2017年6月25日 (日)

トウショウフリートから24年

長い長い東京開催の掉尾を飾るのは芝1400mのオープン特別・パラダイスS。 すっかり宝塚記念の裏番組として定着した感がある―――と同時に中京記念や関屋記念の前哨戦の役割も担うようになった。梅雨空の東京競馬場は春開催の名残を惜しむ大勢のお客さんで賑わっている。

Tokyo 

だが、かつてのパラダイスSはGⅠ戦線における箸休めのような存在だった。なにせダービー翌週の土曜メインである。お客さんも、騎手も、そして馬たちも、どことなくのんびりしていたのは仕方あるまい。前週までの緊張感はどこへやら。本格的な夏のローカルが始まるまでの、一種の調整期間のような開催だった。

そんな1993年のパラダイスSを勝ったのはトウショウフリート。名繁殖牝馬ソシアルバターフライの3×3という強い牝系クロスを内包することで注目を集めた。

Fleet 

ダート1000mで挙げた初勝利は8馬身差。初めての芝のレースとなった臥牛山特別は6馬身差。そして、このパラダイスSも5馬身差の圧勝である。しかしコンスタントに使うことがてきない。そもデビューからして4歳の10月である。強さと同居する体質の弱さは近親配合の光と陰だ。

トウショウフリートは、このパラダイスSを最後に引退、種牡馬入り。大レースを勝つような産駒は輩出できなかったが、産駒のジェーントウショウ(こちらはダンディルートの3×2を持つ)が母となって重賞5勝のシーイズトウショウを送った。これはこれで立派な成果である。

Sheis 

さて、そんなトウショウフリートがパラダイスSを勝ってから24年、今年のパラダイスSを勝ったのはウインガニオン。ステイゴールド産駒はシーズン末期の荒れ馬場をまるで苦にしない。昨年のこのレースの覇者マイネルアウラートもステイゴールド産駒だ。

Paradice 

そのステイゴールドの3代母・ロイヤルサッシュは、近代種牡馬群の礎となったネアルコの3×3。加えて2代母の父・ノーザンテーストには、名牝レディアンジェラの3×2という極めて濃い血が流れている。さらにウインガニオン自身の母系を辿れば、その9代母・フラストレートは伝説の名馬セントサイモンの3×3だ。

強いインブリードを持つ馬が血統表に加わると、稀にとてつもない大物を送ることがある。トウショウフリートの配合を決めたトウショウ牧場の狙いも、最初からそこにあったのであろう。

さあ、オープン特別を連勝したウインガニオンの次走は中京記念か関屋記念か。仮に前者であれば、シーイズトウショウの息子・トウショウピストとの対戦が待つ。夏のマイルシリーズはここから既に始まっている。

 

***** 2017/06/25 *****

 

 

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2017年6月24日 (土)

消えた森の番人

千歳のホテルが意外に空いてる―――。

6月15日付の本稿でそんなことを書いた。そのときは社台のツアー参加者が激減したんじゃね?みたいなことを書いたけど、もちろん冗談である。ツアーは3日間延べ千人の参加者で大盛況だった。ただし、何人かの顔見知りに聞けば、やはり「今年は千歳のホテルが取りやすかった」という。

実は、千歳には昨年「クイーンズホテル千歳」が新規オープンしたばかり。さらに、既存のANAクラウンプラザややルートインホテルが増室工事を完了した。来年には「JRイン千歳」が、再来年には新千歳空港ターミナルビル国際線ビルの増築エリアにホテルが新規開業の予定。千歳は近年にないホテル開業ラッシュを迎えようとしている。ならばホテルの部屋が取りやすくなってもおかしくはない。

その一方で、肝心の需要に陰りが見えてきた。全道的には外国人訪問客は増えているのに、彼らが千歳泊というルートを組まなくなったという。

そんな話をしてくれたのは、『あじ彩』でたまたま隣り合わせた常連さん。その流れから話題は苫小牧の大型リゾート計画へと進んだ。

Forest 

千歳空港に隣接する苫小牧市植苗地区の広大な山林に、ホテル、レストラン、ショッピングモール、国際会議場、医療施設、そしてカジノを備えた滞在型リゾートを作る話が進んでいる。ターゲットは海外の富裕層。カジノと医療ツーリズムで海外から金持ちを呼ぶのだという。

「いや、ちょっと待ってください。たしか、その計画が持ち上がったのは今から6、7年前。もともとは、手つかずの森林資源をウリに、ホーストレッキングやハイキングを楽しむ施設を作る話だったはずですよね」

私の指摘を待っていたかのように相手は話を続けた。もともとの開発コンセプトは「森林の活用と保全。ひいては林業の復活にもつなげたい」というものだった。その名も『バルト・マイスター・トマコマイ』。日本語では「苫小牧の森の番人」といったところか。私が注目していたのは、もちろんホーストレッキング。その運営に際しては、同市内のノーザンホースパークと事業連携すると聞いていたから。常日頃からノーザンホースパークに宿泊施設があれば良いのに、と感じていた私が喜んだのは言うまでもない。しかも、収益の一部は当地の森林保全に充てられるはずだった。事業主体が地元企業がだからこそ得られる着想であろう。

それがいつの間にか「カジノと先進医療で海外富裕層を呼ぶ」である。いったい何があったのか―――?

そこから先の話は割愛するが、カジノや先進医療にしたところで目論見通りになりっこない、とのこと。それでも施設を作りさえすれば喜ぶ人もいる。問題はそれが東京の人間だということだ。事業主体はいつの間にか東京の大企業に取って変わっていた。こんな話を「森の番人」が聞いたら、きっと怒るだろう。東京の人間にすればちと恥ずかしい。

 

***** 2017/06/24 *****

 

 

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2017年6月23日 (金)

雨馬を探せ

昨日は「曇時々雨」だった日曜の関西地方の予報が、今日になって「雨」に変わった。一大事である。多少の雨ならまだしも、馬場状態を一気に悪化させるような雨であれば、事前の予想は使いものにならない。断然の1番人気キタサンブラックが、よりによって重や不良の経験を持たぬことも混乱に拍車をかける。

慌てて新聞を広げてみた。宝塚記念の11頭の中に、レインボーアンバーやホッカイダイヤのような「雨馬」は隠れていないか。

レインボーアンバーは不良馬場の弥生賞を大差で独走した。ホッカイダイヤも、通算で10勝もしていながら良馬場での勝ちは一度しかない。梅雨どきの競馬では、こうした雨馬たちの出番が増える。

目に留まった一頭はレインボーライン。手綱を取るのは岩田康誠騎手だ。

雨の宝塚記念と聞いて真っ先に思い浮かぶのは2007年。記録では「小雨」とされているが、とんでもない。あの日の阪神は朝から大雨に見舞われていた。

降りしきる雨をものともせず、大外を豪快に突き抜けたのはアドマイヤムーン。梅雨空に向けて左手の人差し指を立てた岩田騎手の姿は、10年経った今も忘れていない。岩田騎手にとってJRA移籍後初のGⅠ勝利。記念すべき一勝だった。

Moon 

レインボーラインの父はステイゴールド。その産駒が総じて道悪に強いことを、いまさら紹介する必要はあるまい。オルフェーヴルのダービーはその真骨頂。ステイゴールド自身、7歳にして初めて掴んだ重賞タイトルはどしゃ降りの目黒記念だった。

さらに目を引くのは母の父・フレンチデピュティ。稍重で行われた2007のエプソムカップを思い出して欲しい。勝ったエイシンデピュティ、2着ブライトトゥモロー、3着サイレントプライド。いずれもフレンチデピュティ産駒である。しかも勝ったエイシンデピュティは、この1年後に重馬場の宝塚記念を制している。

さらにさらに、母の母の父には、なんとレインボーアンバーの名前があるではないか。意図的な配合なのかはさておき、レインボーラインが雨馬に相応しい血統を備えていることは間違いない。これは宝塚記念も貰ったようなもの。ドカンと大勝負に出て、払戻金で社台の1歳募集馬を買ってやろう。雨に笑うのは、何も馬だけに限らないゾ。へっへっへ。

雨に笑う馬がいれば、雨に泣く馬もいる。レインボーアンバーが勝った弥生賞で1番人気に推されて敗れたサクラホクトオーなどは、後者の典型であろう。

「一滴でも雨があたるとダメ。傘をさして走らせたい」

そう言って天を仰いだのは、サクラホクトオーを管理した境勝太郎調教師。馬体を絞るために調教でカッパを馬に着せることはあるが、馬が傘をさした例はさすがに聞いたことがない。ともあれ梅雨どきの競馬は、人も馬も空模様が気になる。

 

***** 2017/06/23 *****

 

 

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