« 巻き戻された降着基準② | トップページ | 競馬場で歩こう »

2013年1月16日 (水)

巻き戻された降着基準③

Door_2Door_3  

昨年のジャパンカップの直後、ベテラン競馬記者や馬主、あるいは外国人カメラマンや他の公営競技の審判の方などを交えて、問題の審議結果について意見をぶつけあう機会を得た。年間に何千というレースを見ている関係者だけあって、当然議論は白熱する。だが、やはり誰もが納得する結論には到達しなかった。どちらかに偏るということもない。意外にも感じるがそういうものなのだろう。

そういうごく限られた意味においては、JCを裁いた裁決委員は妥当なジャッジを下したのかもしれない。私の意見はたまたま「ジェンティルドンナ寄り」であったが、「オルフェーヴル寄り」の意見に頷かされることも何度もあった。舞台がジャパンカップでなければ、ここまで議論を尽くすことはしなかったろう。その後味の悪さにJRAは顔をしかめたに違いないが、一般的には美味いモノより不味いモノを食ったという話の方が、圧倒的に盛り上がるのである。

審議中にパトロールビデオが放映されるようになったのはごく最近のこと。情報公開の流れに沿ったものとはいえ、ファンサービスのひとつとして大きな一歩であろう。ターフビジョンでリプレイが繰り返される中、「どうかな?」とか「ダメだろ、ありゃ」などという声があちこちから聞こえてくる。ファンの見る目が肥えれば、騎手のラフプレーは難しくなるし、裁決委員もいい加減なジャッジはできない。すなわちそれは公正かつ安全な競馬施行への第一歩にほかならないのである。

そもそも昔のファンはパトロールフィルムの映像を見ることなど許されなかった。ニシノライデンが失格した天皇賞は場外馬券売り場で見ていた私だが、京都で何が起こっているのかさっぱりわからぬまま「ニシノライデンは失格」だと見ず知らずのおっさんに教えられ、シクシク泣きながら家路についた思い出がある。失格馬が出た時に限り、パトロールフィルムが公開されるようになったのが1990年秋の東京開催から。1999年秋には失格・降着の有無に関わらず、審議ランプが付けば公開の対象となった。今では審議とならなくても、JRAのサイトからパトロールフィルムを見ることができる。

だが、それが必ずしも万人納得のジャッジに直結するわけではない。いや、そもそも万人納得のジャッジなど存在し得ない。厳格なルールブックがあり、それに基づくストライクゾーンが規定されているはずの野球でさえも、アンパイアによってストライクゾーンは微妙に異なる。だがプレイヤーもファンも、ある程度それは織り込み済み。だから、苦情の電話で回線がパンクするような事態にはならない。だが、カネが賭かっている競馬ではそうはいかない。だから審議のたびに騒ぎがでかくなる。それでもニシノライデンの当時に比べれば、ファンもずいぶんおとなしくなったような気がするが……。

着順変更に関する裁定問題は、古くて新しい問題である。「加害行為がなければ被害馬は加害馬よりも上位になれたかどうか」という、30年前の判断基準に戻したからといって、劇的に事態が好転することなどまず期待できまい。そもそも、もしスタート直後に不利があった場合、被害馬が加害馬に先着できたかどうかなどいったいどうやって判断するのだろうか。秋の天皇賞でメジロマックイーンが降着となったのは、スタート直後の斜行によるもの。降着制度を導入した最初の年の出来事だった。

(この項終わり)

Kohchaku  

|

« 巻き戻された降着基準② | トップページ | 競馬場で歩こう »

競馬」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 巻き戻された降着基準② | トップページ | 競馬場で歩こう »