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2013年1月15日 (火)

巻き戻された降着基準②

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2頭の人気馬が再三の接触を繰り返しながらマッチレースを繰り広げた昨年のジャパンカップを目のあたりにしながら、私は28年前を思い出していた。1984年の皐月賞。シンボリルドルフ、ビゼンニシキ、人気馬2頭による一騎打ちは皐月賞史上でも稀に見る好勝負のひとつとされるが、シンボリルドルフの手綱を取った岡部幸雄騎手がラフプレーによる騎乗停止処分を受けていたことを覚えている人は、もはや少なかろう。

岡部騎手はシンボリルドルフの闘志をかきたてるため、あえてシンボリを外斜行させてビゼンニシキに馬体をぶつけた。直線の入り口から300mに渡って繰り返すこと4度。最後の一撃はゴール直前で、まさにダメ押しといった感じで体当たりを食らわせての1馬身半差であったのである。

これを「覚えている人が少ないだろう」と私が書いたのは、審議ランプが灯かなったからだ。

当時は、
 ①着順の変更があり得る
 ②落馬などのアクシデントによりパトロールフィルムの検証を必要とするとき
のいずれかのケースで「審議」となっていた。この場合、①について審議されても良さそうなものだが、当時の判定基準では「加害馬と被害場の脚色」が大きくモノを言ったのである。

前年のダービーでもミスターシービーが4コーナーでキクノフラッシュ、ブルーダーバン、カツラギエースを弾き飛ばした上、直線では内に切れ込んでタケノヒエンの進路をカットするという傍若無人ぶりを発揮したにも関わらず、失格には至ってない(吉永騎手は騎乗停止)。シービーのダービーにしても、ルドルフの皐月賞にしても、裁決委員は「勝った馬の脚色が圧倒的に優勢であり、着順を変更するにいたらない」と明言。走行を妨害したという客観的事実だけで即審議とることはなく、着順が確定したのち、あらためて騎手に処分が下るというケースは当時の競馬に珍しくはなかった。

その後、ジャパンカップ創設に伴う国際化の流れの中で、「被害馬の能力発揮への影響度」が新たな判断基準として導入される。当時この基準が“万国共通のルール”として採用されたという経緯は、今にして思えばなんとも興味深い。

ところが計量化や数値化がきわめて困難な「影響度」なる尺度を採用したことで、日本の競馬ファンは混乱に陥った。「(影響度は)“重大”だが“致命的”ではないので降着には至らない」などという説明を聞いて、「そうか。なら仕方ない」と納得できるファンが果たしてどれだけいるのだろうか。

そんな審議説明が、よりによって昨年のジャパンカップで繰り返されたというのも何かの縁かもしれない。今年から導入された新基準についても、「海外では一般的」だという。だがその実は、四半世紀以上も昔に我が国が捨てた判定基準に極めて近いのである。

(明日付に続く)

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