速い流れをクリアした意義はとてつもなく大きい。調教師も、騎手も、そこを強調していた。今年のJBCは金沢での開催。レディスクラシックは小回りの1500mで行われる。まあ、馬の方は、「全然オッケー♪」みたいな顔をしていたけど。

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2013年4月 3日 (水)

川崎ケイバSCへようこそ

全国でも初となる試みが、私のホームでもある川崎競馬場でなされようとしている。

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老朽化のため現在閉鎖されている川崎競馬場の3号スタンドを解体。その跡地にスーパーやレストラン、衣料品店などを備えた大規模商業施設を建設するというのだ。計画は地上5階建て。1~3階は店舗、4階~屋上には440台収容の駐車場が設けられる。敷地を所有するよみうりランドが建設を担当。東急不動産がテナントを誘致、運営するという。

船橋競馬場のように商業施設に隣接する競馬場は珍しくないが、競馬場敷地内に大規模な商業施設を建設するとなると過去に例を見ない。以前、帯広競馬場の存廃危機に際し、流通大手「イオン」が競馬場内に進出する構想を非公式に打診したことがあったが、実現には至らなかった。そういう視点において、川崎の計画は期を画する。

近年、川崎競馬場周辺ではマンションの建設ラッシュが進行中。1コーナーからバックストレッチにかけて、トラックを取り囲むようにボンボンとマンションが建つのを御覧になっている方も多いだろう。さらに、最寄の港町駅の反対側にも456戸のタワーマンションが建設されたばかり。近隣の人口増加に伴い、商業施設の需要は高まっている。

ワールドカップが行われたドバイにおいては、ホテルや映画館、巨大ショッピングモールを抱えた複合施設「メイダンシティ」の中核施設として、メイダン競馬場が位置付けられている。果たして、川崎競馬場が大型商業施設の中核と位置付けられる日がくるだろうか? まあ、そこまで期待せずとも、まずは競馬場の周辺に人を集めるところから始めよう。

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2013年4月 2日 (火)

本物の長浜ラーメン

福岡長浜のラーメン店『元祖長浜屋』に来ています。

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先日チラッと触れた大阪・難波『千とせ』の「肉吸い」は肉うどんからうどんを抜いた代物。この店の常連だったコメディアンの花紀京さんが、二日酔いで食欲がなく、「うどんなしの肉うどん作って」と注文して生まれたという伝説が残っている。

また、札幌のご当地ラーメンとして知られる味噌ラーメンも、実は客の注文から生まれたものだ。『味の三平』の主人が、「豚汁にラーメンの麺を入れてほしい」という注文からそのアイディアを得たとされる。

長浜ラーメンの名物「替え玉」も、そうした客の注文から生まれたヒットメニューのひとつ。とあるお客がラーメンを食べ終えた。だが、一杯では物足りず、丼の中にはスープがなみなみ残っている。思わず「麺だけおかわりできんと?」と聞いてみたら、店の大将は気持ちよく「よかバイ」と応じてくれた。それが「替え玉」の嚆矢。このユニークなサービス形態がウケて、「長浜ラーメン」の名前はたちまち全国に知れ渡った。

その発祥の地でもある『元祖長浜屋』には、今日も地元客と観光客が押し寄せ続けている。替え玉を50円から100円に値上げすることが、一般ニュースとして全国紙の社会面を飾るラーメン屋などほかにあるまい。

もともと魚市場で忙しく働く作業員や仲買人のために、工夫されたラーメンである。ということは、その成り立ちは築地の『吉野家』にも似る。競馬場で『吉野家』があれだけ人気を集めているのは、同じように忙しい競馬ファンのニーズにマッチするからだ。となれば、競馬場にも本物の長浜ラーメンのお店が欲しい。「本物の」と敢えて強調するのは、東京では「長浜ラーメン」と「博多ラーメン」がごっちゃになってしまっているから。本来両者は違うものですよね。だいたいが、長浜地区は福岡市博多区ではない。

世にご当地ラーメンは数あれど、札幌、喜多方、佐野、和歌山、熊本など市区町村単位のネーミングがほとんど。いち町域名に過ぎない「長浜」の名が冠された「長浜ラーメン」は極めて希少なケースであろう。そんなことに思いを寄せつつ、替え玉の茹で上がりを待つのも悪くない。

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2013年4月 1日 (月)

神の馬

太宰府天満宮では「厄晴れ瓢箪焼納祭」が斎行されております。

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太宰府天満宮の宮司・西高辻信良氏は、菅原道真の直系の子孫である西高辻家の当主でもあり、また福岡県神社庁長の公職に就く方でもあり、またさらに現役競走馬を所有する馬主でもある。なかなか珍しい苗字なので、セリで落札されるとつい印象に残ってしまう。

所有馬の一頭ワラベウタは、サムライハート産駒の牝の3歳馬。日本を代表するわらべ歌の「通りゃんせ」の歌詞には、「ここはどこの細道じゃ。天神様の細道じゃ」という一節があるから、この「天神様」からの連想によるネーミングかもしれない。いずれにせ、なかなか風情のある響きで、良いネーミング。馬の方は苦戦が続いているみたいだけど、頑張って欲しい。

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さて、有名な「飛梅」を横目に眺めつつ、太宰府天満宮の奥へと進むと、神馬(しんめ)が暮らす厩舎を見つけた。厩舎からこちらを見つめているのは、真っ白な芦毛馬。「JRA小倉競馬場寄贈」とある。となれば、いったい父馬は何であろうか?

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   なんて余計な詮索をしてしまうのは、競馬ファンの性(さが)であろう。神馬は神の遣いであり、日本各地で信仰の対象にもなっている。神馬は神馬。血統など関係ない。……でもこんだけきれいに白くなるのは、やっぱクロフネかなあ。いや、芦毛は案外お母さんからの遺伝で、お父さんはひょっとしたら「神の馬」ラムタラかもしれないゾ   などと罰当たりなことを考えつつ、天神広場を駅へと向かう。

「テンジン」と言えば、かつて最低人気で日経賞を差し切り「大穴馬」としてNHKの朝のニュースでも取り上げられたテンジンショウグンを思い出す。彼は競走馬を引退したあと、警視庁騎馬隊で第二の“馬生”を送っている。神馬にせよ、騎馬隊にせよ、引退後の居場所を与えられた馬は幸せだ。2歳馬の入厩が始まるこの時期は、実は引退馬が溢れる季節もである。福山競馬の所属馬の大半に、この先の行き場などおそらくあるまい。とはいえ、私の出来ることなどたかが知れている。

天満宮の神聖な空気のせいか、珍しく神妙な気分に浸った。それにしても、梅が枝餅は美味いですね。

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