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2013年1月29日 (火)

食堂車

Hokutosei
 

「競馬食堂」の題字を掲げておきながら、昨日は食堂にネガティブな内容を書いてしまったので、今回も食堂についての話。

「食堂車」を見かけなくなって久しい。JRで今も残るのは一部の長距離寝台夜行列車のみ。いちど「北斗星」や「カシオペア」には乗ってみたいとは思っているのだが、私がここで取り上げたいのは豪華フランス料理のディナーや懐石料理を楽しみつつ、夫婦でワインを傾けたりするような食堂車ではない。

一人旅に携えた文庫本は既に読み終え、さりとて眠りにつくこともできず、車窓を眺めるのにもいい加減飽きた頃合いで、「そうだ、この列車には食堂車があったな」と思いついて、やおら向かうような、そんな食堂車である。注文するのはサンドウィッチと小瓶のビール。小ぶりのグラスにゆっくりとビールを注ぎ、ゆっくりとサンドウィッチを食べ、そしてゆっくりとビールを飲む。そうしている間にも、自分の体は結構なスピードで目的地に向かって進んでいる。そんな不思議な感覚こそが「旅情」でもあった

鉄道のスピードアップにつれ車内滞在時間が減り、わざわざ車内で食事をする必要がなくなったため   というのが食堂車撤廃の表向きの理由らしいが、駅弁への熱気はむしろ高まる昨今である。実際には輸送効率の追及が本音であろう。赤字を増やすだけの食堂車を連結するぐらいなら、普通車両に乗客を座らせて運んだ方が儲かる。企業としては当然の理論ではあろうが、やはりこれはひとつの文化の消滅に違いあるまい。

旅の本質は目的地の観光ばかりではなく、むしろその道中にこそあったはずなのに、交通手段の合理化にともない、旅人はその本質たる部分を省略して、目的地における見聞のみを求めるようになってしまった。「旅」は本質的に変容してしまったのである。その変容の果てに、列車から「ゆとり」や「潤い」は消え去った。そういう視点に立てば「変容」と呼ぶよりも、やはりはっきり「退行」と言い切ってしまった方が良いのかも知れない。

それはそうと、食堂車もさることながら、最近ではビールの小瓶もあまり見かけなくなりましたね。

ビールは缶よりも瓶が美味い。これは間違いない。さらに魯山人先生もおっしゃっていたように、瓶の中でも小瓶がベスト。ちゃんとした店のアルコールリストにビールの小瓶が多いのはそのためだ。

ちなみに、築地市場内外の食堂の多くもビールは小瓶で提供している。カレーの『中栄』、フライの『禄明軒』、親子丼の『鳥藤』、そしてホルモン丼の『きつねや』も皆そう。いちど店主に「なんで?」と聞いたところ、「それくらいでちょうどいいだろ」とのこと。最近、ジョッキの生ビールを飲み干すのに難儀するようになった我が身としても、競馬場内のレストランでサンドイッチとビール小瓶という組み合わせの実現を期待したいところだ。

Kobin


 

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